偽りのコイゴコロ
花見和ノ如く
0のコイ:ホッタンなんてカンタンなことなんだよ。
誰しも男ならば、ハーレムに憧れるのは当然である。
いや…本当にそうなのかと言われれば違うかも知れない。
だが一生に一回はそう思うはずである。
だって咄嗟にそう言う質問をされたらそう答えるしか無いもんな。
だから…俺はそう答えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
恋愛という感情は何者なのだろうか?
それは誰もが曖昧なものとして、熱烈なものとして受け止める。
そう、実態はないのである。
つまりそれがあるか、なしかの二択では分けられないものなのだ。
実際のこと好きになるってことは何者かに操られているのかもしれないし違うのかも知れない。
しかも好きという感情は生理的なことに分類できないのがまた厄介である。
好きという感情は子孫繁栄のために必要? いいや違う。なぜなら近くの人と子孫
を作れば良いだけであるからだ。わざわざ出会いを求めることもない。
なら生きるために必要? 絶対に違う。
つまり何が言いたいか?
恋愛というものは、この世に必要がないものだ。
恋愛によって作られる人間の失敗の数々を見よ。
嫉妬、独占、取り合い、ハーレム、失恋。
それだけでない。恋愛というものは滅茶苦茶厄介なものである。
そして恋愛というものは、確証がないものでもあるのだ。
……。
俺は起き上がっていた。
不思議と今日何の夢を見たかが気になる。
何だったんだろう?
思い出せない。
本当に思い出せない。
でも…気になる。
知らなければ、いけない気がする。
しかしやはり思い出せないのであった。
「おいバカ寝坊兄キ! 朝ご飯まだ~~?」
ふと俺は自分の妹の声に気付く。
俺はすぐに其処に向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ボウッとしながら朝ご飯を作り、妹一緒に食べる。
妹は相変わらず無愛想で、愛らしさがなかった。
妹はいつもの調子、その事実だけで俺は少し落ち着きを取り戻した。
そして学校が一緒の妹を取り残して、いつものように学校を出た。
無論登校中も違和感を覚えない。
完全にいつもの調子だったのだ。
俺は安心した。
何も変化がないことに…半分不満を思いながら安心した。
逆に何で俺は夢なんかを気にしていたのだろう?
そう思いながらクラスの扉を開けた。
その時だった。
俺が入ってきた瞬間、クラス女子ほぼ全員が俺の方向を見た。
中には見なかった奴もいた。
が、其奴らも意識を此方に向けていることを感じられる。
普通で無い。
俺は気付いた。
何故なら俺はクラスの陰の存在、俺を見る存在はおろか俺の存在を気にする人間は先生以外いないのである。
その俺が、入ってきただけで注目された?
あり得ねえ。
絶対にあり得ねえ。
俺は取り敢えず戸惑った後、外へと出て行った。
「済みませんでしたーーーー!」
きっと俺は何かをやらかしたのであろう。
そうとしか考えられない。
だから俺は詫びの言葉を叫んで、屋上に逃げていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
屋上は静かでまさに落ち着くには最適な場所だった。
俺が何をしたのだろう?
分からない。
では何故皆が俺を見つめていたのか。
…。
どう考えても分からないままである。
俺は取り敢えず息を吸い込んでみた。
「その…佐久川君?」
俺はその声にギクリとした。
木伏萌実。俺がクラスで一番嫌いな女子。
クラスの中で誰よりもフレンドリーで誰よりも人懐こい。そして完全なる陽の存在なのだ。
…。
コホン。
まず状況の整理をしてみよう。
現在俺、佐久川一希は木伏萌実と二人きりで屋上にいる。
彼女は何かやらかした俺に何かを訊こうとしているのだが、未だにそれが何なのか分からず。
以上である。
だったら気こそは進まないが何かばかりなので取り敢えず相手の要件を訊いてみるか。
「その…俺って何かやらかしましたかね?」
すると彼女は不思議そうな顔をして俺にこう言った。
「えっと…特に何もしてないはずだよ。いつもと一緒」
それじゃあなぜだ。
何で俺は入った途端多くの視線を感じたんだ?
そして何でお前は俺と話している?
全てが謎のままである。
そして彼女も。
「…それじゃあ、うん。教室で待ってるからね」
と言って去って行った。
謎である。
謎だ。
謎で謎で謎だ。
彼女も文脈も、教室の様子も、それから木伏の様子も。
取り敢えず俺は…教室に行ってみることにした。
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