Missing

zizi

第1話 取調室(1)

 昼過ぎから冷たい雨が降りはじめた。


 デスクの上に、表紙がピンクの、どこにでもあるようなノートが1冊置いてある。

 何度も読まれたに違いない、表紙が弓なりになっている。

 警視庁・刑事部・捜査1課刑事、松永泰三まつながたいぞうは、老眼鏡をかけ直し、おもむろにノートを手にした。

 びっしりと青いインクの文字が連なっていることで、誰が見てもただのメモでないことはすぐわかる。

 松永は何かを深く考えるようにゆっくりと開いた。

 と、そのとき、同僚の酒井が松永に声をかけた。

「松永さん、北島亜由珂きたじまあゆかの件はやはり間違いなさそうですか?」

「ああ、おそらくな」

「じゃあ、引っ張りましょうか?」

「そうだな。でもまだ本星と決まったわけじゃないから、任意で呼ぶことにしよう」

「わかりました」

 酒井はそう言い遺すと、上着を手にして部屋を出て行った。

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