夢のような人だから
ホテルでの朝ごはんはビュッフェスタイルで、ツアレはたらふく食べた。
「もう~お腹がいっぱいです~。食べすぎました」
出たお腹をぽんぽんと叩いて満足げなツアレ。
「ツアレは良く食べますね~。見ていて気持ちが良かったですよ。ナザリックでもそのぐらい食べても良いのではないでしょうか?」
にこにことした表情でツアレを見るセバス。
「いえいえ!仕事場では先輩方もいらっしゃいますし、時間も限られてますのでこちらのホテルのようにはいかないですよっ!」
顔の前で手の平を無い無いと振るツアレ。
朝ごはんも食べ終わったので、チェックアウトする二人。
_______帰り道は馬車に乗って、街の中を進む。
(ああ、仕事だけど楽しかったなあ)
ツアレは馬車の中から外を見て思う。
少し前までは馬車の中から外の景色を見るだけで精いっぱいだったのに、ここまで行動出来ている自分に驚きだ。
これもきっとセバス様のおかげだと思う。
拾われたのが本当にセバス様でよかった。
下手に教会で拾われていたら、まだ恐怖や病気で外に出られてないかもしれない。
他の金持ちも、ご飯は食べさせてくれるかもしれないけど、ここまで心のケアをしてくれるかは分からない。
そして、一番大事なのが健康だ。
自分はどこもかしこも病気だったはずで、骨も折れていた。
痛すぎて感覚が麻痺していて、もう健康な自分を思い出せなかったぐらいだ。
息も絶え絶えで、視界もぼやけていた。
なのに、セバス様は一晩で全ての病気と苦痛から解放してくださった。
(ソリュシャン様も色々してくれたが、とりあえず置いておく)
そんな自分が昨日まで高級ホテル泊っていたなんて、信じられない。
本当セバス様とアインズ様はすごい。
なんて思ったら、ぽろっと口から気持ちが零れてしまった。
「本当、いや~本当すごいな~」
ツアレは感嘆の気持ちを呟いた。
それを聞いたセバスは「そうですね。昨日のホテルは豪華ですごかったですね」と、ホテルの感想を言って話を合わせてくれた。
いや、そうではないんです!すごいのはセバス様です!と、ツアレは言いたかったが、恥ずかしいので止めた。
「セバス様、私はナザリックに帰還後はどういたしましょうか?いつも通りのお仕事に戻ってもよろしいでしょうか?」
恥ずかしさを隠すために、あえて業務的な質問をするツアレ。
「ええ、そうですね。私は今回の任務の報告書をまとめたいですし、ペストーニャがきっとツアレの帰りを待ちわびていると思いますよ。ああ、早く料理の修行をさせたいと連絡が先ほどありました」
セバスはそう言って、何かの書類へ視線を移し、書類ををペラっとめくる。
「そうなんですか~、そうだったら嬉しいですね!ペストーニャ様に教わっている料理の話や片づけの極意もまだまだ分からないところもあるので、帰ってさっそく修行のつづきしなきゃですね」
ツアレはよしっと片手の拳を上にあげて、やる気をみせた。
セバス様以外にも私の存在を認めてくれる方がいる。
これは一生懸命頑張るだけの価値があることだ。
何も持たずに生まれた私だけど、
セバス様がくれた勇気だから、
この勇気を、元気を、
ナザリック地下大墳墓のみんなのために使いたいんだ。
そんな歌があれば、きっと歌っているんじゃないかと思った。
(最近私って、詩的な考えが浮かぶようになったかも。これもペストーニャ様と色々お話したり、恋愛に関する本を借りて読んだりしたから?)
愛にできることはまだあるのかな?
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