まじょの、心得

 あたしは、女の人に杖を見せた。


 女の人は、杖を受け取り少し見つめた後、あたしに杖を返す。


 杖は、あたしの周りをくるくる回ってる。


 杖には顔とかついてないけど、なんだかとってもうれしそう。


「きっと外に出られて、自分に合った持ち主が見つかって、うれしいんだろうねぇ」


 あたしの頭の上をくるくる回っている杖を見て、女の人は言った。


「おっと、名前を言ってなかったねぇ。アタシは、キサラと言う」


 キサラお姉さんとでもお呼び。そう、女の人は言った。


 うーん、キサラおばさんって呼びたいんだけど、おこるかな。


 そんなことを考えながらあたしも名前を言った。


「あたしは、鳴川立夏なるかわりつかです。よろしくお願いしますっ」


立夏りつかと言うのかい。変わった名前だねぇ」


 いや、今時変わった名前も何もないか。


 そうつぶやくように言って、キサラおばさんはあたしを手招きする。


 「ついておいで立夏。まじょの心得を教えてあげよう」


 キサラおばさんは言って、また店のカウンターの方へもどって行く。


 心得って、何だろう。


 まじょって、たくさんのことを覚えなきゃいけないのかな。


 あたしに覚えられるかな、ちょっと心配になってきたかも。




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