魔法学院の最底辺
カル
第1話 入学
「ここが、今日から俺が通う学院か……。」
俺がこれから通う「ジキルロット魔法学院」は特別な学科しかない。1つは、勇者科。そしてもう1つが、魔王科だ。なぜそんなものがあるのかというと勇者の住む世界とと魔王の住む世界で分割されてしまったからだ。そして友好の証としてこの学院が創設されたわけだが、実際のところは腹の探り合いとでもいったところだ。
そして、俺が今日から通う外交科。ここは勇者と魔王の世界における懸け橋となるために作られた学科だ。なぜ俺がこの学科に通うことになったかというと……
「今日からお兄様は私と同じクラスですね。」
「何言ってるの?桃ちゃん、けいちゃんは私と同じ科よ?」
姉と妹、二人がそれぞれ、魔王候補生と勇者候補生だ。
「俺はどこでもないよ。俺は外交科だからね。」
「あっ、そうだったの?でもいつでも魔王科の教室に来てね!」
「お兄様、私とともに悪を撃ち滅ぼしましょうね。」
「どっちにもいかないよう努力するよ……。そろそろ行かなくていいの?」
「そうですね、私はそろそろ行くことにします。失礼します、お兄様。」
「いっけない!リハーサルあるんだった!またね!けいちゃん!」
入学早々から胃が痛いな……。
「俺もそろそろ行くかな。」
俺は腹を抑えながら自分の教室へと向かうのだった。
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「~であるからして……」
「おい、お前名前なんて言うんだ?」
隣の人が話しかけてきた。
「俺は竜虎 慧。」
「俺、橘 稜って名前だ。これから同じ外交科としてよろしくな!」
「よろしくな、稜。」
「おう、それにしても今年の入学生代表挨拶異例の魔王科と勇者科から一人ずつらしいぜ。今までそんなことなかったのにな。」
「へぇ、外交科からはいないのか?」
「俺ら外交科は魔王科や勇者科落ちたやつが行くところだろ、ありえねえって。」
「俺外交科に入りたくて入ったんだが……。」
「そ、そうだったのかスマン。初めて見たよそんな奴。」
「これで祝辞を終わりにします。」
理事長らしき人が祝辞を終えて壇上から立ち去った。
「次が入学生代表挨拶だ。今年の入学生代表者はどちらの学科もかなりかわいいって噂だぜ。あ!来たぜ!」
どう見ても姉さんと桃だ。
「すげぇ……、俺惚れちゃったかも。お前も目に焼き付けておけよ!」
「わかった。」
目に焼き付けるも何も常日頃見なれた顔だ。桃は140〜150ほどの小柄でピンク色のショートボブ、姉さんは170はあるんではないかというモデル体型で茶髪のセミロングだ。
「これで、入学式代表挨拶を終わりにします。」
桃が代表挨拶を終えた後、姉さんが代表挨拶を終えた。
その後、式典は順調に進み無事終わった。
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俺たちがクラスに帰って来るとクラスはガヤガヤしていた。
「見たかよ!あの代表生!どっちもかわいかったな~。」
「どっちかと言ったら俺は魔王科の子かなぁ。」
「勇者科のほうが背が小っちゃくてかわいらしかっただろ!」
クラスの話題は姉さんと桃の話でもちきりだった。その後クラスにスーツを着た女性の教師らしき人が入ってきた。
「私が君たちの担任の八乙女 楓だ3年間よろしく頼む。」
その後俺たちは自己紹介や指導内容などのガイダンスをした後解散となった。
「慧、お前これからどうする?」
「俺はこの後食堂でも行こうかな。」
「じゃあ俺も一緒に行くわ。」
俺たちが食堂に向かうと人だかりができていた。
「何かあったのか?」
「それが、新入生にナンパしてる上級生がいて困ってるらしいぜ。上級生ということを盾にして言うこと聞かないし。」
「わるい、先行っててくれ。」
俺はもしやと思い、その女性を見てみることにした。
「あ!お兄様!助けてください!」
「何ィ!お前この子の兄か!」
「まぁ、そうですけど……。桃が嫌がっているんでやめてもらっていいですか?」
「お前上級生に逆らうのか!ふざけんじゃねぇ!」
上級生は空中に魔術のルーンを描き始めた。俺もとっさに防衛のため、魔術を放とうと手のひらを前に出した。
その瞬間上級生は後ろから手首をつかまれ、地面に組み伏せられた。上級生を組み伏せた男が口を開いた。
「学院内での授業及び特別許可の降りてない時の魔法の使用は禁止だ。お前もだ、わかるな?」
「はい、すみません。」
「今回は不問にするが次回以降は謹慎処分にするからな。」
「わかりました。」
上級生を連れて行くとき俺の耳元で一言ささやいた。
「30分後に昇降口に来てくれ。」
俺は反応しなかったが、その男はニヤついて去っていった。
「はぁ、多分聞こえてるのバレてたんだろうなぁ、行かないわけにはいかないか。」
「どうかしましたか?お兄様。」
「いやなんでもないよ。」
そのあと姉さんが駆けつけて、抱き着いてきた。
「けいちゃん大丈夫!?」
「姉さん苦しい……。」
姉さんは俺から抱き着くのをやめると今度は腕に抱きついてきた。
「大丈夫だよ、先輩らしき人が守ってくれたからね。」
「けいちゃんだったら守ってもらわなくても余裕だったでしょ。」
「そんなことないよ。」
「またそうやって謙遜する~。」
「お姉さま、少しお兄様との距離が近すぎるんではないでしょうか?」
「いやいや、そんなことないよ桃ちゃん。これが私たちの日ごろの距離だしね。」
「姉さん周りの目もあるから少し離れて……。」
「しょうがないなぁ。けいちゃんはこの後どうするの?」
「ご飯食べようと思っていたけど少し用事が出来ちゃったからこれから昇降口に行こうかと。」
「「じゃあ私も行く(行きます)!」」
二人は声をそろえて言った。
「はぁ、わかったよ。」
俺は二人を連れて昇降口のほうへと向かった。
「随分と早いな、それに人数も増えているようだが?」
「すみません、行くって言ってきかなくて。」
「まぁいい、ついてこい。」
そういうと男は歩き出した。そして校舎内を少し進んだあと一つのドアの目の前に立った。
「ここだ、入れ。」
俺が中に入ると4人ほどが中にいた。
「彼らは?」
「風紀委員会だ。お前に風紀委員に入ってもらいたくてな。」
「え?」
「ちょ、ちょっとお兄様、どういうことですか?」
「けいちゃんに説明を求めます!」
「いや、俺が聞きたいんだけど……。大体俺は外交科ですよ?勇者魔王落ちといわれる……。」
「そこはさほど重要ではない、俺は優秀な人材なら学科など問わない。」
「ですが…「お前、呪文を先ほど撃とうとしてたな?」。」
「はい。」
「空中にルーンを書かずにか?」
「………。」
「お前は詠唱魔法ができるのではないか?」
詠唱魔法とはルーンで書く呪文を詠唱することによって発動させることである。
「………どうしてわかったんですか?」
「ルーンを書くときに指ではなく手のひらを出すやつがいるのか?」
「……………。」
「俺はお前が風紀委員に入ってくれることを望む。強制はしないが、もし入らないならばお前が優秀な人間であることを上に伝え、魔王科か勇者科に編入させてもらう。」
「「本当(ですか)!?」」
「な!?いいんですか?俺さっき魔王科か勇者科落ちっていいましたよね?」
「詠唱魔法ができる人間を落とすほど、この学院の人間はバカではないぞ。お前は魔王科か勇者科を自ら受けなかったのだ。」
「………わかりました、入りましょう。」
「なら私も風紀委員に入れてください!」
「私も!」
「君たちは……確か入学式で新入生代表を異例の二人で行ったという……なるほどな。君たちが入ることを認めよう。」
「ありがとうございます!」
「早速だが「ちょっと待ってください委員長!」」
奥に座っていた一人が声をあげた。
「どうした奥田。」
「魔王科か勇者科ならわかりますけど……その外交科の人間が入ることは許されません!」
「お前まだそんなこと言ってるのか……。優秀な人材は誰でも取るという約束だろう。」
「ですが!その男が詠唱魔法を使えるとは考えられません!もしかしたらルーンすらかけないかもしれないんですよ!」
「はぁ、わかったよ。お前名前は?」
「龍虎 慧です。」
「慧、あいつと模擬戦やってくれないか?」
「わかりました。」
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「試合内容はどちらかが降参、または試合不可能となるまでだ。魔術及び殴るなどの行為は容認する、しかし俺が危険と判断したら止める。はじめ!」
俺は開始と同時に速攻で呪文を詠唱した。
「ブラックアウト!」
「なに!?」
奥田という人は突然の弱体呪文に驚いて動けなかった。
「ほう、あいつ魔王系統の呪文使いか。」
「いえ、お兄様はどちらも使えます。」
「セイクリッドスピア!」
実体がないゴースト系などに有効の呪文だ。人間に当たると傷はできないが当然痛みはある。
「グハァッ!」
そういうと奥田という人は気絶して倒れた。
「ど、どういうことだ!お前!」
「俺の姉と妹、片方魔王で、片方勇者なんです。」
「まさか……お前……。」
「はい、そういうことです。」
そして俺の入会は許可されたのだった。
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「今日は大変でしたね、お兄様。」
「あぁ、これから風紀委員の活動も入るとなると余計に忙しくなるな。」
「頑張ろうね!けいちゃん!」
「そういえば二人はこれから何かある?」
「ないよ(です)。」
「そっか、じゃあ入学祝いのケーキでも買っていこう!」
「いいね!」
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「魔王系統と勇者系統のハイブリッド型か……おもしろいな……」
一人の男がつぶやくのだった。
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