基地襲撃

 どこかでベルの音が聞こえる。


 

 私は何をしていたのだったか。


 体を起こそうとするが目眩がしてうまく起き上がれない。


「大尉!」


 聞き覚えのある声だ。誰だったか。


 なぜ私は床に倒れているのだろう。


「べドローシアン大尉!」


 先程と同じ声が確かに私の名を呼んでいる。

 その間にも絶え間なくベルの音が聞こえる。このひっきりなしに鳴り続けるベルは火災を知らせるベルだろうか。目覚まし時計アラームだとしたら最悪の音だ。


「大尉、聞こえていますか!」


 また私を呼ぶ声だ。私の意識が明瞭になったのか、声の主がすぐそばにいるのが分かる。私は目眩に頭を振りながら体を起こすと、見覚えのある強面の男の顔が目に入った。意識を失う前まで一緒にいた曹長だ。

 ああそうか、カリブ海洋上の海兵隊基地に私は来て、彼の案内で基地に捕らえている人物を確認しようとしたら攻撃を受けたのだ。


「聞こえているよ。曹長」

「良かった。大尉は動けますか?」

「なんとかね」


 私は床の上に座ると状況を確認する。私たちを襲った敵はいない。この部屋を警備していた兵士2人もまだ倒れている。だが、外傷はなく息もあるようだ。


「あれからどれくらい経過したか分かるか、曹長?」

「私は気絶せずに済んだので数分しか経っていないかと」


 曹長は私と違って気絶せずに済んだようだが、右手で首を抑えながら辛そうに答える。


「刺されたのか?」

「いえ、電気ショックかと。部屋に入った途端にやられました」


 とりあえず、曹長は大丈夫そうだ。電気ショックで無力化されたのでは抵抗できなかったのも無理はない。

 

 突然、ズンという音と共に部屋全体が揺れる。爆発か?

 同様の音と揺れが立て続けに起こる。それと同時に、基地内に備え付けられているスピーカーが緊急事態を叫ぶ。


(敵襲!敵襲!爆発が確認された!敵による破壊工作の可能性がある!警戒体制を強化せよ!繰り返す、警戒体制を強化せよ。増援部隊出動せよ!)


 最悪だ。外の状況は分からないが、防衛部隊は敵が侵入していることに気づいていないらしい。この状況からして外の爆発は派手なブラフかもしれない。何より現時点で敵が基地内部にまで侵入しているという放送がない。この間に敵の逃走を許す可能性がある。


「曹長!無線機は?」

「あります!」

「よし!捕虜を奪取した侵入者について報告!敵の大規模攻勢でないなら捕虜救出を主目的とした敵の破壊工作かもしれん!」

「はい!」


 曹長が手持ち式の無線機に緊急事態を叫んでいる間にも爆発は続いていた。




 

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