ゲームバーの魔王と愉快な仲間たち。〜ボードゲームの魅力、教えます〜
綟摺けんご
ゴキブリポーカー
プロローグ:初めからクライマックス!?
「タケル先輩、『これはゴキブリです』よ?」
目の前に座っているブカブカの男物の黒いトレーナーを着ている少女が、僕に向けて言い放った。
ブカブカのトレーナーをだらしなく着ているため、彼女のスポーツブラの肩紐部分がちらりと見える。
なぜ少女と呼ぶのかというと、彼女は卓を囲む参加者の誰よりも若く見える上に童顔だからだ。
身長はアホ毛の跳ねた部分も含めてやっと日本人女性平均身長になるくらい。僕と身長が四十センチ以上も差があった。
四十センチを何にたとえるといわれると、屋台でよく売られているトルネードポテトくらいだろうか。
両隣には紫色のストレートヘアーの女性と、クタクタのワイシャツ姿の男性が座っている。
二人はそのカードを見た後、僕を見た。
僕は三人の視線に喉を鳴らす。
目の前にあるのは一枚のカード。たった一枚のカードだ。
しかしそのカードは伏せて置かれていて何が描かれているのかわからない。僕が見えている絵柄は、ゴキブリ、ネズミ、コウモリ、ハエ、カエル、クモ、サソリ、カメムシと全人類が『害虫』だと思うものだった。
そして、僕の手元にはゴキブリが三枚並んでいた。
「……さぁ、タケル先輩? ゴキブリか、ゴキブリじゃないのか。決めてください」
「わかってるよ……」
ブカブカのトレーナーを着ている少女は僕を煽ってきた。
シュレディンガーの猫のような気分だった。
そのカードには何が描かれているのだろうか? 生きているのだろうか? はたまた生きていないのか……?
……いや、違う。これは猫じゃない。
開けたら疫病となりえる生き物がぎっしりと詰め込まれたパンドラの黒い匣だ。
彼女は……この黒い匣の中にどんな害虫を詰め込んで、僕のもとに送り込んだのだろう?
もう一度視線をあげると少女が三日月のように口を歪めてた。側から見れば彼女はタチの悪い少女にしか見えない。
しかし、僕から見れば彼女は悪魔だ。ツノが生えた、薄気味悪い悪魔……。
いいや、彼女はこのゲームを支配する者で、僕を殺そうとする魔王だ。
僕は手を伸ばしパンドラの匣に手をかける。緊張と不安と、好奇心に手が震えた。
息を飲む。唾を飲む。
迷う気持ちを捨て、覚悟を決めた。
「これは……だ!」
目の前に置かれたカードを、僕は開けた。
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