月猫





暖かな夜に溶けるように


揺らる黒猫


月の色をした瞳は何を映し


その身体の中心に何を宿すのだろう


何気なく手を伸ばし


さり気なく触れてみようとしたら


あなたはさらりと身を揺らしそれを躱す


行き場を失った私の手と心は


暖かな夜の空気を浮遊して



黒猫は暖かな夜を浮遊して


何処へでも行ってしまう


夜の向こうへすら行ってしまう



私は動かぬ夜の木のようで


折落ちれた木枝のようで


数日前に降った雨の水溜まりのようで


そこに映る揺れる月の映し水絵のようで




でも本当はただの人間で




黒猫の姿を見失わないように


月明かり頼りに浮遊する


夜の中を浮遊する




いつかは



いつかはあなたの心に触れることができるかな




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