20

 萌が後ろを振り返って二人の様子を見ていると、ふと新谷くんと目があった。慌てて萌は視線をずらして、また、元のように前を向いた。

 ……心臓が、すごくどきどきしていた。

 もう、萌は後ろを振り返らなかったけど、そのあとで新谷くんはとくになにも反応をしなかった。

 それから萌たちは校庭の隅っこに到着した。


 そこには鈴谷林太郎先生がいた。

「やあ。遅かったね」

 そう言って、鈴谷先生はオカルト研究会のみんなに片手をあげて挨拶をした。「すみません。要石のところに少しだけ寄っていたんです」とみんなを代表して朝日奈くんがそう言った。

 鈴谷先生はその手にがらがら(校庭に線を引くやつだ)を持っていた。みると、校庭の隅っこには、なにやら得体の知れない模様のようなものが、すでに半分以上、引かれているようだった。

 魔法陣のようにも、あるいはなにか異星人の言葉の文字のようにも見える、その半円形の図形は、結構大きくて、全体はよく見えないけれど(屋上からだったら、きっと全部見えるだろう)それはまちがいなく、これからUFOを呼ぶための儀式に使用する『奇妙な円形の図形』に違いないのだった。

「変わります」

「よろしく」

 そう言って、朝日奈くんが鈴谷先生からがらがらを受け取った。残りの半分を描くつもりなのだろう。

「野田さん。手伝って」

「はい。わかりました。部長」

 そう言って、葉摘は読んでいた本を閉じると、それから朝日奈くんの持っていた『UFOを呼ぶ本』の中に載っているUFOを呼ぶための図形(それは鈴谷先生も、プリントの状態で持っていた)のページを開いて、それを朝日奈くんの横に立ちながら、二人でいろいろと確認をするようにして、残りの図形を校庭の隅っこに描いていった。

「まったく。よくやるよ」呆れた声で新谷くんが言う。

「そう? こういうの、楽しくない?」本当に楽しそうな声でオカルト好きの硯が言った。

「ね? 萌も楽しいよね?」

「うん。まあ楽しい」

 硯の言葉に萌が答える。

 そんな二人の会話を聞いて、「まじかよ。二人とも、信じられないな」と新谷くんはまた、呆れた声でそう言った。

 夕方の校庭には、今も、運動部の練習をする声と、新校舎を建てる工事の音が、聞こえている。

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