虹宇宙物語~にじそらものがたり~

斑雪

プロローグ?

プロローグ? その1


 俺は俺自身を優秀な人間だと自負している。


 軍大学を卒業し、軍隊の花形『宇宙軍』に進み、入隊してからも幹部候補生からすぐに幹部になり、今では『地球連合艦隊』第五艦隊の巡洋護衛艦で砲雷長を受け持っている。


 俺はそんな誇りをいつも周りに見せなかった。でも、俺は優秀な人材。他は俺に使われているに過ぎないと言う考えはあった。

 この艦の艦長も確かに優れた人だとは思っているが俺ほどでは無いし、もう歳だ。すぐに俺は艦長の地位に就く、そう思っている。


 そんな事を考えながら俺は少数艦によるパトロール航行の任に就いていた。

 何も起こらない。

 ただとても平和な太陽系外縁の航行だった。周りは黒い世界に細かな光が輝く、一切の大気もなく冷たい。


「艦長、時間です。基地へ帰航します」


 俺は艦長へパトロール航行終了の確認をとる。


「はい、分かった」


 艦長は一言そう言った。


 艦の指揮権は艦長にある。しかし、具体的な実行命令は艦長を通じて各部の長である者、つまり航海長と砲雷長が行う。

 艦長は命令すると言うより、その各部の長の要請を許可するのである。


 この場合、艦長は俺(砲雷長)のいる戦闘指揮所CICで指揮を行っているため、艦橋かんきょうにいる航海長は艦長への直接航行指揮要請は出来ない。

 よって1番近くにいる俺(砲雷長)が艦長へ航行指揮を要請し、その命令を俺が航海長に指揮するのである。


 俺は無線のボタンを押す。


艦橋かんきょうー前進原速ー転舵、おもーかーじ、帰航する」


 独特な撥音はつおん。伝統らしく、戦闘時でも分かり易くて誤認が無いようにしているらしい。


「前進原速ーおもーかーじ」


 繰り返される言葉。

 スピードを上げ加速度が伝わる。


 その時だった。


「レーダーに感っ!!」


 レーダー担当の声がCICに響く。


「左 90度 距離30 不明艦アンノウン5、いや6です!!恐らく全て巡洋艦クルーザークラス!!」


「なに!!」


 俺は思わず立ち上がった。不味い。不味い。まさかこんな所で⋯⋯なんでだ??

 味方は俺たち含めてもパトロール航行に出ていた巡洋護衛艦1隻とパトロール艦2隻だけ。まずレーダーで探知するの遅くね??

 ワープ??アクティブステレス??

 俺は考えうる事全てが頭の中で回転した。


「真っ直ぐ近づきます!!!」


 レーダー担当が大声を出す。


「艦長!!配置つけます!!」


「はい、分かった」


 いつも通りの会話、だが緊張感が違った。

 俺もそうだが艦長もだった。


「対艦、対空戦闘用意!!」


 俺はベルのボタンを押し込んだ。


 ピーン!ピーン!ピーン!ピーン!


 慌ただしく艦内が動く。


艦橋かんきょうー、最大戦そーく!!とーりかーじ!30度ヨーソロ!!」


 俺は航路の変更させる、回避行動である。

 戦闘時、全て砲雷長の指揮でこの艦は動く。


「艦橋よりCIC!!不明艦アンノウン、光学機器により視認!!」


「CIC、了解!!引きつづき見張れ!!」


 いきなりレーダーに現れたという事はワープでもしてきたのか、なら敵か?それとも⋯⋯

 俺は迷っていた。攻撃していいのか?

 その迷いが俺の行動に現れた。


「艦長、不明艦アンノウンに対して通信すべきです」


 迷いから生まれた、逃げ。この不明艦は敵ではないという願望。色々な思いが混じっている提案だった。


「うむ、いきなりレーダーに現れたというのであれば、ワープを使ったのであろう。しかし、太陽系周辺には決まったワープルートがあるはずだ⋯⋯」


 艦長も迷っている。いや、怖いのであろう。


不明艦アンノウンへの攻撃はそれこそ我々への戦争の口実に成りかねません。いくら領内であったとしてもー


「艦橋よりCIC。あ、不明艦アンノウン、発光確認!!しゅ、主砲砲撃と思われる!!敵です!!」


 一瞬にして迷いと恐れを後悔する。そんな報せだった。


「CIC了解っ!!回避する!!対艦戦闘ー敵砲撃回避!!」


 敵です!!この響きはとても俺を焦らせる。

 いくら優秀な俺でも実戦経験は1度も無い。この現状を悪い夢と思ってしまいたい程ビビっていた。


艦底ボトムエンジンオン! ! 上昇アップ90度っ、回避する!!」


 艦が一気に上昇し、加速度を感じる。


艦橋かんきょうー、最大戦そーく!!航海長っ!敵艦による攻撃回避は一任する」


「航海長了解。回避行動ー!!」


 俺は回避なんか指示している暇はない。こんな時には人を使う。回避行動は全て航海長に一任し、俺は少し考えた。


 反撃するべきか⋯⋯レーザー用チャフをいて回避に専念するか⋯⋯

 反撃するにも艦数が圧倒的に足りないし、他の2隻は速力も火力も防禦力ぼうぎょりょくも欠けているパトロール艦だ。

 しかも本艦は軍艦とはなっているが、護衛艦である。主な仕事は名の通り護衛、攻撃用には造られてないし、そもそも護衛艦をパトロールに回すのが間違っている。(こんなこと愚痴ってもしょうがないが⋯⋯)

 援軍⋯⋯これもあまり期待できない。今はオールトの雲という太陽系の最外縁を航行しており、惑星、準惑星基地からはとてもじゃないがすぐ着く距離では無い。

 なら、逃げるか⋯⋯

 それは無い。すぐ俺は一瞬でも過ぎったその考えを棄てる。

 今日こんにち、逃げたら恥なんと言う非合理的な教育は行わない、しかし教育を行わないだけで、風習としては⋯⋯ある。

 敵から逃げた。そんな汚名を背負ってしまっては今後の昇進に影響する。そんな事出来ない。

 なら、どうする?


 俺は必死に考えた。


「通信士、基地には連絡を入れているか?」


「はい。しかし、かなり基地から離れている為、返信待ちです」


「そうか⋯⋯」


 分かっていた、分かっていたが⋯⋯


 持ち堪えられるか?

 チャフはパトロール艦にも本艦にも装弾が少ない上、1度撒いてしまってはこちらから攻撃出来なくなる。しかし、砲の撃ち合いとなれば、パトロール艦も本艦も耐えられない。

 俺は覚悟を決めた。


「艦長、レーザー用チャフ使用します」


「それは⋯⋯こちらから一切攻撃しないと言うことか」


「·····はいっ」


 沈黙。少しの間だったが、その言葉がピッタシ合う瞬間だった。


「⋯⋯チャフ使用を許可する」


 艦長は組んでいた腕を帽子のつばへやる。


「はっ!!」


 俺は勢いよく返事していた。


「チャフを使用する!電子戦EA攻撃はじめ!!」


 EA攻撃、またの名を電子戦という、電子戦とは簡単に言うと敵やそれから発せられた攻撃に対するジャミングなどをする攻撃(迎撃?)方法である。

 この場合、敵のレーザー砲を回避する為、EA攻撃である電子対抗手段ECMのレーザー用チャフを使用する。


 レーザー砲とはエネルギーの塊を砲弾の様に打ち出し、敵へ攻撃する手段であり。

 今日こんにちの対艦戦闘、艦隊戦ではレーザー砲の撃ち合いが主な攻撃手段である。


 その攻撃を機動による回避行動、もしくはレーザー用チャフを撒いてレーザーを攪乱かくらん、散乱させることが主なレーザー砲回避で、レーザー用チャフとは金属製(主にアルミ等)の綿や膜、金属片と絶縁体が入った筒状の物をふねから打ち出し、破裂させる事でそれらをばら撒く手段である。


 チャフが破裂すると進行方向に金属片、手前に絶縁体がばら撒かれ、レーザー砲を拡散させる。

 エネルギーの塊は無数の金属片を散らばりながら辿たどり、その塊は放射、散乱の後、減衰され絶縁体によって遮断される。


 まあ、このチャフには(無重力状態では)すぐ金属片と絶縁体が広がり離ればなれになってしまい、常に打ち出し続けないと効果がとぼしくなる、という欠点があるものの、かなり重宝する防衛手段である。


「レーザー用チャフ、発射します!!」


 迎撃担当の隊員がボタンを押した。


  ★ ★ ★


 どうも斑雪です。初めての小説ですが、生暖かい目で見守ってください。

 この小説(設定等)への指摘は大歓迎です!!「こんなの拙すぎて読めない!!」って方はそう書いて貰っても構いません!!


 これからかなり気まぐれ投稿になると思いますが、暇つぶし程度に下手小説をお楽しみ下さい。


 あ、それとルビ?ってのを初めて使ってみました。便利なのかな笑

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