聖女様の肩書き
朋≠明
聖女様として召喚されたようです
それは何の前触れもなく、ある日突然起こった。
「聖女様だー!」
「とうとう聖女様が召喚されたぞーっ!!」
朦朧とする意識の中、何やら騒がしい声が聞こえてくる。
「召喚の儀式は成功だぁー!」
「ついにやったぞーっ!」
「これで我が国も安泰だー!!」
あまりの騒々しさに目を開けると、高い天井。視線だけを動かして辺りを軽く見渡すと、見たこともない大広間のような場所で、見たこともない衣装を着た人達が何やら大騒ぎをしている。
……ここはどこだ?
自分が何故こんなところにいるのか一生懸命考えてみるものの、なんだか頭がボーッとしてて思い出せない。
とりあえず仰向けに寝転がっていた上半身をゆっくり起こして辺りを見渡してみると、寝転がっていた床にはまるで魔方陣のような模様がうっすらと青白く光って消えかかっていた。
「聖女様が目を覚ましたぞっ!」
誰かがそう叫んだと同時に、広間にいた人々の視線が一斉にこっちに向けられ、思わずビクッと身を強張らせる。
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。貴方様は、我が国の聖女様として召喚されたのです」
声がした方に視線を向けると、ストロベリーブロンドの髪に青緑色の瞳、長身で見るからに細マッチョっぽい体格の超絶美形のイケメンが近づいてきた。鎧を身につけているわけではないが、腰に剣のようなものを下げているし、格好からすると騎士っぽい。
「聖女…様?」
先程から繰り返し聞こえてくる聖女様という言葉を思わず口にしてしまったが、聖女様って…あの聖女様だよな? 神の恩寵を受けて奇跡を成し遂げたりする慈愛に満ちた女性を指す言葉だよね、確か…。
ボーッとする頭で、聖女様という言葉に考えを巡らせていると、いつの間にか目の前に立っていた超絶美形のイケメンが優雅に手を差し伸べてきたので、つい条件反射でその手を掴み立ち上がる。
「お名前は?」
「
立ち上がったと同時に名前を聞かれて、これまた咄嗟に条件反射で名乗ってしまった。
女の子なら完全ノックアウトさせられそうな満面の笑みを浮かべた騎士風の超絶美形イケメンはその場に跪き、あろうことか握っていたままの僕の手の甲に軽くキスをした。
「召喚に応じて下さった可憐な聖女様、どうか我が国をお救い下さい」
…今、何って言った?可憐な聖女様?っていうか、さっき僕の手の甲にキスしたよね!?
「聖女様、どうか我が国に救いの祈りを!」
「我が国を聖女様のお力でお助けください!」
「どうか神の御加護をお授け願います!」
そんなことを口々に言いながら、周りにいた人々が次々にこっちを向いて跪く。
「あの…えぇっと、聖女様って…?」
困惑して目の前に跪いていた騎士風の超絶美形イケメンに尋ねてみると、ニッコリ微笑まれてしまい、あまりの羨ましすぎるイケメン具合に思わずドキリとする。
「貴方様のことですよ、聖女イツキ様」
聖女様って僕のこと!?そういえば、さっき「貴方様は、我が国の聖女様として召喚された…」とかなんとか言ってた!!
…って、ちょっと待って!聖女って言葉に女って文字が入ってるくらいだから、聖女様って女の子じゃないっけ!?僕、男の子なんだけどぉぉぉおお!?
「はぁぁぁあああっ!?!?」
広間に僕の間抜けな絶叫が響き渡った。
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