第68話 だるま

金田一

「さてと、次は誰かな?」


司会

「次はなんとだるまですね。それではだるまさんどうぞ」


真っ赤な顔をしただるまが入ってきた。


だるま

「初めまして。今日はよろしくお願いします」


司会

「こちらこそ、よろしくお願いします。早速ですがだるまさん今日は何を提訴しに来ましたか?」


だるま

「実は2つなんだがいいかな?似たような意味だ」


司会

「似たような意味ですか?金田一先生どうでしょう?」


金田一

「まずは話を聞いてみましょう」


司会

「と言う事ですが、何を提訴されますか?」


だるま

「ズバリ『火だるま』と『血だるま』この2つだ。両方あまりにいい意味で使われていないようだ」


司会

「あ、『血だるま』は血を流したり、返り血を浴びて凄惨な例えですね。プロレスなんかで『額を割られた選手が血だるまになっています!』なんて使われますね」


だるま

「そうなんだ。なんかスプラッターの代名詞みたいでいい気がしない」


司会

「なるほど。もう一つの『火だるま』も似たようなものですね。「不況で○○会社は倒産寸前でまさに火だるま状態だ』なんかで使われますね」


だるま

「そうだ。これもかなり悲惨な状態で使われている」


司会

「なるほど。言われてみればそうですね。縁起のいいだるまさんがなんで悲惨な事態の代名詞なんでしょうかね」


だるま

「わからん。とにかく不愉快だからなんとかしてほしい」


司会

「わかりました。金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「まずは2つとも似たような悲惨な意味ですからこの提訴は有効とします」


だるま

「ありがとうございます」


金田一

「血だるまの語源は、細川家秘蔵の達磨の掛け軸を細川家が出火した際に忠臣大川友右衛門が腹を切って腹中に入れて守ったといういわれがあります」


だるま

「すでに凄惨ですね。たいしたことない掛け軸をそこまでして守らなくても、っていうか掛け軸を持って外に逃げたほうが良かったのでは?」


金田一

「武士の責任感ですね。次に『火だるま』ですが、これは赤いだるまが真っ赤な火中で燃えるときの様子を表した言葉ですね」


司会

「なるほど。そこからこれ以上ひどいことは無い、これ以上赤くなることはないというような意味で使われ始めたのですね」


だから

「要するに私のこの赤色が悪い訳だな」


金田一

「そうなりますね」


だるま

「では辞退したいな。100年間は我慢したんだから」


金田一

「わかりました。今ここに3人います。せーのでだるまさん以外の一番赤をイメージさせるものを一斉に言いましょう。いいですか、『せーの!』」


司会

「リンゴ!」

金田一

「トウガラシ!」

だるま

「トウガラシ!」


金田一

「多数決でどうやらトウガラシに決まったようですね」


司会

「負けました」


金田一

「明日からはだるまさんには退いていただき『血トウガラシ』、『火トウガラシ』にします。相手はトウガラシですから文句は出ません」


司会

「いかがでしょうか?だるまさん」


だるま

「ああ、悪い代名詞から外れてよかった。これでしばらく選挙用として専念できるわい」

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