第3話 憐れなお節介
ピンポンが鳴る。こんな時間に。
分かってる。また、いつものだ。久しぶりだなあ。。。
よっこらせと、重く痛く痺れた足を、起こして
インターホンに出る。
「はい」
「・・・あの、私達×××でして、神の教えのパンフレットを。。。。」
早口で良く聞こえない、小さい声の
いかにも、善良で気の弱そうな、年配の奥さんが
後ろに何やら背の高い笑顔の、これまた善良そうで気の弱そうな男を従えて
(見えてしまう所が、何とも・・・)
もう慣れっこな私は、でもいつも返す言葉を変えた
「ああ、私、他の神様を信じてるんで」
その善良そうな、でも憐れな奥さんは
「ああ・・・そうですか・・じゃ。。。」
と、また良く聞き取れない声で、ポストにパンフを入れて行った。
憐れだね。可哀そうだね。最初は怒りに塗れていた私だったが、
(バカにすんな。弱さに付け込むな。塩撒いてやる!二度とくんな!)
と、実際に、塩を撒いた。
お粗末なパンフも怒りで煮えたぎりながら、何処の団体だと
もう何度も聞き古し、辟易して反吐の出る愚かな屁理屈を読み
ぐしゃぐしゃにして、喚きながら、汚いゴミ箱に捨てた。
でも
モニターで確認した、後ろに居る男の
ある機械猫に助けられる少年の漫画に出てくる
主人公の様な、その男の、満面の不自然なまでの笑みを見て
それが徐々に消えて姿も、フレームアウトして往くのを見て
やるせなさが、残った。
怒りは消えて。
いつの間にか。
この世界のやるせなさと、切なさだけが
残った。
人は哀れだ。かくも憐れだ。
見下して救う事で
自分が清くなったつもりになり
神の恩恵を受けて
「あの世」で
幸せになれると信じている
いとも簡単に、悪魔に騙されて人生を搾取されている事も
知らずに。
嘘の優しさに、愛に
いとも簡単に、騙され、絡め取られて。
「愛」とは何て
美しくも、かくも、残酷な物なのか。
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