ぼくらはみんな

勝利だギューちゃん

第1話

ある休みの日、僕は散歩に出かけた。

雲ひとつない日本晴れ、散歩には最適だ。


目的はない。

ただ歩く。

風も向くまま、気の向くまま、

ひたすら歩く。


近所でも、初めて通る道は、とても斬新だ。


子供たちが、楽しく遊んでいる。

しかし、道路で遊ぶの危険だ。

「危ないよ」と、声をかける。


そしてまた、歩き続ける。


しばらく歩くと、空き缶が捨ててあった。

こういう非常識な人がいて困る。

でもそれが、この国では、当たり前と化している。


僕は空き缶を拾うが、近くにゴミ捨て場はない。

仕方なく、それを持ったまま歩く。


ようやく自販機を見つけ、その隣にあったゴミ入れに入れた。


「せっかくだし、何か買うか」

僕は紅茶を買い、また歩き出した。


ピロピロピロ


当たったのか?


「当たりましたよ」

子供の声がする。

「あげるよ」

それだけいうと、僕はまた、歩き続けた。


後ろから、子供の「ありがとう」の声がした・・・


近くに公園があり、そこで一休みする事にした。

ベンチに腰を下ろし、先程買った紅茶を飲む。


とても、美味しい・・・

生きているって素晴らしい・・・

・・・って、大袈裟か・・・


空を見上げる。

太陽が眩しい・・・


「あれ?君も散歩?」

見上げると、クラスメイトの女子がいた。

「まあね」

「こういう、天気がいい日は、外へ出たくなるね」

「全くだよ」

女子は僕の隣に座った。


「食べる?おむすび」

「いいの?」

「うん、たくさん作ってきたんだ」

「料理好きなの?」

女子に訊く。


「うん、得意かどうかわからないけどね。

こういう天気のいい日は、外で食べたくなるんだ」

「僕もだよ」

渡されたおにぎりを、ほうばる。


とても、美味しい。

それを、素直に伝えた。


「ありがとう。」

「こちらこそ、ご馳走様」

「もっと食べていいよ・・・」

「でも・・・」

「男の子は、たくさん食べなさい」

「はーい」


その後はしばらく、沈黙が続いた。


「ねえ、」

先に口を開いたのは、彼女だった。


「君の夢は何?」

「僕の?」

「真面目に訊いてる?」

「うん」


僕は本心を答えた。


「自分が死んだ時に、あなたはあなたに生まれてきて幸せでしたかと訊かれて・・・」

「うん」

「心からYESと答えらる生き方をすること」


「深いね。素敵だよ」

「どうも」


そう・・・

そう思えるような生き方をしたい。

せめて最後は、そう思いたい。


「そして、出棺の時には、この曲を歌ってもらうんだ」

「何?」


【手のひらを太陽に】


偶然か・・・流れてきた・・・

♪ぼくらはみんな、いきている~

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ぼくらはみんな 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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