あと1年。一緒にいさせて。
たちばな ほたる
いきなり
ある夏の日。
俺は幼馴染みの家に呼ばれた。
幼馴染みとは生まれた時から一緒だ。
俺の母と幼馴染みの母が高校の同級生で、それもあってか仲がいい。のは、3年前までの話だ。
高校生になってからはお互い別の学校に行ったため、会う機会が減った、というか無くなった。
だから久しぶりに会えるのは、とても楽しみだった。
浮き足立ったまま俺はインターホンを押す。
「はーい!」
出てきたのは幼馴染みのお母さんだった。
「お久しぶです。」
「本当に久しぶりね。いいわよ!あがって、あがって!」
「お邪魔しますー」
お母さんの豪快さは昔と変わらず今も健在。
「優!はるちゃん来たわよー!」
「あーい!」
2階から幼馴染みの優が顔を出す。
「悠!久しぶりー!早く来てー!」
「あいよー」
優の元気さも相変わらず。
「そこ座ってー。」
「はーい。」
部屋の感じが少し変わっている。そりゃ3年も家に遊びに来てないし、少しは変わってるよな。
何をするのかと思ったら、優は俺の目の前に正座をして座る。
「悠に話があります。」
さっきまでの優の顔から一転、真剣な顔になった。俺も思わず曲がっていた背筋を伸ばしてしまう。
「話って?」
「俺はあと1年しか生きられません。」
俺は最初何を言っているかよく分からなかった。
でも、優の顔を見ると嘘をついているとは思えない。
「1年しか生きられないってことは、1年後には死ぬってこと...?」
「そーいうことになる。」
「は、なんだよそれ...。意味わかんねーし!」
「意味わかんなくて当然だよ。」
そう言った優は笑っていた。
「なんで笑ってんだよ。」
「だって俺もよくわかんないんだ。」
「分かんなくても、どーして死ぬぐらいは分かんだろ...?」
「そーだね。説明するよ。」
優の病気。それは
【Death flower】
世界でも珍しい病気らしい。
原因は不明だが、精神的なものからだと考えられている。
死ぬ前か死んだ後に近くに花が咲くことから名前がついたそうだ。
「...と、そんな感じかな。」
「ダメだ、よく分からん...。」
「分かんなくて当たり前。だって本人が分かってないんだもん。」
優はずっと笑っている。なんで笑っていられるのか俺には分からなかった。
その日の夜。
俺は優の家で晩御飯をご馳走になった。
文句など言えないぐらい美味しかった。
「じゃあ、帰ります。」
「えぇー!帰っちゃうの?」
「はい。すいません、晩御飯までご馳走になったのに...。」
「ううん、大丈夫よ!もう、高校生だもんね...。」
「ホントすいません...。」
「いいのよ!謝らなくて!ほら、遅くなっちゃうから早く帰りなさい!」
「じゃあ、お邪魔しましたー!」
「悠じゃーな。」
「おう、じゃーな。」
今日は星がきれいだ。
あと1年。一緒にいさせて。 たちばな ほたる @Karinkazami
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