第二十六話

第二十六話・1

 緊張している様子の楓を、私は悪戯っぽい笑みを浮かべて揶揄う。


「よそ見しちゃダメだよ、弟くん。今日は、私との大事な時間なんだから」

「でも……」

「『でも』も『だって』もないよ。せっかく弟くんのために、色々とやってあげてるのに──。なにが不満なのかな?」

「不満なんじゃなくて……。その……」


 さっきから楓は、私のことを見ようとしない。

 きっと今の私の服装なんだと思う。

 やっぱりラフだからってビキニを着けた格好でいるのは、楓にとって刺激が強いのかもしれない。

 たしかに胸のあたりがちょっとだけ開放感があるっていうか。

 下の方はちゃんとショートパンツを履いているから、問題はないかと思う。

 まだまだ暑い日が続いているし。

 私が、どんな格好をしたって楓に文句を言われる筋合いはない。

 さすがに今の格好で、外出する勇気はないけれど……。

 家の中にいる時くらいはね。


「もしかして、私に普通の服装とか求めてたり?」

「それは、まぁ……。香奈姉ちゃんは真面目なイメージがあるから、それなりには──」

「そっか。弟くんは、私に普通の服装を求めていたんだ? なんか意外かも」


 私にとっては、結構楽なんだけどな。この格好は──

 やっぱり胸元なのかな?

 楓にとって気になる箇所は──


「だってその格好はさすがに……。ほぼ裸に近いじゃないか。それを見るのは、さすがに目のやり場が……」

「そうかなぁ。私的には、かなり妥協してる方だと思うんだけどなぁ」


 私はわざと胸元に手を添える。

 その気になれば、この胸元のビキニ部分は脱ぐこともできるんだけど。

 さすがに楓に怒られてしまうと思い、それはやめておく。

 露出が多いのは素直に認めるが……。


「妥協って……。香奈姉ちゃんにとってはそれでいいのかもしれないけれど──」

「なによ? まだまだ暑いから、過ごしやすい格好でいるだけなのに──。それとも全裸になった方がよかったりするの?」

「それはさすがに……。よけいに居心地が──」

「私の部屋だからね。どんな格好をしようが私の自由でしょ?」

「それはそうかもしれないけど……」


 と、楓はこれ以上は何も言わなかった。

 まぁ、裸にならないだけマシだと思ってほしいものだ。

 万が一にもなるつもりは──ないと思うけど。たぶん。

 楓を私の部屋に呼んだ理由としては、ほとんどが私のわがままだ。

 最近は、ちょっと色々と足りないような気がして──


「それに──。弟くんのことがちょっとだけ心配なのは認めようかな」

「ちょっとだけ──なの? 僕には、そんな風には見えないんだけど……」


 楓は、訝しげな表情で私のことを見てくる。

 その顔を見るに、私が楓に嘘をついているとか思われているのかな。


「だったら言うけど、また美沙ちゃんにデートに誘われたでしょ?」

「いきなりなんの話かな?」

「惚けたってダメだよ。美沙ちゃんには、確認済みなんだから──」


 私は、わざとムッとした表情でそう言ってみる。

 楓はどんな反応を見せてくれるのか気になったのだ。


「別にデートっていうわけじゃ……。ただの買い物、だと思うんだけど」


 やっぱりそう言ってのけたか。

 こんなの美沙ちゃんには、聞かせられないな。

 だからこそ、私はキッパリと言った。


「そんなこと、本人の前で言ったら確実にキズつくと思うから、たとえ建前でも言ったらダメだよ。私がデートって言ったら、デートなんだから──」

「う、うん……。ごめん……」

「素直に謝ることができるのなら、別に怒ったりはしないよ。ただ──」


 私は、そう言って胸元のビキニの部分に指をかける。

 やっぱり気が変わった。

 ここで楓とスキンシップを図っておかないと、美沙ちゃんに先を越されてしまいそうだ。


「ちょっ……。香奈姉ちゃん?」


 楓が何かを言う前に、私の胸元に着けていたビキニが床にはらりと落ちる。

 後のことは、言うまでもない。

 私のおっぱいは楓の目の前に晒されている状態だ。


「しーっ。大きな声を出さないの。これから、良いことするんだから」

「いやいや。ちょっと待ってよ。いきなりは──」

「ダメ?」


 私は、おっぱいを晒したまま上目遣いで楓の顔を見る。

 別に楓を口説こうとしてるわけではない。

 現に楓の手は私のおっぱいに触れていて、今にも揉みしだこうとしているのだから。

 なんと手の早いことで──


「ダメってことはないけど……。その……」

「行動と気持ちが全然噛み合ってないよ。体はとっても素直なんだから」


 私は、楓の手に優しく触れる。

 ここまでやってくれるんなら、最後までやってほしいものだ。

 なにを躊躇う必要があるんだろう。


「そんなことより、勉強は──」

「それなら大丈夫。今日、できる分のことはやったから。これ以上やろうとしたらキリがないよ」

「だからって、こんな極端なこと──」

「極端じゃないよ。これは、私にとって大事なことだから」

「あ、いや……。だって──」


 途端、私のおっぱいに触れている楓の手の力加減が変わる。

 離そうとしたり掴んだりと、あきらかに挙動不審な動きで私の胸を揉みしだいてきた。

 そんな触り方をされたら、ちょっとだけ気持ちいいような──

 不思議と不安な気持ちにはならない。

 触っているのは楓だから、そんな乱暴にはしないだろうけど。

 頼むから、ちょっとだけ優しく触れてほしいなって思う。


「もう。弟くんは、すぐに遠慮してしまうんだから。何度も言ってるけど、私には気を遣わなくていいよ」


 私は、はっきりとそう言って楓に抱きついていた。

 楓の手が私のおっぱいを揉みしだいていても構わずに、だ。

 もちろん楓の手から緊張が伝わってくる。

 それにしても。

 胸元のビキニ部分を外しているからなのか、開放感がハンパない。

 部屋には鍵を掛けているから、花音が入ってくる心配はないし。

 後はなにをしてあげようかな。

 楓の勉強でも見てあげようか。

 う~ん。悩むところだ。

 せっかくだから、下のショートパンツの方も脱いじゃおうかな。

 私の部屋で全裸になろうが自由だし。それに、心の広い楓なら許してくれるよね。

 そう思って、楓の顔を見つめながらショートパンツの方に手をかけた瞬間、楓はいかにも訝しげな表情で言ってくる。


「一つ確認なんだけど」

「なにかな?」

「まさか、このまま全部脱いじゃったりはしないよね?」

「なんのことかなぁ。お姉ちゃんには、わからないなぁ」


 私は、そう言いながら穿いているショートパンツをゆっくり脱いでいく。

 楓は私の胸に夢中だから、邪魔はできないはずだ。


「うぅ……。こんな事はわかっていたはずなのに……」


 楓は、そんなことを言いながら私のおっぱいを優しく揉みしだいていた。

 気のせいか泣いているような感じがするけど──たぶん気のせいだろう。

 私は、そんなちょっとした楓の変化を見て楽しんでいた。

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