まじょの心得の本

 キサラおばさんは、あたしと一緒に店のカウンターの前の椅子に座った。


 キサラおばさんの手には、古い本がある。


 その古い本を、おばさんが手でなでる。


 すると、すごい量の埃が、空へまいあがった。


 うわあ、ひどい。これは長い間使ってなくて、そのままおいてたのかも。


 その埃でむせながら、おばさんは言う。


「この本には、まじょになるために必要なことが書いてある」


 一番大事なのは、守らなければならないルールを知っておくことさ。


 キサラおばさんは、遠くを見つめて言う。


「ルール? まじょにも、やっちゃいけないこととかあるの?」


 あたしの言葉に、本をパラパラめくっていたキサラおばさんが怖い顔をして言う。


「もちろんさ。まじょだからって、なんでもやっていいわけじゃない」


 そう言って、キサラおばさんは大切なことを教えてくれた。


 例えばまほうで人の物を盗んだり、人にけがをさせたりしちゃだめ。


 アンタの世界でやっちゃいけないことは、まじょになってもやっちゃだめなのさ。


 あとは……、自分がまじょだってことを人に言っちゃいけない。

 

 知られてもいけない。これが一番重要なのだと。


「まあ、とりあえずこの本は一度ちゃんと目を通しておきな」


 そう言ってキサラおばさんが、本をあたしにくれた。


 うわあ、あたし、本、嫌いなんだよね。


 ぱらぱらとページをめくってみたら、難しそうな言葉がいーっぱい並んでる。


 あたし、これ全部読まなきゃいけないの!? こりゃあ大変!


 それに何より、あたし、口が軽いって有名なの。


 みんなにあたしがまじょだってばれたらどうなるんだろう。


 それに、あたしから自分がまじょだって、言っちゃわないかな。


 心配ごとがたーっくさん。どうしよう!

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