東国戦乱記〜蛮東武者よ、乱世に乗じて成り上がれ!〜
バリオス
序章~赤眼の武者~
第一話 「東国の日常風景」
むかーし昔。どれくらい昔かというと、まだこの極東の島国に住む
当時、海を挟んで東のだだっ広い大陸に、これまたドデカいお国を築き上げ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった大王朝・
そんな大国が突如、極東の島国
この皇国の歴史の中で後に『戦国』と呼ばれる時代の少し前くらい。
政争や謀略に精を出し、毎日
各地で好き勝手に殺し合いをする武士達の
乱れた政情&紛争&飢饉により地方から流れついた
これらの朝廷幕府様が
この物語の主人公の生まれし国に御座る。
* * *
【――
時は皇歴1453年。
「いやー!」
「た、助けてくれーー!」
澄んだ青空を
「ハハハッ! 逃げよ逃げよ!」
大いに
――
ギョロリとした虎のような大きい目玉に、見事な
「畜生!
「はん! 虫けらがこの
一人の勇気ある
「うりゃ!」
「ぐが…!」
馬上から
地面にぐしゃりと倒れた新しい
「者共ぉー! 火をかけよ、存分に致せ!!」
応!――と彼の郎党衆が嬉々として命に答えると、
そしてその蛮族の如き集団の中に逃げ惑う民を一人、また一人と鋭い
「ハハハッ! よう逃げよ! 良い的じゃ!」
古の書物に記されるような悪漢の如き笑みを浮かべ、殺戮を自由に楽しむ若い武者である。
その時、一人の郎党が殺戮を楽しむ若武者に伝えた。
「若様! 前方に
当時の郷村はそれぞれ統合組織を成し、
そんな村の若衆が簡易で軽装な腹巻で身を固め腰刀を差し、同じく和弓を片手に村を縦横無尽に駆け巡り、既に二桁の殺戮を行った騎馬武者に応戦を始める。
「乱取りせし
若衆を統率するのは村の壮年衆である。一人の頬の痩せこけた壮年の男が、矢を飛ばすよう命じると、若人の集団が矢を射掛け始める。
しかし必死の防戦を行う村兵の矢を、馬上の若武者は軽やかに
それを見ていた
「
「ハッ!」
短く返答するや否や騎馬武者の新九郎は、弓にすかさず矢を
その様子を見ていた壮年の男が若衆に告げた。
「来るぞ! 討ち取ってまえ!」
構える村兵に騎馬武者の新九郎が叫ぶ。
「
後世、
『
その中には大和武士のことに付いて、以下のように記されている。
――大和武士は皆、勇猛にして戦と血を好み、和弓という凡そ七尺三寸(約221cm)の大弓を扱う。これは北方諸国の弓や、我々エルフ族の使うロングボウよりも遥かに大きい。
――驚くことに、
――またこの国の
――この国に住まいし者は皆、古来より戦を常とし、戦と共に生きる戦闘民族
その勇猛にして数の不利をモノとも思わない剛毅な若武者に、壮年の村人はたじろいだ。
「ええい、たった一騎に何を手間取っとるか!?」
思わず村兵の
新九郎は研ぎ澄まされ鍛えられた感覚で、村兵の中で叫んだ壮年の男が集団の頭と判断すると、飛来する矢の雨を最小限の動きだけで回避し、冷静に一矢放つ。新九郎の
「お、親方ぁ!」
「ひいぃー! に、逃げろー!」
若衆はとことん肝を冷やすと、恐れ
「
感嘆した郎党が一人、後方で叫んだ。
新九郎、と呼ばれた
「
制止する声へ振り返ると、そこには手に薙刀を腰に革包みの太刀を帯び、頭を
「ここは我ら
それに応じたのが熊髭の総大将・龍義だ。彼は馬を前に進めると大声を上げる。
「無論!
「己は足城の
「ハッ! 我らが
「その言葉、万死に値する! 神に成り代わりて神罰を下してくれるわ!」
「出来るものならやってみせい!」
まさに両者が斬り合おうとした瞬間、足城の大将の後方から声が上がった。
「父上ー!
既に若衆を蹴散らした若武者・新九郎が馬を走らせ全速力で駆け付けた。
「よかろう。あの
「
言われるとすぐさま馬を駆け、僧兵に新九郎が突撃を始める。
対する僧兵も薙刀を構えた。
「バラガキ! 名を申せ!」
「我こそは
「
新九郎は始めに一矢放ち牽制するが、僧兵がそれを軽く薙刀で払うのを見るや、腰に差す
対する僧兵も同じく低い声で
双方の応酬を見て、
「やるなバラガキ!
叫ぶと僧兵は片手で
しかし、新九郎は眉間から血を流しながらも、決して目を
「ぐ…ガッ…!! 見事也、蛮東武者! 先にあの世で待っておるぞ!」
「ほざけ。
最後にそう言うと新九郎は僧兵の首を宙に飛ばした。吹き上げる鮮血を浴びると、彼は動揺の色を見せ、
「新九郎に続け! 突撃せよ!!」
彼の活躍に呼応するように熊髭の大将・
「くっ…! 神は味方せず。皆、退けー! 足城の
僧兵たちは不利を悟るやすぐさま蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「フハハハッ! 生臭坊主共が、この次も弓矢を持って相手してくれるわ!
勝利と略奪に歓呼するこの野蛮な集団を率いるのは、この
足城家はその名の通り、この賀嶋国の足城郡にて興りし御家だ。本家は
ちなみにこのような蛮行を好む
そしてその飯綱足城家棟梁の九男が、僧兵を討ち取りし武勇優れ、強弓を難なく扱う若武者・
後世、多くのメディアや作品で美男子だの、民衆を救う
これはそんな蛮族集団の中でも特に粗暴だったと
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