ロイヤル・ハリヒア

八雲ヨシツネ

ありえたかもしれない朝

 冷戦末期のカリブ海洋上。この日のカリブ海は夜明け前だというのに騒がしかった。

 それは操作を誤ればすぐにでも海面に激突する低空を1機のヘリコプターが爆音を轟かせて飛行していたからだ。このヘリは冷戦期から有名になったソ連製のMiー24ハインドという重武装と兵員輸送の両立を図った機体にシルエットこそ類似していたが、機体の質感はアメリカといった西側陣営のステルス技術を意識させるデザインで、武装をはじめとする細部も西側陣営のモノに酷似している。

 この機体は夜が明ける前に目的地の島へ到着すべく爆音を立てる一方で、目に見えないレーダー網にはかからないよう万全の体制で暗い海を過ぎ去っていった。

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