第50話サンクチュバリヌスのカタクラフト(笑)
「アメジットー……」
「駄目です、そのお顔をは皆さんわかっているんでしょう?国境が開くまでじっとしていてください」
「でも狐になったし?」
「それくらいでお国再興派が諦めるとは思えません。しょうがないんですよ、ご自分のお国だったところなんですし。」
アメジットの言うことはわかる。この身長でこの顔はあまり変わっていない。お狐になったといっても多分ごまかせないと思う。
でもなー宿にも泊まれず幌馬車の中で、クリーンとリフレッシュだけで汗水を飛ばして、アメジットが買ってくる簡素な食材で食事を得るだけじゃさすがに厳しいってもんですよ。
そろりそr「れーいーさーまー」
「ワタシハナニモシテマセン」
「頼みますよ、本当。」
しょうがないのでアメジットにおぶさって体力づくりに励ませました。キリキリ動けーい。
そんな生活をしていたら、冒険者ギルドからアメジットが情報を持ってきまして、中身は、小競り合いが勃発しているって。
もうそろそろ本格的な戦争に発展しそうですね。
このサンクチュバリヌスは腐っても貴族がいる国なので、重騎兵と傭兵そして魔法部隊を多く引っ張ってこれます。美味しい餌があれば。
サガットは貴族は名誉職なタイプの共和制なのでどうなんだろうね、ちょっとよくわかりません。
お世話になったことがあるので騎士団魔法旅団は存在してるのは知ってるけど、常備軍に魔法部隊があったっけかな?
あれば勝てる、ないと兵士の質で負けそうだな。魔法部隊の数が割と戦場での
最新武器がどうなっているかわかりませんが。いい武器だと質をひっくり返すかもしれない。腐っても錬金の国。魔導銃とかありましたからね。
サカキは現在国境を封鎖しているということでサンクチュバリヌスへ味方していますけれども、何かのきっかけがあれば掌返して独立に向けた動きを取るでしょう。
一応腐っても私はサカキの国の人なので、サカキの切り札だった部隊に連絡を取ることにしました。動くかどうかはわからんよ?
「まさかココア様が生きてらっしゃるとは!」
「んーでも死んじゃって今はレイって名前だけが本名なんだよね、キツネ属になっちゃったし」
「それでも我らの忠誠は変わりませぬ」
「ありがとう。んでも、お国再興とかは考えてないんだよ、これも時代の趨勢だから」
「しかしあのクーデターで国が滅びるなど!!」
「防諜出来なかったさせなかったお家騒動が悪い!!」
「……わかりました。お強くなりましたな、ここ……レイ様」
「旅したからねー今は参謀にアメジットがついてるし。そいじゃあサカキが『決める』タイミングで
「はっ!!」
よし。あちらが重騎兵、カタクラフトで来るならこちらはこれだよ。
「結局顔を突っ込みましたね、レイ様」
「そうなっちゃったねえ。」
「私は最後までお仕えするだけですから、ついて行くだけです。」
「そうだねえ。」
数日後、両軍は相対することになりました。私たちは隠れやすくて見晴らしの良い森林地帯の丘および兵士を隠せる沼で待機。観察しましょう。
うーんあれはサカキの国の鎧ですねえ。最前線に立たされてる。独立派の工作は間に合わなかったみたいだね。
後ろに督戦隊がいて隙あらば士気の低い兵士を殺しにかかりますね。
その後ろに弓と魔法部隊かな。両翼に
これがサンクチュバリヌスの布陣。
対するサガットは、規律が揃った軍団兵に両翼に騎士団、魔導銃を織り込んでる弓部隊に……弓騎兵、じゃなくて魔導銃騎兵が見えますね。
改良が出来たみたいです。魔法部隊は少なめか。その分大筒?を何本も運んでいます、あれが切り札かな。おそらくデカい魔導銃でしょう。
私はちょっと動けないですね。今回はサガットに勝って欲しいのと、サカキを自らの手であやめたくないので、狙うはカタクラフト騎兵つまり貴族なんですが、ちょっとまだ離れてません。遊兵になったところをぶっ叩きたいのですが。一応サガットに内通はしましたがどうなるか。 あれ、なんかもう独立させる気分でいますね?
さて本格的な戦争が始まりました。両軍遠距離戦を行っています。といっても両軍は常に動いていますね、止まると戦略魔法の餌食になってしまうので。
優勢は魔法部隊が多いサンクチュバリヌスかなって思ったのですが、サガットは魔法バリアの魔導具を用意していたらしく、魔法は大きいのは通さずに、細かいのだけが通過していきます。
デカイ被害を抑えるつもりだったんでしょうか。なにげに弓の誘導も、これのおかげで途中で切れちゃうのでそこまで被害が出ていないようです。
サガット質が良い。耐えに耐えてます。必殺技があるんでしょうか。
大体お互いの距離が目測で200mくらいになった辺りからDONDON!!という音が聞こえ始めました。魔導銃ですね。
びっくりしたことに軍団兵の4割くらいはこれを持ち運んでいて、どんどん撃ってます、サカキの兵士に、ですけど。厳しいけどこれが戦争。
強固な防御陣に業を煮やしたサンクチュバリヌスカタクラフトが突撃を開始しました!それと同時にサガットの大筒から魔法弾が!あーカタクラフトじゃなくて後ろの遠距離射撃組を狙ったんですね。後ろは防御魔法を貫通されて大筒魔法が飛び込み、結構な被害が出てます。
これじゃ回復やパワーアップ魔法は期待できないか。お貴族様の回復のために存在していましたもんね。逃げ道が消えたか。
しかし腐ってもこの近辺で最強の名を持つ最重装騎兵カタクラフト、大筒が後方を狙って自らは無傷で突進できたのもあってか、複数回突進を繰り返してはサガット兵士を投げ飛ばし踏み潰し蹂躙しております、このままじゃ崩れるかもしれない
ここだ
「アメジット、拡声、最大音量。兵士は狙いを全てカタクラフトに向けよ」
「はい、空気よ音を拡散し……
「私はー!サカキ王国の最後の生き残り!ココアだ!一度死んじゃって名前はレイに変わったが、ココアだ!この戦争の意義は把握している!よって!我が軍はサンクチュバリヌスへ攻撃を開始する!いけー!!」
「速さよ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ぎゃあああああああああああ!!」
沼に、森林に、潜んでいた兵士が騎兵の動きよりも速く敵陣に向かっていく。
そう、彼らはリザードマン。トカゲの筋肉的瞬発力、トカゲの素早さを持つ亜人。短距離なら馬なんて目じゃねえ。体長は軒並み2mを超え、大きい個体では3m近くまで成長する、「騎兵殺しの歩兵」
その手にもつは刺突付きの2mのバルディッシュ。まずそれでチャージを行う。深々とカタクラフトに刺さっていくのが分かる。その後は彼らにとっては真っ二つに出来ればそれで良い。巨大な刃の部分でぶん殴って防具ごと引き裂いて。貴族?そんなの知るか。
さすがにカタクラフト相手に全てを断ち切るのは難儀したが、馬を切り飛ばせばいいことに気がついてからは、一方的だった。
カタクラフトに乗る重騎兵は落ちたら重さで立てない。刺突部分で一体ずつ息の根を止めれば良い。
乱戦ではあったけど、サガットが耐えてたことによって、真横からカタクラフト右翼に突撃が掛けられた。これによって、カタクラフト右翼は完全に壊滅、そのおかげで騎士団騎兵と魔術旅団が左翼にいるカタクラフト相手にがっぷり四つをくめて、そのまま敗走させた。
追撃?当たり前のようにトカゲが行ったよ。
戦場に出ていた貴族はほとんど死んだんじゃないかな。
カタクラフトが壊滅したら一般兵士は遁走するしかない。よくよく見ればサガットの圧勝だった。
後から聞いたけど、魔導銃がカタクラフトの装甲を貫通していたみたい。凄い威力だ。リザードマンがいなくても余裕だったか?
「よし、もう一度めが……ちょっと考える」
「ここでやり過ぎると旅が出来なくなりますからね」
ふーん、これまではお気楽旅だったけど、ロードムービー的には出会ったところの難題を解決してから去る、これがロードムービー的なんだよね。
でもここでそれをやったら戻れないよね。
「よし、決めた。メガホンを」
「はい、音よ拡声し……メガホン!」
「しょくーん!サガットとリザードマンの前にカタクラフトは崩れ去った!サンクチュバリヌスなぞ恐れるに足りん!しかし私には進まねばならない道がある!常に王座に座っていることは出来ない!みんなには!みんなには!心配かけるかもしれないけれどサガットを習って、ブキョーから学者を招いて!発展させていって欲しい!!もう一度、もう一度、この国を良くしてほしい!!」
シーーーーン
嗚咽するような声も聞かれる中、だんだんと、ここあ・ここあ・ここあ・という合唱が。おいおい?
「こ!こ!!あ!こ!こ!あ!」
「ココア様がいつでもお帰り遊ばせられるよう国を発展させて参ります!!」
「ココア様は国の象徴やー!」
「リザードマン部隊、ここ……レイ様に忠誠を誓います。土木工事ならお任せあれ!」
み、みんな……ありがとう、ありがとう。
「私はこの国がなんだかんだいって大好きだー!」
一度殺されてるんだけどね。
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