第14話

「此処か。」

「俺が記憶しているのは、ここまでだ。まだ、夜影がここにいるとは限らない。」

「母さん…。」

「才造、お前の嫁の香りはするか?」

「阿呆か。夜影は無香。嗅ぎつけられるわけがない。誰よりも徹底してるんだぞ。」

「変態になら可能だと思った。気配も当然無いな。」

「もう別の場所へ移動したか。」

「いや、居る。」

「何処だ。」

「寝息…?寝てるのか。よし、行くぞ。」

「才造が言うと別の意味に聞こえてくるが…。」

「案外、そっちの意味の方かもしれんぞ?」

「お前らもう少し真面目にしてくれ。ワシで遊ぶな。」

「んにゃ…?気配……才造!」

「夜影、真っ先に旦那に気付くとはな。嬉しい限りだ。」

「………頼也、才夜…眠…誰?」

「寝てたとこ悪いな。話がある。」

「あぁ、うん…なぁに。」

「寝ぼけてるのか?」

「寝起きだしな。この様子だと、夜間寝ず、昼間寝る昼夜逆転中っぽいな。」

「連れて帰るという手もある。」

「ん…、ん?才造?」

「目が覚めたか?」

「目ぇ覚めた。お陰様で。何用?」

「伝説野郎に浮気か?」

「さぁてね?」

「どういうことだ?何故、伝説野郎に浮気して、ワシらを捨てて。説明してもらうぞ。」

「どういうことかねぇ?」

「痴話喧嘩はやめろ。あと、長も変なキレ方しないでくれ。」

「で、長。お前は何を企んでるんだ。伝説の忍と、何を。」

「戦に舞い戻りたいのさ。あの爽快感、忘れられないねぇ。」

「本気か。」

「こちとらは戦忍。者を殺す為育てられた。平和な世にゃ生きてけない。暇は大っ嫌いだ。」

「お前は、操られているのか?それとも本当に自分の意思か?」

「さぁて、どうだか。」

「お前は伝説の忍に制御され、利用されるかもしれないんだぞ。それでもか!」

「今や、戦争は進化した。制御管理されるのは忍に限らない。兵士、兵器も管理されてる。体内に混ぜこまれたモノが、機械に繋がってる。」

「システム管理…AIか。」

「人工知能に完全に支配され、兵士や兵器の状態や現在地も監視。自殺も許さない。しようとした時点で体が硬直して動くなる。」

「俺を蘇生、機械化させたのもそれか。」

「こちとらが望んだことじゃない。戦争を拡大させたのもね。こちとらはただ殺傷できりゃいい。どんなに小さな戦でもいい。」

「お前にとって、兵器は邪魔というわけか?」

「邪魔する奴は味方であっても殺るから問題無いさ。ちょいと昔、兵士はVRで擬似的に経験を積むことによって、戦に慣れようとした。でも、現実はそう甘くなかった。どんなに脳みそに叩き込んでも、実際の現実では擬似的な経験じゃなく本当に経験を詰んだ兵士の方が勝った。最先端の技術で簡単に得られた擬似的な経験では不足だったわけさ。VRで得られる擬似的経験は、想定内のことしか体験出来ない。それどころか、VRだということを頭の隅で理解して死なないということから甘えさえあった。恐怖はあってもそれは、ゲーム感覚の恐怖で、現実になるとどうしても緊張感、恐怖はVRで体験した時よりも強く、また想定外の出来事に対する対処ができない。想定外の体験はしてないから、想定内でしか動けないから、どうすればいいかわからない。兵士は精神的不安定になり、結果実際に経験を積んできた兵士に負ける。」

「だが、それは改善された。実際に経験を積んだ兵士と同等、いやそれ以上の経験を短時間で得られるよう、開発は進みそれは現実になった。人体強化を行い、簡単に優秀な兵士を作ることが可能になった。サイボーグもそれと同じ…今に始まったことではない。」

「けど、戦は変わる。人体の機械化は、まだ生死を打ち消すことは出来なかった。それはもう可能になった。死んだ人間様を蘇生し機械化させ、生死を失わせ痛覚を極端に鈍らせた…そう、そこにいる名無しの機械忍。こうも成功してくれてんだ。量産化は目と鼻の先だろうね。戦場には、屍ばかり。兵士を失わない、戦力を保ったままの理想的な戦。」

「お前にとっても理想的か。延々と殺傷できるようになるからな。」

「いいや、実に面白くない発展でね。死なない相手を殺す趣味は無いのさ。死ぬからこそいいんだよ。刺せても殺せないなら、意味が無い。だから大反対。」

「なら何故、まだソイツと組んでいるんだ。お前の望む戦が失われていくのは、組んでいる伝説の忍の仕業だろう。」

「どうだか。色んな兵器が生み出されていく。どれもこれもが、人様を殺す為だけに作られている。的確に標的を排除する為だけに。」

「なんだ。共感でもするのか。お前と同じだと思うのか。」

「まぁね。だから、こちとらはこの兵器を排除しなきゃいけない。戦は変わる。それに抗って、戦を変えさせない。」

「長、お前の目的はなんだ。」

「さぁて、なんだろうねぇ?」

「不安定過ぎる…。戦争を望んで、兵士を殺すことを楽しみたいが、戦争に使用される兵器を壊したい…というのに兵器を生み出す側と手を組んでいる。何がしたいんだ。兵器を破壊し、兵士を排除したいなら、どちらかというと、単独の方が合っているんじゃないのか?」

「こちとらはまだ離れるわけにはいかない。やらなきゃなんないことがある。」

「それが達成されるまで、ここを動かない気か。」

「長話が過ぎたね。」

「あ、おい!待て!」

「平和ってのは、つまんないのさ。それに、平和なんて儲からない時代を、望まない人間様は沢山いる。平和の為の戦は、更なる死を招く。平和を害する人間様は必ずいて、それは制御できない。戦の合間ほど、平和な一時は無いんだよ。」

「長!」

「何処に向かったんだ…?」

「そうか…夜影は…。」

「才造?」

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