第125話 青木

「Несколько мышей, казалось,убежалисюда(数匹のネズミがこっちの方に逃げたそうだ)」



イジャスラフ「Ишите еговполностъючнепропускайтеетоснаружи(虱潰しに探せ 外に逃がすな)」



ドタドタ廊下を駆けずる足音に喋り声



斉藤が慌てふためく表情で口にした。



斉藤「な…何なんだよ…こいつら」



美菜萌「これ 多分ロシア語じゃないですか」



斉藤「ロシア語…?  ちゅー事は御見内の言ってたあの例のロシア人達か…何だっけ  スペなんちゃらって部隊…」



美菜萌「スペツナズです」



斉藤「そう…それだ ホントへねに攻めてきやがったのかよ」



ドタドタ  ドタドタ



美菜萌「早くみんなの所に戻らなきゃ」



斉藤「いや~ 難しいだろう~ …これは…」



美菜萌「でも」



手術台に潜める2人は身動きが取れずにいた。



そんな時



ザアアア~



斉藤「なんだ?」



美菜萌「トランシーバーです」



美菜萌の懐から取り出されたトランシーバーに突如受信が入った。



斉藤「馬鹿 音量落とせ バレたらどうすんだ」



美菜萌「すいません はい こちら一条です」



マツ「ジィ よしよし 良かった 生きてると思ってたぞ 斉藤も無事だな?ザザ」



マツからの交信だ



美菜萌「はい 斉藤さんは隣りにいます 一緒です」



マツ「ザ 分かった 今何処にいる? ジジ」



美菜萌「ここは2階です 2階のオペ室に隠れてます」



マツ「ザザ もうおまえ等も分かってるな? そいつらはロシアだ ロシアの特殊部隊による急襲だ ちなみにそこは安全か? ザザ」



斉藤「特殊部隊って…」



美菜萌「はい 今の所は…何とか」



マツ「ザザ なら動かずそこにしばらく隠れてろ 奴等の目的は虐殺だ 見つかれば殺しにかかってくる くれぐれも交戦などと馬鹿げた事は考えるんじゃないぞ 奴等は世界屈指の戦闘プロ集団だ 勝ち目など無いからな ザザ」



美菜萌「りょ…」



その時だ



いきなり美菜萌の口が斉藤によって塞がれ、同時にトランシーバーの電源が消された。



え…?



斉藤「シィ」



その直後…



手術室のドアが開かれる…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



ゴミ集積所



麻島「ジィ 赤塚  斉藤、一条の2人を見つけた… だが… 今さっき突然無線が途絶えた…ジジ」



川畑「無線が途絶えた?」



青木「え……?」



それを耳にした青木が目の色を変え、聞き耳を立てる



赤塚「2人は何処にいるんです?」



麻島「ジジ 2階の手術室だ ジジ」



赤塚「海原 図を出せ」



海原が廃病院の見取り図を床に広げ、一同囲む様にしゃがみ込んだ



その様子を1人壁にもたれ、腕を組みながらうかがう青木の前で



赤塚「2階のオペ室は…」



太田「あった ここです」



赤塚「俺達は今ここにいる…」



海原「ここに行くには…… 厳しいですね 恐らくここにも奴等は徘徊してます どのルートから行こうと敵のど真ん中を突っ切らなければない形です…」



徳間「ここの非常階段からアプローチするってのはどうです?」



海原「いや どっちにしろこの通路にぶつかる 奴等とぶつかるだろう」



青木がタバコに火を点け、懐をまさぐるや取り出したのはあのポケット灰皿



美菜萌から貰ったポケット灰皿を手にし、青木はジッとそれを目にした。



海原「敵の勢力はいまだ不明だし こんなの殺されに行くようなもんです… こんな状況下で救出に行こうなんて勇気のある奴はいるか?」



すると



川畑「ここにいるよ 行くよ 俺が行く」



谷口「俺も行く」



海原「は? 本気ですか?」



川畑「えぇ 斉藤と美菜ちゃんをここに置いては逃げれない」



海原「わざわざ 死に急ぐ気ですか? 奴等は捕虜はとらない 見つかればただちに命を奪いにくるんですよ」



川畑「分かってる でも仲間を見捨てるなんてこの先死ぬよりも後悔するよ」



谷口「ですね 同感」



海原「気持ちはよ~く分かります…ですが…」



すると



赤塚「とても勇敢ですね… ですがここは私にまかせて下さい」



川畑「え?」



海原「主任 今の話し聞いてましたか? それに無線がプツリと途絶えたんです 生きてる保証など…」



川畑「まだ斉藤達が死んだと決まった訳じゃない」



海原「…」



赤塚「そうゆう事だ 太田 マガジンを5個よこせ 手榴弾も2つだ」



太田「あ はい」



海原「主任 何故主任が…」



赤塚「これ以上見殺しにしたくない…… さっきの奴等が降りて来る可能性がある おまえ達はここから移動しどこかに隠れるんだ 指揮車からの逃避ルートを待て ルートが決まったらおまえ等だけで逃げるんだ」



海原「主任 無謀過ぎます」



赤塚「だから 主任はよせと言ってるだろうが 海原 後の事はおまえにまかせるから これを使え」



インカムが投げ渡された。



海原「主任…」



太田「マガジンと手榴弾です」



赤塚が中腰状態でMPの弾倉を取り替え、手榴弾を詰め込み、立ち上がろうとした… その時だ…



青木「あ~ いいよ隊長さん 助けなら俺が行くから…」



一同一斉に振り返った先には…



煙草をポケット灰皿に捨て、そのポケット灰皿を握り締めながら懐に仕舞い込む青木がいた。



海原「あぁ?」



そして青木がサークルに割って入り、図紙の前へとしゃがみ込むや



青木「いいかい 一回しか言わないからしっかりと聞きなよ」



赤塚「…」



川畑「…」  徳間「…」



青木「今では森に囲まれてるけど大昔… 元々ここいら一帯は炭鉱が盛んだったんだ 無数に穴が掘られ 地下には無数の坑道がある 今でもそれは存在し、残ってるんだ 以前採掘所だった跡地にこの病院は建てられてる」



そして青木が人差し指を下に向けながら



青木「つまりこの下にはここからのびた坑道が幾つもあるんだよ…」



徳間「坑道が…」



青木「あぁ 地上が奴等に囲まれ… 脱出困難ならこの下の地下道を通って抜け出せばいいでしょ」 



赤塚「あるのか?ホントにその地下道が」



青木「ある ほとんどの穴の入口は埋められちゃってるけど一カ所だけ残ってる場所がある それがここだよ」



青木が今度は図面のある場所を指さした。



青木「俺達が今いるのはここ それはここだ」



太田「それすぐ隣りの隣りじゃないか…」



青木「そう ここの男子便所の清掃用具庫の奥に1つドアがある それを開けるとマンホール程の穴が開いてるから それを下っていけば坑道に出る」



海原「おまえ…」



谷口「まじ?隠し通路か それ地上と繋がってるの?」



青木「繋がってる ここから約2キロ程離れた、トタン製の掘っ立て小屋の中に出る そこから地上に出れるよ」



川畑「完璧じゃん このルートで決まりでしょ」



赤塚「おい ガイド おまえどういった風の吹きまわしだ? なんでいきなり協力しようとする…」



青木「なんでって そんなん きまぐれだよ」



赤塚「そのきまぐれでわざわざ この危険な中をおまえ自ら2人の救出におもむくのか?」



青木「そうだよ 俺の気分が変わらない内に頷き、早く行動した方が得策だと思うけど」



海原「おまえ1人で救出など出来るのか?」



青木「出来なきゃわざわざしゃしゃり出ない 俺はこの施設にずっといたんだぜ 誰よりもここを熟知してる」



語気を強めた赤塚「ホントにまかせてもいいんだな?」



青木「くどいよ隊長さん いいから早く動けば さっきの奴等がそろそろ降りてちゃうぜ」



海原「主任…」



赤塚「………フッ そんないいルートがあるなら最初から教えろ 分かった おまえに2人をまかせる」



目を合わせる赤塚がうっすら笑みを浮かべるや青木が軽く頷いた。



青木「決まりだ 2人を救出したら後を追う 掘っ立て小屋で合流しよう ゴーゴーゴー Let's moveだ」



一同一斉に立ち上がり



赤塚「よし ガイドの言うその地下道を通ってこの地を退却するぞ」



川畑「青木… 斉藤と美菜ちゃんを無事連れ戻してくれ 宜しく頼むよ」



青木「川畑さんって言ったっけ 2人の救出に成功した際 報酬を貰いたいんだ」



川畑「報酬?」



青木「その… 報酬ってか… 成功した暁に… あの… あの子 一条さんって子なんだけど… その子をその… ん~ よ 嫁にでも貰っていこうかなと思ってて あ いや 最初は彼女として いやただの友達としてかな…」



川畑「フッ まさかそれが協力する原因? それがやる気の源か? 俺は美菜ちゃんの親じゃない 本人が合意するなら好きにしたらいい 自分の口で交渉… いや自分の口で口説き落としなよ 美菜ちゃんが了解すれば誰もひき止めないよ」



青木「あ オーケー 決まりだ」



川畑「生きてなきゃ口説く事も出来ない 美菜ちゃんを頼む…」



あぁ… 相手がスペツナズだろうと…



出し抜いてやるさ…



まかせとけ…



目つきが急に変わり



美菜萌救出に青木が動き出す

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