第201話 口車

サタナキア



麻島班vsバスタード



切り落とされたバスタードの腕



また一本の腕に触手がグルグルに巻き付くや否や



スパ



腕の付け根部から指にかけ、取り付くソードもろとも一瞬にして細かく輪切りにされた。



ボタボタ血まみれな肉片が床に散らばると間髪入れずに3本目の腕を攻撃



自在に変形する触手の先部が回転



腕に斬りつくとそのまま一直線に回転斬り



出血多量で真っ二つに切断された腕がダラリと垂れ落ちた。



攻撃用の触手が元の形に戻りながら江藤の元までさがる



一方



胡座流一心抜刀術…



朧の心得…



幻楼…



右上方横薙の斬光を側頭部にブチ当てたと同時に左脇腹にも刃が撃ち込まれる



それから



陰陽介錯の心得…



猛禽梟の啄(ついば)み…



次いで斬首で喉笛に一閃の刃が放たれ



陰陽介錯の心得…



猛禽鷲の啄み…



続いて逆手に握られ、もう一撃刈り取るような斬撃が喉元にブチ込まれ



合間の手は止まらない…



他にも追風の心得…



華密八守…



返討ちの心得…



鬼哭…



拳取りの心得…



死翼剣…



向詰の心得… 雀のさえずり… 



向払の心得… 嘴(くちばし)



青眼の心得… 蓮華紋…



虎三足開門の心得… 遠い月の影縫…



数秒の間に目にも止まらぬ15連斬を浴びせた合間



バスタードのあらゆる箇所から血が吹き出された。



恐るべき真剣の斬れ味



強固なアーマードスーツは損壊し、斬り口から血が吹き出す



プー プー プー



damage control start up…



self recovery interim report  5%



searching……



単眼ディスプレイにそう英語表示され



この期に及んでも尚 見失った七海を自動索敵するトゥーペア



そして後方に逃れる七海が発見され、カーソルが合わされるやロックされた。



そして



Целеуказания…



目標捕捉…



TARGET CAPTURING …



三カ国語で順次文字が表示



トゥーペアが再びネットガンらしき武器を発射させようと七海に向けた



次の瞬間



突如ディスプレイに刃が突き刺され、そのまま眼球が潰された。



ヒビ割れたディスプレイに歪んだ合間が映り



ジジジ…



searchingの文字が激しく歪み、故障、ディスプレイが脆くも割られた。



次いで



バシュ



股間部から刃が斬り込まれ…



一直線に斬り上げられた。



合間はそのまま振り返ると、懐から布巾らしき物を取り出し刃に付着した血痕を拭いはじめた。



真っ二つに裂かれた身体から血を吹き出すトゥーペアを視認する事もせず、手際良く真剣の掃除を終えた合間



向けたネットガンの腕が落ち



ドリルの回転が止んだ



それしきの武装で…



我が愛刀鬼切羽をナメてもらっては困りまする…



そして鞘へと納刀され、トゥーペアが仰向けに倒された。



麻島「…」



海原「す… すげ…」



合間の一方的かつ圧倒的強さに皆がポカーンとする中、毛先をいじりながら平然と見守っていたチコが勝負を決めた合間に歩み始めた。



おほ… 合間氏は終えたようですの…



うん…



邦光… 我々も殺るぞ… 貴公が出る幕は無い 下していいな?



うん… じゃあお願い…



承知…



すると



一本の触手がアーマードスーツを貫き、バスタードの腹部へと食い込んだ瞬間



触手が4本に開き、旋風



肉片を撒き散らし、腹部から上を吹き飛ばした。



ボタボタ ボト ボタボタボタボタ



胴体の一部や鎧の破片、腕や首が飛散され、上半身が消し飛ばされたバスタード



一瞬にして勝負がきめられた。



触手等はたちどころに収縮し、背中へと収まっていく



南「これが殲滅隊か… ヤバすぎじゃねぇ」



及川「ホントだな 飛ぶ鳥落とす勢いの猛者揃いとは聞いていたが想像以上だ」



2人の戦いっぷりをじっくり拝見し、周囲がざわついた。



海原「隊長 あの触手って一体どうなってんですかね?」



麻島「何でもあの男は自己により感染を克服した唯一の人間だと言われている 別名ハイブリッドヒューマンと呼ばれている」



海原「ハイブリッドヒューマン?」



麻島「あの触手は自在に操ると言うよりも個々に意志が存在すると聞いている」



海原「え?触手自体に意志が…」



麻島「にわかに信じ難い話しだな」



海原「意志があるってどうゆう事…」



麻島「本人に聞いてみたらどうだ」



海原「あ… あは いえ」



チコ「ちょっと~~ 合間ぁ~~ 胡座家の剣術は黙契秘旨だから 人前でやたらめったら技を振るうのは禁止だとかあたしには口うるさく言ってるよね なのに今のは何? あんなの相手に何手披露してんのよ」



合間「不覚 ついつい頭に血が登ってしまい 面目ありません」



チコ「不覚……じゃねぇーよ」



機嫌を損ねたチコを慌てた様子で追いかける大男



七海「ねぇ それよりあれは一体どうゆう関係?」



石田「さぁ でもあの人があの子の付き人っぽいよね」



そんな光景に不思議がる2人に三ツ葉が横から口を出した。



三ツ葉「あれは師弟関係にあたります」



七海「師弟関係? まさかあの若さでチコが…」



三ツ葉「いえ逆です 合間さんが師にあたります 何でも合間家は代々胡座家に仕える家系 御家人とまではいかないようですが主従関係にある間柄のようです」



七海「それで何でチコが弟子な訳」



三ツ葉「幼き時から父方と合間さんによって剣術の英才教育で手解きを受けたと伺ってます」



石田「なるほどね 剣術は弟子だけど立場は上って事か」



七海「つ~かあの子 いいとこ所か超いいとこのお嬢様なのね」



石田「お嬢様かつ容姿端麗で凄腕の美少女剣士か… 絵に書いたような高嶺の花だね…」



七海「しかも処女らしいから」



石田「え?」



七海「無理無理 あんたには釣り合わない釣り合わない」



石田「はぁ? 何も言ってねぇーし」



七海「ああゆう子は自分よりも強い男しか興味持たないからあんたなんかどうせ相手にされないよ」



石田「別にそんなんじゃねぇーし ちゅーか うっせーから」



三ツ葉「ハハ まぁまぁ 喧嘩しないで下さい」



江藤が皆の元へ近寄り、通路の先に目を向けた。



江藤「とりあえず第1関門クリアー……って  ん?………」



麻島「どした?」



江藤が言いかけで黙り、先をジッと眺めた



江藤「………」



海原「おい どうした急に なんだよ」



江藤「……っと言いたい所なんですが……」



ジィーと目を凝らす江藤



麻島「どうかしたのか?」



江藤「…」



チコも江藤の隣に着き、今度は2人して通路を黙視しはじめる



何やら異様な緊張感が包み込む中



七海「何 何 どうしたの?」



石田「分からない…」



中野「何を見てる… 何かいるのかな?」



中野の肩に手があてられ前に出ながら合間が口にした。



合間「皆様 いま一度下がってくだされ 前方に強い殺気を放つ者がおられまする」



石田「え? どこに… 誰もいないじゃん」



合間「……」



江藤、チコ、合間の3人は何を感じているのか…?



何かが見えているのか…?



江藤、チコの後ろ姿 背後にいる合間に視線を向けた麻島も前方に目を向けるがやはり先には誰もいない…何も無い暗がりな1階通路と壁、それから2階の通路が見えるのみだ



各人ライト光を伸ばして辺りを照らし、探していると



チコ「ねぇ それで隠れてるつもり? バレバレだから もう出てきなよ」



そうチコが一声をかけた



次の瞬間



スゥーと暗がりな通路に人影が現れ、幾線ものライト光が浴びせられた。



シャン



錫杖の金具を鳴り響かせ



長髪に僧侶な身なり



闇の中からいきなり男の姿が現れた。



茅ヶ崎「え!」



及川「なんだこいつ どっから現れやがった」



シャン シャン



その男は錫杖のリングを鳴らし、一歩また一歩と近寄って来る



海原「おい そこの坊主 止まれ」



海原が銃口を向け、警告すると



皆の前である信じられない現象が起きた。



その現象を一同が目にした。



そう…



その男はいつの間にか2階通路に立っていたのだ



海原「なっ」 恩田「え?」 七海「うそぉ」



瞬間移動した……?



目を擦る石田



目を疑う南



びっくりした表情で一同見上げ、麻島や海原、東條等が一斉にMPを向けた。



そしてチコが刀の鍔に指を掛け、問いかけた



チコ「あなたね… ずっとあたし達を見てたでしょ」



すると男が静かに口を開いた。



スキャットマン「私の存在を見抜くとは恐れ入る しかも力を抜き取ったにも関わらず傀儡の人形をこうもあっさりと葬るとは何たる手練れ…」



チコ「あたしの質問に答えてないわよ 外からずっと監視してたわね?」



スキャットマン「あぁ 左様だ 逐一動向を観察させて貰った」



チコ「やっぱりね」



そしてチコが江藤にボソッと呟いた。



チコ「めちゃくちゃカッコいい男ね」



江藤「あ それ失言かも… 純や君が聞いたら嫉妬しちゃうよ」



チコ「フフ そうなの? でも安心して いくらお顔がよくても全然タイプじゃないから… ちなみにあたしが好きなタイプはありきたり ノーマル平々凡々なあたしより強くてあたしに優しい男の人が好みだから… 少なくともあいつは優しそうには見えない」



江藤「言えてる しかしなんて殺気なんだ 俺達を殺す以外何も考えてないんじゃないか」



チコ「同感 こんな悪者は成敗しないと」



江藤「チコちゃん 今回はおふざけ半分だとヤバいよ あいつは相当だ」



チコがマフラーを取り、手袋も外した。



チコ「言われなくても分かりますから」



江藤「みんな もっと下がって」



そして 江藤が後ろを振り返り、皆に下がれのジェスチャーを送った時だ



スキャットマン「オン カカカビ サンマイエ ソワカ ビテン ツビレテン…」



突如 麻島班のサークル内にマントラ(呪文)が唱えられてきた。



江藤が2階へ目を向けるといる筈の僧侶が忽然と消えている。



江藤「なに?」



チコ「はっ」



合間「くっ」



一同慌てて声の元に振り向いた



その声は東條の背後から聞こえる



東條の背後からその声は発せられているのだ



東條「あっ あ…」



おののき びくつく東條の後ろに瞬間移動した僧侶がいた



スキャットマン「…マラカイワ イン マンド ソワカ」



そしてスキャットマンが転法輪印の結びで東條の背中に押し当てた瞬間



東條「あ… ああ あ…」



東條の顔がみるみると痩せこけ、干からびていった



東條「あ… あ… あぁ ぁ…」



江藤「みんな離れろ」



七海「きぁー」



石田「うわぁぁ」



及川「ふざけー」



東條から慌てて四散した麻島班の面々が目を向けると



東條は見るも無惨にシワシワ&ガリガリな皮と骨だけになっていた。



体内のあらゆる物が絞り取られたように萎(しぼ)み、朽ち果てた東條の身



重力を感じさせずに服がヒラめいて沈んだ。



っと同時にその場から消えたスキャットマンが今度は七海の前へと移動



七海の身体を回しバックを取るや再び…



スキャットマン「ギャテイ ギャテイ ハラギャテイ ハラソウギャテイ ボージー ソワカ…」



旋律に乗せ、真言が唱えられた。



七海「あ… あ…」



錫杖を脇に挟み、シャンシャン鳴らしながら言霊が吐かれ、様々な印契の結びを形成している



おかしな呪文を唱える僧侶に対し一斉に銃口を向けた麻島達



七海「あ… いや…」



七海の唇は震え



スキャットマンは七海を盾に不動明王光明真言の呪句を詠唱し続ける



スキャットマン「オン バザラ キリキリ ウンカリ ソワカ オン アボキャ ベイロシャノウ マカボバラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタラ ウンケイ アボシャラ…」



また何か仕掛けて来るか…?



その恐怖に耐えきれず



ドットサイトで狙いを定めた恩田が…



あやかしな術を使おうとする僧侶に狙いを定め、引き金を引こうとした時、サイトのレンズ内でスキャットマンと目を合わせた。



その際スキャットマンは意識を向けた恩田に何やら念を飛ばした。



すると



恩田はトリガーを引く事が出来なくなる



あれ…



恩田が何度押そうともそれが適わない…



何だこれ… どうなってる…



あたふたする恩田が再びサイト内でスキャットマンと目を合わせるや



スキャットマン「ナウマク サンマンダラ バザラダン ウンカラ ソウマク イン ソワカァァ~」



真言は不思議なり… 観誦(かんじゅ)すれば無明(むみょう)を除く…



一字に千理を含み、即身に法如と証す般若心経秘鍵…



不動明王の闇の通神力を借りし…



私に服し… 私に従い… 虜と化せよ…



急にトロンとした目つきに変わった恩田がいきなり振り返り、茅ヶ崎へ向け…



パス パスパス



突如発砲した。



仲間に撃たれ致命を負った茅ヶ崎が倒れ



続いて中野にも銃口が向けられ、発砲されようとした時



パスパス



ガチン



寸前に切っ先が振り上げられ、真上に発砲



刀を抜いた合間により銃口が弾かれていた。



次いで太刀の柄頭部で恩田の腹部を突き、恩田がうずくまると



合間「皆様 こやつの口契に耳を傾けるな それと瞳術のたぐい 目を合わせるでない」



すると



邪魔するか… なら…



合間に目をつけたスキャットマンが懐からある物を取り出し、それを合間へと投げつけた。



合間の腕に貼りついたのはある一枚の御札



合間「…」



邪魔するならば…



そしてスキャットマンが右の掌をかざし、引き寄せるや



合間の身体が勝手に吸い寄せられた。



合間「なっ」



チコ「合間」



七海と合間を盾にとり背中に手を当てたスキャットマン



まずはおまえから…



強制的に我が命令に従う傀儡にしてやろう…



素早き数種の印を結び、押し当てた瞬間



途端に目の色を変えた合間



そして合間が飛び出すや



シュパ



恩田の首に一線が刻まれる



それから続けざまに麻島の首を狙い、刃が向けられた。



その一寸の間に割り込んで来た一筋の刃



キン



鬼切羽の太筋が受け止められた



麻島の首筋寸前で鍔競り合うその刃はチコの日本刀 赤羽



チコが寸前でそれを防いでいた。



チコ「ちょっと あんた 何やってんのよ?」



合間「くっふふ へへへ」



不気味な笑い声をあげ、豹変した合間を目にしたチコ



チコ「くっ」



腕力ではかなわず、押し切られそうになった瞬間



キン



横からサバイバルナイフが加勢し合間の愛刀が弾かれた。



合間がバックステップで下がり、チコの隣りに着けた江藤



江藤「みんな 俺達より後ろに下がるんだ」



恩田の首がズレ落ち、ボトリと生首が血と共に落ちていくのを目にした江藤



江藤「チッ」



また 数秒の内に死体と化した東條、茅ヶ崎の骸に目を向け、七海を人質に取るスキャットマン…



そのスキャットマンの元まで下がり、刀を身構える豹変した合間に目を配ったチコ



合間「へっへへへへ」



チコ「チッ バカ…」



江藤、チコが洗脳され操りの身と堕ちた合間、スキャットマンと相対した。


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