15
……でも、なぜだかこのとき、鞠はすごく(自分でも驚くくらいの)大きなショックを受けた。
それはまるで、今の今まで、自分の中に溜まっていた偽りや、嘘が、おんぼろのダムが大雨によって決壊するときのように、一気に川下に向かって吹き出してしまったかのような、そんな強い、そして抑えることのできない、ショックだった。
そのせいで、鞠は気がついてしまった。
自分の本当の、本当の気持ちに。
……そうか。と、鞠は思った。……『私はずっと無理をしていた』のだ。
私は今も、昔も、ずっとずっと、あの、優しくて、笑顔の素敵な大橋綾くんのことが大好きなのだ。
気がつくと、鞠はぽろぽろと涙を流しながら、土手の上で泣いていた。
鞠は土手の上に立ち止まって、しばらくの間、その場から動くことができなくなった。その間、鞠はずっと泣いていた。
もう涙を隠すことも、なにも、することができなかった。
「……先輩? 突然、どうかしたんですか?」
鞠と同じように立ち止まった透が、泣いている鞠に心配そうな顔をして、そう言った。
鞠は無言で、首を横に振った。
それは、なんでもない、という意味のメッセージが込められた動きだった。
「……先輩」
透が言う。
……それから少しして、きょろきょろと周囲の様子を伺っていた透は、土手の反対側を歩いている、小舟南と大橋綾の二人の自分の先輩である三津坂西中学校の生徒の姿を見つけた。……そして、なぜか透は、その二人の生徒の姿を見て、『鞠が土手の道の上で一人、立ち止まって泣いている理由』に、きちんと気がついたようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます