第140話 這出

板状で舗装された地面がミシミシと音をたて、波状に盛り上がり



何かが地中を横切っていく



地響きは鳴り止まず、天井の上でも何かが移動している



村田「何だ… 一つ二つじゃねえぞ」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



真横の地中内でも何かが移動、土壁が盛り上がり亀裂が横一線に走った。



エレナ「何かいる…」



御見内「みんなで塊ろう」



落盤しそうな程の振動で、尋常じゃない土埃が天井から垂れ落ちる中



御見内達が皆と合流、身を固めた。



根城「今度は何…?」



村田「そこら中に何かいるぞ」



ポン吉「何かって何? 生き物?」



エレナ「分からない… 分からないけど複数の何かがいる…」



動揺極めるA班が身震いしながら周囲にライトを当て、見渡していると



臼井「もしかしたら… さっき話した得体の知れない何かかも…」



ボソッと口にした臼井の言葉に皆が注目



御見内「噂のUMA(未確認生物)か…」



百村「まじ? 地中を移動する化け物とかって まさにトレマーズじゃん」



村田「トレマーズか… モンスターパニックホラーの名作だな 絶対お会いしたくない化け物の一つだ」



ゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴ



地中を這い回る複数の生物の影



御見内等は警戒した。



一方



慌てふためくポリーナ達も身を固め、周辺に目配りしていると



ある声が聞こえてきた



ドカッ バコン



「うがあぁぁぁあああ」



土壁を殴りつけ、乱暴に破壊しながらどんどん近づいて来る声



ドカン バコ



荒れ狂い咆哮をあげながら近づいて来る声の主は…



バスタードだ…



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



総員円陣を組む中



村田がいきなり口にした。



村田「チャンスだ 逃げよう みんなついて来い」



そして動き出す村田に



御見内「待て 村田さん」



制止を聞かず飛び出した村田の眼前で



突如地響きがより一層と激しくなり



ゴォォー



天井が落盤



崩れ落ち



天井の穴から見たことも無い生物がニョロリと姿を現した。



急ブレーキで止まった村田



幾つものライトが照らす先には巨大なミミズの様な生物が顔を出していた。



それから



ゴゴゴゴゴォ~



スペツナズ等が身を潜める付近の壁からも…



ドカァ~



壁を突き破り、生物の頭がニョロニョロと突出



また下からも…



バコォ~



板床を破壊しニョキニョキと蛇行の動きで頭が突き破ってきた。



スペツナズ等の左右に2体が出現



村田「あ……」



天井から浮遊するミミズの化け物が口を開いた。



ワーム状の口内にはびっしりと牙が生え揃う不気味な口



ポン吉「なんだあれ…」



A班一同はUMAを前に身震いを起こし、硬直させた。



人間1人くらいなら軽く丸呑み出来そうな程大きく開かれた口



御見内「村田さん 下がれ」



御見内の一言で村田が一歩後ろに下がった瞬間



巨大ミミズが村田に襲いかかろうとした。



そして飛びかかる寸前



タタタタ タタタタタタタ  パスパスパスパスパス



2つの銃口から弾が吹かれた



口内に弾を浴び、のたうつ巨大ミミズがたまらず穴の中に引っ込んだ



巨大ミミズの化け物を前に臆する様子も怯む様子も無い2人



御見内、エレナによっていち早く銃撃され逃げ出したミミズだったが…



そいつは地中を移動しはじめた



エレナ「何あのミミズの化け物…」



御見内「例のここで起きた集団失踪事件の犯人に間違いなさそうだ」



エレナ「えらくデカいね… 何匹いるのかしら?」



御見内「さぁな だが1つ言えるのはこの辺一帯に巣くっているUMAって事だ あのデカさだ太古から生きてるのかも」



すると



「うがあぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁあ~」



A班一同にも聞こえてきたあの叫び声



エレナ「え?」



この声…



御見内「チッ バスタードか…」



3人の兵士に動くなの指示を送り、ポリーナが左右に目を向けた。



ユラリと浮遊し、ポリーナ達に向け口を開く2匹のUMA



「うがががぁぁあああ~」



激しい咆哮が急速に迫り



その声に反応した2匹のミミズが同時にその方向に振り向いた時だ



「うぐぉおおぉああおぉおあぉ~」



バコォー



壁を殴り壊し、角から奴が姿を現した。



ポリーナ「Просто неприятностью…(邪魔者ばかり…)」



また



御見内「ここは化け物の巣窟だ 速攻で坑道から出ないと みんなで一気に駆け抜けよう」



ポン吉「あんなんに食われるなんて絶対やだ」



そしてその掛け声に皆が頷き、御見内等が動き出そうとしたその時だ



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



立っているのがやっとな程の地揺れが起こり



地中をうねり、またしても飛び出してきた



ドカァ~ バコォーン バコォーン



突き破ってきた3つの頭



御見内等の行く手を阻むかのように



壁、床をブチ壊し3匹の巨大ミミズが現れた。



勝手にBGM セイジャー オブ パワーが流れ出し



迷宮通路に5匹の巨大人喰いミミズ



そしてバスタードも現る



Aチームvsスペツナズvs巨大ミミズvsバスタード



4つ巴戦再来する



「うぐぐぐぉおおおお~」



猛ダッシュで走ってきたバスタードが拳を振りかぶるや



バコン



床から生えたミミズの化け物に力任せなメガトンブローを喰らわせた。



壁に激突、一発ノックアウトでノビたミミズがダラリと地に倒れる



そして拳を振り回しそのまま突っ込んで来たバスタードにスペツナズ兵がAKを構えるのだが、それより先に踏み込んだバスタードからショルダーアタックを受けた。



途端に3人の兵士が蹴散らされ壁に激突



「ぐごおぉぉおおおお」



怒り狂った表情のバスタードはスペツナズ兵等の合間を駆け抜け、突っ込むや今度は壁から顔を出したミミズに掴みかかった。



「うるぁぁああがあがあああ」



そして力を込め、締め上げるとミミズはもがき暴れ出す



バスタードは丸太よりも太いボディーを握り潰す勢いで締め上げ、ミミズを穴から引っこ抜きはじめた。



振り子の様に頭を左右に振り、暴れまくるミミズの化け物を今度は脇へと挟み、そのまま潰しにかかる



「ぐおぉおおおぉおぉ~~」



真っ暗闇の中吠えるバスタード



そして圧迫されたミミズの化け物も奇声を発した。



「キイィィィィィ~~」



助けを呼ぶ声なのだろうか…?



金切りな号哭(ごうこく)が響くと、御見内等の前に現れた内の一体が突如穴の中に消えていった。



「うぐぐぐぉおおぉおあぉ~~がぁああ~」



阿修羅の様な面相で自分の身の丈以上もある化け物を締め上げるさなか



ポリーナ「Кредит(貸しなさい)」



兵士からAKを掴み取りポリーナが発砲



タタタタタタタタタタ



また残りの兵士もポリーナに続いて、発砲に転じた。



タタタタタタタ タタタタタタタ



揉み合うバスタード、ミミズの化け物諸共狙い撃ち、ボディースーツ、ミミズの身体に銃弾が撃ち込まれた。



「キイィィィィィ~~~~」



巨大ミミズが銃弾を浴び、再び悲鳴にも似た鳴き声をあげた。



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



すると



弾丸を浴びてるにも関わらずバスタードは振り返り、ミミズの化け物を手放すや、いきなりスペツナズ等に突っ込んできた。



矛先がこちらに向けられ、銃弾を受けながらも向かって来るバスタードにポリーナの表情が青ざめた



その瞬時



ボカァー



いきなり壁が破壊され、ミミズが飛び出してきた。



飛び出すや否やバスタードの頭部へ真上からガブリ



そしてそのまま食らい、丸呑みにした。



あれ程暴れていたバスタードがあっさり一飲みされ、体表が膨らむミミズが唖然とするポリーナを向いた。



また背後ではノビていたミミズが息を吹き返し、また銃弾でダメージを負ったミミズもゆっくりと迫って来た。



完全にポリーナ等は3匹に囲まれ、スペツナズ兵がわななき銃器を左右に振り向けていると



一匹のミミズがワーム口から何やら吐き出してきた。



それは粘液のような塊で



それが1人のスペツナズ兵にかけられた。



粘液に全身が包まれ



ドロドロでネバネバが身体に覆われるや…



その粘液がたちまち凝固しはじめた。



「Вау! ~ что это такое(うわぁ~ 何だこれは?)」



身動きままならず、急速に固まっていく粘液に為す術も無く



固まった粘液に捕らえられた兵士



なんなのこの液体は…?



生きたまま捕らえる為の捕獲液…?



あとでゆっくり食べようとでもしてるのか…



氷のように硬結、閉ざされたスペツナズ兵が内部でもがき苦しんでいるさまがサーマルのモノクロで映され、目の当たりにしたポリーナがミミズ共へ目を向けるや



今度は3匹同時に吐き出す仕草が見られた。



2名のスペツナズ兵も銃口を向けあたふたする。



そして一斉にさっきの粘液を吐き出そうとした寸前



一匹のミミズにある異変が生じた。



ボコ



ミミズの内側が急に膨らみ



ボコ ボコ



ドカアー



張り裂けんばかりに膨張されたミミズの体表



内部から殴りつけられた



「キィィィィ~」



ミミズは倒れ込むと苦しみ、激しく身体をバタつかせた。



そしてポリーナ等の目前で



ブシャー



一本の腕がミミズの身体を突き破り、飛び出してきた。



「キィィィィ~」



鳴き叫ぶミミズの喚声が坑道に響き渡り



次に



「ぅぅぅうう うがあぁぁあああ」



荒れ狂った咆哮が木霊した。



それから皮膚が引き裂かれ、もう一本の腕が飛び出すやパワーで強引にこじ開けられた。



ミミズの腹から這い出てきたのは血と体液にまみれたバスタードの姿

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