038: 選挙――ヤジロベエ

 ある団体でトップを選ぶ選挙が行われた。

 二つの有力派閥から候補が名乗りを上げた。


 A候補

「Bには絶対負けられん」

 B候補

「何としてでも勝たねばならん!」

 A候補

「Bに負けたら我らが派閥は全滅だ。有力ポストはB派閥に独占される」

 B候補

「Aに譲る訳にはいかん。負けたら失脚だ」


 激しい選挙戦が行われ、遂に札束が飛び交う。

 両候補は不正選挙で逮捕された。


「困った。候補がいなくなった」

「どちらかの派閥所属者をトップにしたら、後がまとまらない」

「そういえば、全く目立たないが勤続年数の長いのがいたな」

「あぁ、あの人は派閥など全く興味を示さなかったからなぁ」

「実力はそれなりだが、派閥のせいでポストに恵まれていなかった人だ」

「丁度良い。これなら報復人事などはないだろうからな」

「神輿は軽い方が良い」


「わたしでよろしいのでしょうか?」

「あなたでなければ、組織がまとまらない。両派閥ともあなたをサポートします」


「やはり、中央で両者のバランスをとる人材が大事だ」

「ヤジロベエは偉大だな」

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