享年-----「そもそも耳って生きてるって言えるんですか?」
『最近思うんですよ』
「何ですか?」
『貴方まともに転生人生を送ろうとしてませんよね』
「今更気づ......そんな訳ないじゃないですか」
「そうですよね、ふざけてるわけありませんよね」
「そうですよ女神様。だから俺の頭をガッチリ掴むのをやめて貰ってもいいですかね」
「気にしなくていいですよ、残機の一個ぐらいすぐに補充できますので」
「いやそう言う事では無いと思いだだだだだだだだだ!ギブ!ギブ!死ぬ!死にます女神様!」
「既に何回か死んでいるんですし気にする事はないでしょう。ちょうど良いですしこのまま転生も済ませてしまいましょう」
「ちょっ!マジですか!?」
「転生先で少しは反省してきなさい。では」
【頭がぱちゅんってなって転生する音】
◇◆◇
『アレクサってどこから首でどこから胴体なんでしょうか.....』
【回答:
『もしかして私、バカにされてますか』
【回答:
『してますよね!?』
【
『んぅ〜.....』
【
「女神様、戻りましたよ。っと、随分アレクサと仲が良さそうな事で」
『良さそうに見えますか』
「それはもう。それで、今回の転生も報告しておきましょうか」
『何回も帰ってくる貴方に違和感を持つべきだと思わなくはないですが、取り敢えずどうぞ』
「今回はですね、耳に転生しました」
「耳ですか......耳?」
「そうです。耳です。しかも芳一の耳ですよ」
『芳一、ってあれですか。身体中にお経を書いた変質者の方ですか』
「概ねその人であってますね。それで今回の人生.....いや耳生。今迄の転生とは違うところがあるんですが、分かりますか?」
『そもそも耳は生きていないという点でしょうか』
「確かにそうなんですが、それを言うなら
『悪の科学者の基地を管理するAI』も生きてませんよ」
『いや、耳はなんかこう......輪を掛けて生きていない感じがしますよね』
「分からんでもないですが。正解は『人と会話が出来ないこと』です」
『ふむ。まぁ耳ですし。安易に喋れる様な設定にしてしまうと芳一さんも煩いでしょうしね』
「そう言う事です。とまぁそんな訳で、動けず喋れずで、一日中同じような唄を聞かされて退屈な耳生を送っていた訳なんですが。不意に芳一に変化が訪れました」
『おっと?雲行きが怪しくなって来ましたね』
「会話が不可能だと思い込んでいたんですが、長年の耳生活のせいか、こちらの声が微妙に聴こえるようになってたみたいなんですよね」
「それで?」
「芳一がロックやj popを歌う様になってしまいまして」
『芳一がですか』
「芳一がです。琵琶での演奏付きで。物凄いシャウトでしたよ」
「私も聞いた事ありますが、芳一は琵琶の名手でしたから、それは凄かったでしょうね。幽霊が芳一のシャウトを聞いてどう思うのかは知りませんが」
「それなら心配は要りませんよ。寝ている間に吹き込んでいたおかげか、芳一は除霊に目覚めまして。一部界隈では
『駆け出しのビジュアル系バンドみたいですね』
「歌っていたのはアニソンばかりでしたけどね」
『何故.......』
「その時はちょうどアニソンばかり歌っていたので、芳一にもインスピレーションしてしまったのでしょう」
『それで退治される方も何かおかしいと思わなかったんでしょうか?』
「実際効果があったんですから仕方がないじゃないですか。本来なら耳を取られる筈だった原作イベントも初手除霊ですぐに終わっちゃいましたし」
『じゃあそのまま芳一と共に耳生も終了ですか。案外平凡でしたね、今回は』
「まぁそうですね。あった事と言えば妖総統タナカー・ザ・デーモンが出て来たぐらいで、物語の裏側を見ちゃったみたいで何故かがっかりしましたよ」
『タナカー・ザ・デーモンって何ですか?』
「それでは今日はこのぐらいにしましょうか」
『ねぇ、ちょっと。何なのですかそのタナカー・ザなんとかって!?』
「それではまた来世!」
「ねぇ!ちょっt........
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