第72話☆~天神祭~小さな物語~その2

 いつもあなたの姿を追ってた。


 ボールを追いかけているあなた


 サッカーって点を入れる人が目立つけど

 ゴールを守るために必死に走り続けるディフェンスがこんなに凄いって思わなかった。

 引退を掛けたあの試合

 遠くから見守っていたんだよ

 あなたは知らないよね

『山口 颯くん』

 少しの差で負けちゃったけど、やりきったって日焼けした顔のあなたは言ってた気がする


 みていた私の方が泣いちゃってた。

『部活3年間お疲れ様』

 心の中で叫んでいたんだよ


 そのあなたが、同じ塾に入ってくるなんてびっくりしたの


 クラスは違うけど同じ時間に隣の教室にはあなたがいるんだもん

 嬉しいに決まってる。


 昨日天神祭に誘われた時、ほんとは嬉しくて泣きそうになったの


 きっとあなたは知らないよね


 ずっとあなたのこと見ていたんだよ


 休み時間に友達と笑いあってる姿

 体育祭で一番にゴールテープを切る姿

 目に焼き付いているんだよ


 待ち合わせは6時


 お気に入りの浴衣を着たけど、ちょっと恥ずかしいな




 あなたは日焼けした顔で笑いながら手を振り返してくれたね。


 高校最後で片思い3年目の夏


 たいせつな時間をあなたと過ごす。


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