さんざんな、まじょ一日目(前編)

ハチャメチャの朝

 気づいたら、あたしはベッドの上にいた。


 部屋の窓からは、あったかい光がちらり。


 目覚まし時計を見る。


 7時半。


 ゆっくり、ゆっくり、深呼吸。


 状況確認。


 いつもの、かわいいアニマル柄のパジャマ姿のあたし。


 いやいや、おかしいでしょ!


 どうして、急に朝になってるのよ!


 夕飯は!? いつも楽しみにしてるドラマは!?


 いや……、それよりも……。


 あたしの首に、いやな液体が、ひとしずく。


 これが、冷や汗ってやつなのかな。


 あわてて連絡帳を確認する。


 宿題……、何一つ、終わってないんだけど……。


 あたしは、ゆっくり昨日のことを思い出そうとする。


 まじょのおばさんの家から帰ってきたあたし。


 荷物の自分の部屋に置いて、夕飯を食べて、テレビを見て。


 あ、なんだ、夕飯食べてドラマ見たのなら、安心だね。


 ちがうちがう、そうじゃない。


 それからお風呂に入って。そのあと、そのあと……。


 そうだ! キサラおばさんにもらった本を読んで。


 その後に宿題しようと思って……そのまま……。


 あたしの隣には、寝る前まで読んでいた本がころがってる。


 うわあ、どうしようっ、先に宿題するべきだった!


 でも、今更そんなこと言ったっておそすぎる。


 あたしは、本にはさんだ杖をひっぱりだす。


 そして、がむしゃらに杖を振ってみる。


「お願い、お願い! 宿題をなんとか終わらせてっ」


 すると、杖から舌みたいなのが、ちろちろ出てきて。


 なんだか、あたしに向かって、あっかんべーしてるみたい!?


 なんなのよ、もうっ!


 ん? そう言えば、キサラおばさんがこう言ってたような……。


『自分の願いが叶うなんて思わないことだね』


 自分のお願いは叶わないってこと?


 でも、杖はあたしが使うんだよね?


 それじゃあ、あたしの願い以外の何に使うっていうの?


 うわああん、分からないよぉ!?

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