透明少女の声





「面倒くさい」



朝が来てしまった時

そばで誰かが溜息を吐いた時

自分を鏡で見た時

仮面を纏って自分を沈め笑っている時

人を見る時

人と会話をする時

さほど親しくない人と会う時

守りたいと思う人のそばで生きる時

その人から頼られる時

愛されていると感じる時

それに似合う自分を演じる時

それが紛れもなく自分の一部であると感じる時


私は私が面倒くさくなって

仕方がないんだよ


これまでに守り続けてきたものを

みんな燃やしてしまえたら

これまでに守り続けてきた自分というものを

跡形もなく燃やしてしまえたら

私はやっと

空へ行ける

そうやって誰も知らない私で私を生きてみたい






私は生きていたい

これまで積み重ねてきた自分を手放して

これは死にたいと言うのと同じなのだろうか

それでも私は生きていたいんだ



背負ったもの捨てて

その罪悪感すらも捨てて

逃避行だろうがなんだろうが

全部放り投げ捨てて

夜空を泳いで

その向こうへ

夜空の向こうへ

行ってしまいたい




ただ、逃げたいだけか。




ただ、それだけ。





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