マイクロチップを知らない、自分ちの犬も分からない?!

Cecile

第1話

さっき本当にあった事柄だ。夕方、自分の犬をいつもどおりに散歩していた。すると、 一人の若い青年が自転車に乗りながら少し後から付けてくる。最初は分からなかった。だが、その青年は付けてくる!       一体何なの?周りには他に誰もいない。すると青年がサーッと前に出てきた。少しためらっている様だ。だが、やっと口を開いた。                 「あの…。」              「はい?」              中々口をきかないからそう言った。    「あの、白い犬が逃げたんですけど、知りませんか?」              「エッ、逃げたの?」          「はい、さっき逃げてしまって!見つからないんですけど…。」            そう言いながら、ジッとうちの白い犬を不審そうに見ている。            「知らないけど。」            そう返事をすると、又ジッと不審そうに私の顔と、犬を交互に見る。         エッ?まさか、うちの犬を自分ちの犬だと思っているの?! 思わず呆れてこう言った。「あれ?、まさか、この犬がそうだと思っているの?!」              「はい。」               青年は不服そうにそう答えた。      何だか信じられない。だが、聞けばさっき散歩中に逃げてしまったらしい。それで思い当たった!               「ねー、もしかして田中さん?」     「はい、そうです。」           青年は不思議そうに返事をした。あぁ、やっぱり。                 「じゃあ、お祖父さんさんがいつも散歩しているでしょ?」             「あっ、はい。」            「やっぱり!前にもね、公園でお祖父さんが犬を追いかけ回しているのを見た事あるから。じゃ、又やったんだね?」      うちの近くには大きな公園がある。私も散歩時にはよく行くが、毎回同じコースではない為、行かない時もある。         そして、この逃げた犬がうちの犬と同犬種の日本犬なのだ。そして同じ性別だし、年もさほど違わない様だし、とにかくよく似ている。だからこの青年は、公園で逃げた犬の事で、祖父から携帯電話で知らせを受け、家の周りを自分も探し回っていたのだ。それで偶然私を見て、私が自分ちの犬を捕まえて、散歩していると思ったのだ!       「だけど、これうちの犬だからね。」   「名前、何て言うんですか?!」     私は教えた。だが、疑っている様だ。それで私はこう言った。            「証拠もあるから。」          「証拠?それ、何ですか?!」     「マイクロチップが入っているから。」   顔をジッと見て、返事をしない。     「マイクロチップが入っているから、それで分かるから。」             「マイクロチップって、それ何ですか?」 「エッ、知らないの?」         「はい。何なんですか、それ?」     驚いた。犬が自分ちにいて、まだ若いのに、マイクロチップも知らないとは。     「だから、番号が体に埋め込まれていてね。それで自分の犬だって分かるの。」    「番号?」               「そう。皆それぞれ違う番号だから。それを調べたら、分かるの。」          青年は少し馬鹿にした感じになった。   「そんな物、どうやって体の中に入れられるんですか?!無理に決まっているでしょ。そんな事ができる訳ないじゃないですか?」 「病院で、獣医が入れるの。入れる機械があるからね。それを使って、打って入れるの。」                 何だか驚いた。本当に嘘だと思っているのだ。                  「じゃあ見せて下さいよ!その番号を、今見せて下さいよ。出して見せ下さいよ!!」 凄く強気だ。              「そんなのできる訳ないでしょ。」    「何でですか?体に入っているなら、出して見せて下さいよ。今すぐに!できないんですか?!」                もう、無茶苦茶だ…。この子、まだ18かそこらみたいで、多分高校生かもしれないな。だけど本当にマイクロチップを知らないんだ?                 「それはスキャンして番号を見るの。だから獣医とか保健所でないと、それを見れないから。」                 「そんな物が入っているなら、何故自分で見れないんですか?可笑しいじゃないですか!」                 「スキャンする為の物が、その器具がないと見れないから。普通は空港なんかで、調べたりする時に見るの。うちもアメリカに連れて行った時にそうしたからね。そういう時の為にするから。」             本当に、子供に訓える様だ。       「とにかく、これうちの犬だから。」   大体、自分を見たって無反応だし、幾ら似ていても凝視すれば分かるだろうに。すると、いきなりこう言った。          「うちに犬がいるのを知ってるんですよね。なら、名前が分かりますか?何て言うのか。」                 いきなりそんな事を言われても、思い出せない。確か2文字だったのは覚えていたが。「シロ?」               「違います!」             今度は携帯を出した。そして写真を撮りだした。                  「一寸なにしてるの?勝手な事しないでよ!」                 だが知らんぷりして,そのまましばらく実行する。なので、頭に来た。        「見たって分かるんじゃない?全然あんたを見たって喜んでないし。名前呼んだって反応なんかしないよ、違うんだから。あんたんちの犬じゃないんだから!」        「でも、そっくりなんですよー!!」   「じゃ、警察に行く?調べてもらえば?」 「良いですよ!行きましょう。」      この近くには警察署がある。歩いて5,6分位だ。もうこうなったらこんな所でいつまでも馬鹿らしい事をしていたくない。警察ヘ行って、ハッキリと本当の事が分かれば良い。そうしたら納得するだろう。       私はほぼ毎日、散歩時にこの警察署の前を通るし、つい先日も携帯を無くしたので、この犬を連れて聞きに行った。誰か届け出ていないかと。去年、コンビニで落としてしまい、店員が警察へ届け出てくれた事があったから。だから、又運が良ければと期待したが、結局家の中にあった。だが、犬を連れて行ったし、何人もの警察官がこの犬を見ているし、種類を聞かれたりして答えている。だから誰かしらが覚えているかもだし、違くてもそんなのは獣医にでも電話で確認してくれたら、この青年もやっと分かるだろう。それで注意でもしてくれたら有り難い。     それで警察署ヘ行こうとしたが、やはり少し不安に思ったのだろう。         「あの、一寸待って。一寸待って下さい。」そう言うと電話をかけて話始めた。    「あっ、俺。犬がいたんだけど。そっくりなのが。本当によく似てるんだよ!」    祖父にかけたらしい。          「うん、ユキにそっくりで。」      「あっ、そうだ!ユキ!」        私が名前を聞いて思い出した。青年はこちらを見た。                「エッ、いたっ?!見たの?!そこにいる?走ってるの?」             こちらを見た。             「いるそうです。」            こちらをバツが悪そうに見てそう言う。そして少し又話すと、切った。        「いたの?」              「はい。」               「何よ!一寸あんた、誤りなさいよ。散々疑ったんだから。」             本当にいい加減にしてほしい。      「ごめんなさい。」            何か、笑いながら謝ったので、また言ってやった。                 「ちゃんとにすみませんって言いなさいよ。」                 言わない。黙って立っている。ちゃんとに謝るのは恥ずかしいからなのか、嫌な様だ。そんなの、当たり前なんだけど。勝手に間違えて言い掛かりをつけて。でも、きっとそんな事は分からないのだろう。もういいや!  「ねー、結局何処にいたの?」      「あの公園の中を走り回っていたそうです。」                 「ほらね。だから言ったでしょう。気を付けないと。私も何度かやられてるからね。こういう犬は元が自然の犬だから、どうしてもそういう事しちゃうから。でもいて良かったね。」                  そう言って行こうとすると、青年もニッコリ笑って「すみませんでした。」と言った。そして去って行った…。          だけど、マイクロチップ位知っていて、埋め込んだ方が良い。あのお祖父さんも、まさか知らないのかな?           End.       

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