VS チョウチン魔物

「よお、さっきぶりだな。……残念だがお仲間さんは、来ないぜ!俺が全部倒したからなぁ!」


「ギギュュュアァァア!!」


 俺の言葉を理解しているのか、チョウチン魔物は、俺に怒りの感情をぶつけてくる。


 まぁ、コイツが何を思ってようと俺には関係ない。

 なひせ最下層に向かおうってんだ、コイツ程度で立ち止まっちゃいられない。だから倒して乗り越えるんだ!先へ進むために。


 教えてやるよ!俺は餌じゃないってことを。

 今度はこっちが狩るばんだ!


「さあ、コンティニューといこうか!」


 この言葉を合図に、俺とリリム対チョウチン魔物の戦いが始まった。


 先に攻撃を仕掛けてきたのは、チョウチン魔物の方からだった。


 チョウチン魔物は天井に張り付いたまま、こちらに向かって糸を飛ばして来た。


 咄嗟に横へ身を投げ出し回避する。


「はっ!そんな単純な攻撃くらうかよ!」


「ギュアァァア!」


 チョウチン魔物は、一発で仕留めきれなかった事に苛立ちを覚えたのか、俺達を追いかけるかのように糸を飛ばし続けた。


「おっと……くらえ!」


 俺達は、それらの全てを回避するのと同時に、《第一階位魔術》【ファイアボール】を無詠唱で放ち脚を狙う。


 俺の攻撃にチョウチン魔物は、後ろへ下り回避するが、続けて向かってくるリリムの攻撃に僅かに反応が遅れ、直撃し、その衝撃で脚が天井から離れ、地面へと落下する。


「よし!今だ!仕掛けるぞ!」

「うむ!」


 体勢を立て直す前に奴の所に辿り着くべく、駆け出した――が。


「ちっ!」

「ぬっ!?」


 予想よりも早く体勢を立て直し、距離を取る為に、糸を飛ばして来た。

 しかし、先程同様に、そんな単純な攻撃は通じるわけも無く、全て回避し、奴の元に辿り着く。


 前回の戦闘で気付いた事がある。


 それは、チョウチン魔物がふた通りしか攻撃手段を持ち合わせていない事だ。


 一つは、遠距離からの糸を飛ばす攻撃。そしてもう一つは、蜘蛛の様な細長い脚を使った攻撃。


 現にチョウチン魔物は、俺達に向かって脚を振り下ろし攻撃してきている。


 その脚先には、麻痺効果のある、毒が在る。

 前回は、チョウチン魔物以外にもナイトアーマーがいて、そっちの方にも意識を向けなければいけなかった所為で、僅かに反応が遅れ、チョウチン魔物の攻撃で、擦れ傷を受けてしまった。

 だが、チョウチン魔物の毒は強力で、擦れ傷程度でさえ、数分経てば、毒が全身に回り動かなくなり、そのまま俺はチョウチン魔物に捕食されて死んだ。


 しかし今回は、事前にナイトアーマーも殲滅したおかげで、全力でチョウチン魔物に意識を向ける事ができる。


 脚を振り下ろすチョウチン魔物の攻撃は、大振りで、余裕で回避できる。

 俺は、横に飛び回避すると同時に、振り下ろされた脚を斬ろうとするが――。


 ガキン――!


「なっ!?」


 まるで金属同士がぶつかり合った鈍い音を鳴らし、俺の剣は弾き返された。


 予想外の事実に唖然としていると――。


「主人、危ないのだ!!」

「え?」


「ギシャァァア!!」



 リリムの叫び声も虚しく、チョウチン魔物の脚が直撃し、吹き飛ばされた。


「あるじぃぃい!」

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