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「馬鹿馬鹿しいね。UFOなんで呼べるわけないよ」
新谷くんはそう言った。
その新谷くんの意見は、まあ、確かにそうだ、と萌も思った。(と、いうか本当に呼べたら、それはそれですごく怖い)
「そりゃ、そうだろうけど、そういうこと言わない」むっとした顔で硯が言った。
「いや、一概にそうとも言えないよ」と鈴谷先生が言う。
その先生の言葉を聞いて、三人の生徒たちは一斉に鈴谷先生に目を向けた。
「新谷くんの言っている、UFOっていうのは、いわゆる銀色の円盤のことを言っているんだよね?」鈴谷先生が言う。
「そうです」新谷くんが答える。
「それは確かに呼び出すことはできないかもしれない。銀色の円盤っていうのは、人のイメージやSF小説や映画が作り出した架空の物語だからね。でも、そうじゃなくて、UFOっていうのは、もっと違う概念のことを言っているのだとしたら、わりかし、不可能とも言い切れないんじゃないかな?」
「どういうことですか?」萌が聞く。
「つまりね、UFOというのは、『異界への扉』のことなんだよ。その比喩だね。言ってみればそれは、『死者の国』につながっている『道、あるいは通路』のようなものなのかもしれないね」鈴谷先生は三人の顔を順番に見ながら、面白そうな顔で、そう言った。
「そう言ったものが、現在ではUFOと呼ばれる現象として認識されている、ってことですか?」硯が言う。
「エンターテイメントとしてね。大本は同じってこと。発想の大本がね。僕も別にUFOがいるとは思ってはいないし、この儀式によって、異世界への扉が開くとも思ってはいないよ。でも、文明化する前の、昔の人はそういうものや、そういった経験が宗教的な現象として、実際にあると、そう思っていたわけだし、あるいは、今も、僕たちが気がつかないだけで、そういう道や通路と言ったものは、いたるところにあるのかもしれない」
鈴谷先生は萌を見る。
「たとえば、早川さんは、早川神社の巫女であるわけだし、僕よりも、こういったことについては、感性が鋭いんじゃないかな? どう? なにかいつもとは違う異様な雰囲気とか感じたりする?」
「えっと、……いいえ、とくには」と萌は少し申し訳なさそうな顔で言った。
すると鈴谷先生は一人で笑い出して、「ごめん。冗談。冗談だよ。朝日奈くんと野田さんが図形を書き終わるまで時間があったから、ちょっと思いついた話をしてみただけだよ。あまり気にしないでね。早川さんも、みんなも」
と鈴谷先生は言った。
「お待たせ」
その先生の言葉のすぐあとで、朝日奈くんと葉摘が図形を書き終わってみんなのところに戻ってきた。
「なんの話し、してたの?」
「UFOと異界の扉についての話」朝日奈くんの言葉に硯が答える。
「お? なにそれ? 面白そう!」と、朝日奈くんがすごく興味のある顔をしてそう言った。
萌がそんな二人から、新谷くんに視線を移すと、新谷くんはなにやら難しそうな顔をして、じっと、その校庭の隅っこに書かれたUFOを呼ぶための図形を見つめていた。
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