セバスのお買い物(3)

街中で、つい美味しそうなパンがあったので買ってしまったセバス。

(これはナザリック地下大墳墓で、パンのバリエーションを増やすためです・・

けっしてツアレにあげたいから買った訳ではありませんよ・・デミウルゴス・・)


何故かパンを買うことに対しての罪悪感から、誰にも言われていないのに言い訳を心の中で言う。


もうこの辺では、食べ物屋以外の店が無さそうなので引き返そうとすると、

粗末な服を着て、皺だらけの腰の曲がったおばあさんが、歩道でしゃがんでいた。

(ここは道端ですし、ベンチも無いところでしゃがむとは何か理由があるかもしれません。一回だけ声を掛けてみましょう。)


おばあさんの前に行き、同じようにしゃがみ声を掛ける。

「どうかしましたか?」

「足を痛めてしまって・・・この大荷物だと動けなくて・・」


「困っている御様子、何か私にお手伝い出来ることはありますか?」

「いえ・・見ず知らずの方に手伝って頂くなんて・・申し訳ないです・・」

おばあさんのもともと曲がっている腰がさらに曲がった。

「気になさらないでください。困っている方に手を差し伸べるのは当然の事です」

微笑むセバスはさっと手を差し出す。


「本当にすみません、御手数おかけしますが、自宅まで荷物を運ぶのを手伝って頂けませんか?」

曲がった腰を少し伸ばして、セバスの手をつかむ。

「喜んで。では私がお連れしましょう」


セバスは、大荷物とおばあさんを同時に抱えて、移動したかったが、怪力で目立つのはまだ良くないと考え、人も乗せられる台車をわざわざ借りてきた。

「旦那様、台車を借りてまで私の事を手伝わなくても・・・」

「いえいえ、お気になさらず・・・」

テキパキと大荷物とおばあさんを台車に載せていく。


____ガラガラと台車を引いて、食べ物屋が多い通りを後にする。

そして、鬱蒼とした林の方向へ向かっていく。


道中、セバスは緊張で硬くなっているおばあさんに話しかける。

「今日は暖かくて、のんびりと散歩するには良い日ですね」

「ええ・・・散歩には良いでしょうね・・」

申し訳なさと、かっこいいセバスを前にしてなかなか緊張が解けないおばあさん。


「私は今日はお休みで、この街のパン屋さんに初めて訪れたのですが、とてもおいしそうです。パンはお好きですか?」

「・・ええ、美味しそうですよね。私も若い頃はよく食べていましたよ。」

「それは良いですね、最近は他に美味しいものでも見つけたんでしょうか?」

ニコニコ微笑むセバスとまだ緊張しているおばあさんが、到着するまでぎこちないながらも、おしゃべりしていた。




______台車を引きながら、たわいもない話を目的地に着くまでおばあさんとおしゃべりをした。

「その目の前にある小さな建物が、私の家です・・」

「分かりました、近くまで行きましょう」

目の前には、木材で作られた小さなログハウスのような家が、鬱蒼とした林の中に一軒ぽつんと立っていた。


「さて、この荷物はどこに置きましょうか?」

「旦那様、大変申し訳ないのですが、家の中までお願いできますか?」

「かしこまりました」

セバスはにっこりと微笑んで答えた。

(しかし、この家の中に何があるか分かりません。注意だけはしておきましょう)


なんの変哲もない家が実は、盗賊団のアジトだった、凶悪な人身売買の罠だったなどという事もあるので、周りを気にしながら荷物を持って家に入る。


(うーん、家に入ってからこの家には怪しい感じがするのですが、何故でしょう・・)

家に入ってからセバスは、この家に違和感を感じていた。


部屋は外観と同じように、何の変哲もないごくごく普通のログハウスの部屋で、手芸が好きなんだろうか布地が床に散乱していた。


「そこに荷物を置いていただけますか?」

「かしこまりました」


家具の近くに荷物を置くと、おばあさんが優しく声を掛ける。

「旦那様、もしよろしければ送って頂いたお礼に、お茶を振舞いたいのですが、いかがでしょうか?」

もじもじしながら、おばあさんは明るく話す。


それを聞いたセバスは、優しく返答した。

「・・・よろしいのであれば、お言葉に甘えて頂きましょう。」

(断っても良いのですが、この家の違和感が気になりますね・・・)

セバスは優しく微笑んだが、警戒は緩めない。


次は、木材で作られた家具ばかりの部屋にセバスは案内された。

「散らかってますが、こちらの木の椅子にお座りになってお待ちください」


セバスは木の椅子に座ると、木が重みの為にギイっと鳴る。

「ありがとうございます。では失礼して座らせて頂きます」

(お茶を頂いたら急いで街に戻らなくては・・・)












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