第十二話・5

 どんなにわかっていても、それをされるとなかなか寝付けないものだ。

 香奈姉ちゃんは、僕の身体に抱きついてきて、スースー寝息を立てていた。


「ん……。楓」


 こんなことされて、まともに眠れるわけがない。

 あの後、なんとか説得して寝間着は着てくれたからいいんだけど……。

 下着等はつけてないから寝間着の下は裸である。

 香奈姉ちゃんは、わざと胸元のボタンをいくつか緩めて寝ているものだから、胸がチラリと見えていた。

 いくら僕にご奉仕したいからって、これはさすがにやりすぎだよ。

 しばらくしないうちに、香奈姉ちゃんはいきなり仰向けになる。

 その反動なのか胸元のボタンが一つ外れて、寝間着の下の胸が少しだけ露出した。

 さすがに胸の先端までは見えなかったが、後一つ外れていたら完全に丸見えになっていたところだ。

 しかし、下着を着用してないものだからおっぱいの先端が寝間着越しからでもクッキリと突き出ていた。

 つい触りたい衝動に駆られたが、ここはグッと我慢する。

 ──仕方ない。

 ボタンを締めるか。

 僕は、香奈姉ちゃんの胸元にそっと手を近づける。

 香奈姉ちゃんを起こさないように。

 そう思った次の瞬間、香奈姉ちゃんは僕の手を両手で掴み、そのまま胸元まで引き寄せた。


「楓……」

「っ……⁉︎」


 もしかして起こしてしまったか⁉︎

 僕はびっくりして、香奈姉ちゃんの顔を見る。

 香奈姉ちゃんは、寝息を立てて眠っていた。

 ──よかった。安眠していたか。

 僕は、安心して大きく息をつく。

 もし香奈姉ちゃんが起きてたら、何を言われてしまうかわかったもんじゃない。

 僕は、掴まれた手をゆっくりと引き剥がそうとする。

 しかし、掴まれた手に異様なほどの力が入っているのか、引き剥がすことができない。

 むしろ、ギュッと握りしめてそのままふくよかな胸に沈ませていく。

 これは無理に引き剥がそうとすると、香奈姉ちゃんが起きてしまいそうだ。

 それに、これで胸元のボタンを締めることができなくなった。

 どうしよう。

 これだと、香奈姉ちゃんが起きたときに間違いなく誤解される。

 なんとかならないかな。

 そう考えていても、簡単には抜け出せそうにないなと思う自分がいた。


 真夜中。午前の二時。

 ふいに香奈姉ちゃんが目を覚ます。


「あれ……。楓……」


 僕は、ずっと眠れずにどうしようか悩んでいたんだけど、わざと今起きた風に装う。


「どうしたの、香奈姉ちゃん?」

「どうして楓の手が私の胸を?」


 香奈姉ちゃんは、思案げな様子でそう言った。

 たぶん、寝ている時にやっていた事だから、何も知らないんだろうな。

 僕は、胸に押し当てられた手を動かす。

 香奈姉ちゃんのおっぱいは、とても柔らかい。


「僕に訊かれても……」


 僕は、そう答える。

 香奈姉ちゃんは、僕の手を改めてギュッと握りしめた。


「まぁ、いいか。楓が私のおっぱいを揉んでくれてたら、とても安心するし」

「安心するの?」

「うん。すごく安心するよ」

「そうなんだ」

「だけど、普段は絶対に触ってくれないよね……」

「まぁ、普段、触るところじゃないからね」


 触ってほしいところなのか?

 おっぱいって……。

 通常は嫌がるところだと思うんだけどな。

 香奈姉ちゃんは頬を染め、僕の手の上に手を重ね、そのままにぎにぎと動かし始める。


「こうして揉みしだいてくれたら、楓もエッチなことをしたくなるでしょ?」

「それが香奈姉ちゃんの言う『ご奉仕』なの?」

「う~ん……。ご奉仕ってわけじゃないけど、一緒に寝てるんだし、このくらいはやってくれてもいいんじゃないかなって……」

「それって、すでに香奈姉ちゃんの願望なんじゃ……」

「そうだね。私の願望かもしれないね」


 そう言いながらも、香奈姉ちゃんの手は、僕の手を離そうとしない。

 それどころか、もっと強い刺激がほしいのか、さらににぎにぎと揉みしだく。

 香奈姉ちゃんは、気持ちよかったのか


「んっ」


 と、喘ぐような声を出す。

 こうなると、もはや自慰行為に等しい。

 僕にはどうすることもできず、香奈姉ちゃんがやめてくれるまでそれが続いた。

 香奈姉ちゃんのおっぱいの感触はよくわかったから。

 お願いだから、その手を離してほしい。


「エッチなことをしたいって気持ちはわかるけど……」

「わかるけど? 何?」

「セックスをするためのゴムがないよ」

「ゴムなんて無くてもエッチはできるでしょ」

「ゴム無しでセックスしたら、妊娠させてしまうかもしれないからさ。それだけは、どうしても避けたいって言うか……」

「ずいぶんと重く考えちゃうんだね。もっと気楽にいこうよ」


 香奈姉ちゃんは、手を離してそっと僕を抱きしめる。

 気づけば寝間着の胸元がぱっくりと開いていて、胸があらわになっていた。

 どうやら、今のでボタンがいくつか外れてしまったらしい。


「そんなこと言うなんて……。香奈姉ちゃんらしくないよ」

「私らしくないって、どういうこと?」

「香奈姉ちゃんは、真面目な性格だからエッチなことは嫌いなはずでしょ。それなのに、僕と二人きりの時は、遠慮なくエッチなことをしてくるし……。どういうつもりなのか、全然わからないよ」


 僕は、普段思っている事をつい口に出してしまった。

 香奈姉ちゃんは、さほどショックを受けていないのか微笑を浮かべている。


「私はね。楓となら、どんなことだってできるって思ってるんだ」

「僕とならって……。さすがにそれは……」


 それは言い過ぎだと思ったが、言葉となって出てこなかった。

 こんな状況で何をするって言うんだ。

 セックスはするつもりはないし。


「できないことはないでしょ。現に、楓は私と一緒に寝ているんだよ。何かあってもいいと思うんだけど」

「この場合は、むしろ何もない方がいいよ」

「そうかな? 私的には、エッチなことの一つや二つ、あってもいいと思うんだけどな~」


 香奈姉ちゃんは、ねだるような視線を向けてくる。

 僕にそのつもりはなくても、香奈姉ちゃんはそのつもりらしい。


「もしかして、僕とエッチなことをしたいとか?」


 僕は、おそるおそるそう訊いていた。

 すると香奈姉ちゃんは、当然のことのように答える。


「だから、さっきからそう言ってるじゃない。楓ったら、ホントに鈍いんだから──」

「いや、でも……。エッチなことって言っても、色々あるでしょ」

「うん。楓なら、何がしたいかなって──」

「僕なら…か」


 今は、エッチなことは考えてないんだけどな。


「前みたいなゴムありのセックスがいいかな? それとも、私のおっぱいを思う存分揉みしだくか。…ねぇ。楓なら、どっちがいいかな?」

「何、その究極の二択は……。それって、どっちか選ばないとダメなの?」

「当たり前じゃない。だから、こうして一緒に寝てるんだよ」


 どちらにしても、香奈姉ちゃんの身体を弄ることに変わりはないじゃないか。

 なんか嫌だな。そういうのって……。

 香奈姉ちゃんは、良いのかな?


「たしかに一緒に寝てるけど……。そこまでやるとは思っていなくて……」

「そうだね。なんだか最近、色んな女の子に言い寄られているみたいだから、私も負けてられないなって思って…ね」


 色んな女の子って……。

 僕は、そこまで女の子との交友関係は無いと思うんだけど。


「心配しなくても大丈夫だよ。僕のことが好きな女の子なんて、よほどの物好きしかいないから」

「なによそれ。私が、よほどの物好きって言いたいの?」


 香奈姉ちゃんは、さも不服そうな顔をする。

 どうやら、香奈姉ちゃんの機嫌を損ねてしまったみたいだ。

 僕は、あまりのことに慌ててしまう。


「いや。そういうことじゃなくて……」

「それじゃ、どういうことなのかな?」


 香奈姉ちゃんは、笑顔で僕にそう訊いてきた。

 その表情は、内心では相当怒っている感じだ。


「香奈姉ちゃんって、もしかして本気で僕のことが好きだったりするの?」

「本気で好きじゃなければ、楓とセックスなんてしないよ。当たり前のことを訊かないでよ」

「ご、ごめん……」


 僕は、神妙な面持ちで香奈姉ちゃんに謝る。

 香奈姉ちゃんは微笑を浮かべ、僕を抱きしめてきた。


「悪いと思ってるんなら、私とエッチなことをしなさい。もちろん、さっきの二択のうちのどちらかで──」

「やっぱり、どっちかをやらないとダメなの?」

「もちろんセックスの方を選ぶのなら、たくさんご奉仕してあげるよ」


 香奈姉ちゃんのご奉仕……。

 それはそれで、すごく嬉しいことなのかもしれないけど。

 やはり不純異性交友はいけないことだと思うし、なによりゴムがあった方がいいだろうな。当然のことだけど。


「今回は、これで勘弁して」


 僕は、自分の手を香奈姉ちゃんの大きめなおっぱいの方に移動させる。

 香奈姉ちゃんとセックスをするか、おっぱいを揉みしだくかの二択では、僕は後者を選ぶっていう話だ。

 僕は、香奈姉ちゃんの大きめなおっぱいを遠慮なく揉みしだく。


「まぁ、大胆ね……」


 香奈姉ちゃんは、頬を染めてそう言った。

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