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「幽霊って本当にいるんだって」
放課後の時間。
萌を校舎の三階にあるオカルト研究会の部室に案内しながら硯が言った。こういった種類の話をしているときの硯は、なんだかんだ言って、本当に嬉しそうだった。硯はオカルトが大好きなのだ。
「目撃した噂だっていっぱいあるんだから」
「たとえば?」
萌は言う。
「えっと、そうだな……」
と、少し考えてから、「テレビの中に映る女の人の幽霊とか、森の中にある祠のところ、あと廃棄されたトンネルの中、それに朽ちた神社にある社のところ、夜の駅のホーム、それに学校のトイレや、屋上。あ、あともちろん、早川神社にも、そう言った幽霊の目撃証言があるよ」と硯は言った。
「それって、全部話だけでしょ。それと、最後のやつ。早川神社とかそういうこと言わないで。そこは私の家なんだからさ」
萌は言う。
「ごめん。でも、噂があるのは本当だよ」
「もう。ほかはともかく家のことはあんまりほかの生徒に言うのやめてよね。怖いし、それに評判も悪くなるから」
「はいはい。わかってます。お姫さま」にっこりと笑って硯は言う。
悪気はないのはわかっているのだけど、萌はちょっとだけ、デリカシーのない(悪気はない。天然なのだ)親友の言葉にむっとした。
それから萌は、ががが、とかごごご、とか大きな音を立てて工事をしている、『新校舎』の風景を窓越しに見た。
もうほとんど完成しているように見える、その建物が実際に利用されるのは、萌たちが卒業したあとの来年度からのことになっていた。
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