さんざんな、まじょ一日目(後編)

おばあちゃんの、ブレスレット

 その後、女の子から聞いた話をまとめると……。


 この女の子は、小学二年生。あたしの二年下の学年。


 今日はおばあちゃんが遊びにくるということで、とても楽しみにしてた。


 おばあちゃんは、年に二、三回くらいしか遊びに来ない。


 今日は前におばあちゃんが遊びに来た時にくれた、ブレスレットをつけていた。


 いつもは大事に、勉強机の引き出しにしまってるらしいんだけど。


 今日は、おばあちゃんに会えるから。


 だから帰った時に、いつもつけてるよって言いたくて学校につけていった。


 学校が終わって、急いで走って帰っていたら、転んでしまった。


 転んだ時に、女の子より少し大きめのブレスレットは、飛んで行ってしまった。


 あたりを探したけど、背の高い草がたくさん生えていて、うまく探せない。


 このまま帰ったら、きっとおばあちゃんが悲しむ。


 それに、とっても気に入っているブレスレットだから、なんとしても見つけたい。


 でも、いくら探しても見つからない。それで、泣いていた。


 ……というわけみたい。


「あのブレスレット、おばあちゃんがとても大切にしていたものなの」


 女の子は、また泣きそうな顔をしながら言った。


「すごーくきれいだったから、あたしがわがまま言って、譲ってもらったの」


「大事にしてたんだね」


「うん。あたしには、少し大きくて、ぶかぶかだったんだけどね」


 女の子は、家からつけてくるんじゃなかった、とうつむいてしまう。


「同じブレスレットをもう一度、買ってくるってことはできないの?」


 あたしが聞くと、女の子は首を大きく横に振る。


「できない。あのブレスレットはおじいちゃんが一粒ずつ選んで作ったものなの」


 アクセサリー屋さんでよく売ってる、手作りブレスレットってやつね。


「一粒ずつ、違う石をつなげて作ったものだったから、同じものは作れないと思う」


 それに、と女の子は言葉を続ける。


「あれは、おじいちゃんの形見なんだ。だからたとえ、同じものができたとしても」


「別物になっちゃう……よね」


 あたしの言葉に、女の子はぶんぶん首を縦に振る。


 おじいちゃんと同じ時を過ごしたブレスレット。


 その後、おばあちゃんが大事に使っていたブレスレット。


 そしておばあちゃんから、女の子の手に渡ったブレスレット。


 そのブレスレットは、この世界に、ただ一つしか存在しないんだ。


 ただおばあちゃんたちにばれないように、同じものを作ればいいって話じゃない。


 あたしは、勢いよく立ち上がって、女の子に向かって言う。


「探そう! あたしも手伝うよ!」


 女の子の目が輝いた。


 あたしの方が年齢も、身長も上だ。


 それに、一人では無理でも、二人なら探せるかもしれない。


 いざとなったら、まほうだって……使えるかもしれないし。


 お母さんの雷が落ちるのは怖いけど、この子の笑顔が見たい!


 雷が落ちる前に、見つけられればいいんだから!


 宿題だって、帰ってから頑張れば、きっとなんとかなる!


 よーし、ぜったい見つけるぞ!

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