第8話 相談
「うちの子天才症候群」にはかかりたくないと思っていたが、さすがに欲しいものを自分で買える一歳児というのは異常ではないかと思い始めた。
相談できる知り合いがいるわけでもないので、とりあえず小児科へ行ってみる。
平日なのでそれほど混んではいない。
しかし、他の患者は全員子連れの母親なので、少し居心地が悪い。
大きな頭が目立たないように真夏なのにフードつきの服を目深にかぶらせている。
不自然なので目立つかと思ったが、風邪を引いていると思われたのかそれほど注目はされなかった。
順番が来て先生の部屋に呼ばれる。
「子供の成長が異常に早い気がするのですが...」
「心配しなくても大丈夫ですよ、小さいうちは成長のばらつきが大きいですからね」
「いや、でも、例えばこのiPadを使えるとか...」
「お父さん、大丈夫ですから。子供は感受性豊かですから、何にでも興味をしめすものなんですよ」
露骨に「うちの子天才症候群」にかかっているという色眼鏡でみられている。
「男手一つで仕事をしながら子育ては大変ですね」だとか、完全に残念な父親を哀れむ目線だ。
「賢そうに見えますものね」という言葉で、ハッキリと口にこそ出さないから被害妄想かもしれないが頭の大きな奇形児だから、せめて天才だと思いたいんだろうと考えていることが伝わる。
その段階で腹が立ったので、病院を後にした。
もう相談などしない。
誰がなんと言おうと、うちの子は天才なのだから。
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