幻聴が聞こえる

能口深夜

バブみオギャる世界がやってくる

 こんなニュースを見た。



【悲報】「異世界もの」ブーム、高齢者オタクのものとなり完全終了へ!今、若い世代に人気なのはまさかの〇〇〇〇wwww

http://blog.esuteru.com/archives/9318063.html


 

 最近、【マザコンもの】のライトノベルが、若者層に人気らしい。たしかに、ちょっと前から目につくようになった。


 一世を風靡した【異世界もの】は四十歳代しか買わない、つまりラノベ第一世代方面向けを中心としたジャンルとして、シフトして行きつつあるという。


 この【マザコンもの】、「超強い万能系美人母ちゃんが、さえない主人公を守って戦ってくれて、ひたすらあまやかせてくれる……」というのがテンプレートだそうな。


 そういえば、今期(二〇一九年春季)始まったアニメの中でも『世話やきキツネの仙狐さん』が人気を集めていると聞いた。

 (私は主人公に対しあまり感情移入できず、二話以降見てないんだけども。気持ちはとてもわかるんだけど)


 で、ふと考えてみれば、アダルト系同人においても、一時は近親相姦ものの中でも特に変態ジャンルと見なされていた「ママにあまえる&SEXする」系のものが多くなった気がする。今までロリ主体に描いてた人が、なんか巨乳にバブみオギャり放題みたいな話ばっかり描きだしたり、ロリしか描けない人にいたっては、そのロリに母性を投影した話を描きだしたりしている。


 どういう流れなんだろうか?と思い、ハッと思いついた。


 核家族化を経た少子高齢化と、バブル崩壊による若者層の所得の低下、共働きのため一歳にならないうちから子供を保育所に入れるのも当たり前みたいな昨今。さとり世代とも揶揄される、その子らの世代が、今、比較的自由に金を使えるようになった時代になった……だからこその現象なんではないか。


 この世代は当然、昭和の価値観が色濃い時代に生まれた氷河期世代と違い、幼児期に母親にたっぷり甘えることができなかったわけだ。ここまで母親へと、甘え足りなかった世代って、今までの日本に存在したんだろうか?ちょっと思い出せない。彼らにとってみれば、バブみを感じオギャれる物語に没入するのは、深くまで刻み込まれた欲望の仮充足になるはずだ。


 ひるがえって考えてみると、我ら【氷河期世代】は、子供のころ、「強くあれ、弱いのは努力が足りない」「甘えるな」「たくさん勉強していい大学へ入れば社会出てからいい生活が送れる」と言われ育ち、その多くが大人になってから「話が違う。この世界では俺はダメだ」という漠然とした不満を抱いている世代だと思う。【異世界もの】――パッとしない主人公が、こことは違う世界へ行き、無双する――という物語を読むのが、欲望の仮充足になるのは、当然だったのだ。


 我、神仏の名にかけて予言します。


 今後、日本の現状が大きく変わらない限り(例えば子供を産んだら一〇〇〇万円の育児手当が国から出る&どちらかが育児に専念すること、みたいな法案が出るなり)、ラノベレーベルは母無双系ラノベが席巻し、二〇三〇年ごろの春アニメは三十本中八本が【マザコンもの】になり、「バブみ」「オギャる」等の単語はしつこく生き残り広辞苑に掲載され、アダルト同人界隈には母子相姦ものがあふれかえり、最後にこの状況に気づいたツイフェミ(ミソジニスト)が「いまさらかよ」というタイミングで怒り狂い頓珍漢なことを主張しだすも世の中はピクリとも変わらず、そして、いつものように、世界の歴史は螺旋を描きつつ韻を踏むことになるであろう。

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