第82話 蹌踉

勢い止まらぬバスタードの猛撃



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



何度も穴が開けられ、ついに耐久度を失った幹を銃弾が貫通



その陰に隠れる奴隷の肉体を捕らえた。



次々口から血を流し倒れ込んでいく町民達



中間からへし折られた数々の木が倒木していき



木の陰に隠れ、しゃがみ込む黒フードの頭上を貫通した銃弾が通過していった。



激しい戦場と化す森で木から木へと逃げる奴隷も途中で捕まり、蜂の巣にされる…



多数いた奴隷達は1人残らず皆殺しにされ…



その場に残すは御見内と2人の黒フードのみとなった。



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



無尽蔵を思わせる底無しな吐弾



フル連射は尚も続けられる



ぶっ倒れた大木のわずかな陰で反撃の機を狙う御見内がバスタードへチラリと目を向けた。



今や頭部まで覆われ、完全無欠化する人形に弱点など見当たらない



この口径弾ではあの鎧みたいな物に…弾を通さない…



何か…奴を倒す方法はないのか…?



暴走による暴力吹き捲(まく)る殺戮の弾雨



弾丸を周囲に撒き散らすバスタードを前になすすべ無いゼビウスとデヴリボーイも木の陰でじっとそれを凌いでいた。



ゼビウス「おい あいつ何発持ってんだよ?」



デヴリボーイ「腰に相当デカいマガジンボックスがついてる…ウン万発か…」



ゼビウス「弾倉の交換も無しかよ…これじゃあ隙もありゃしねえぞ 何も出来ねぇ~」



デヴリボーイ「まぁ 待て 今 スピットが来る…」



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



また1つ木が倒れ



また1つ周囲の自然が壊された



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



今やターゲットのロックなど関係無い円軌道で全周に渡って無差別銃撃を行うバスタード



完全に故障し、射撃マシーンと化している。



そのバスタードが背を向けた時



再び木の陰からマカロフを向けながら御見内が顔を覗かせた。



このままじゃあ 終われない…



倒せないにしろ何かあれを食い止める手はないのか…?



そんな打開策を探っていた時だ



あった… あれだ…



御見内がある物に着目



あそこならばただの金属…



あれなら壊せる…



御見内がある部分を凝視し、策を見いだした。



あの乱射を止められる…



目をつけたそれとは…



否応なく吸い込まれていくあのベルトリンク(弾帯)



そこに目を着けた御見内がすぐさま立ち上がった。



奴の発砲を止める…



そして御見内がマカロフで狙いを定め、その部分へと発砲した。



パアン パアン パン パン



4発発射され、その内3発が命中



吸引途中のリンクへ見事に命中させた。



金属製の繋ぎ目に直撃し、変形する弾帯



そして弾帯はそのまま給弾口へと吸い込まれていく…



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



歳差運動で発砲しながらバスタードがこちらへ振り向こうとした 時だ



タタタタタタタタタ…ガチ…ガチャ



途端にリンクの流れが止まり



絶え間なく動作されていたマガジンボックスからの排莢



ノズルからの銃火



それが止まった。



軽機関銃内部でジャム(弾詰まり)を引き起こしたのだ



キュイイイイイ ガシ ガチガチ



よし…上手くいった…



バスタードは何度も何度もトリガーを押すが動作不良を起こした軽機関銃から銃撃が途絶えた。



御見内よって弾雨と銃声がピタリと止んだのだ



そのチャンスに



パン パン パンパァンパン



立ち上がった御見内が続けて発砲、代わりにハンドガンの銃声が森に響き渡った。



デヴリボーイ「銃撃が止んだ…」



バスタードの暴れる乱射がおさまった機に



ゼビウス「今がチャンスだ 調子こきやがって あのクソ人形がぁ~ やっちまぇ~」



木陰に隠れた黒フードも飛び出し、バスタードへ発砲した



パン パンパァンパン パン



立ち尽くす人形に3方向から弾丸が浴びせられる



だが… キン ピキュン ピュン



狙い撃ちされるも傷1つつけられずに跳ね返えされる弾



やはりハンドガンではダメージを与えるのは厳しいようだ…



いくら撃っても弾の無駄だ…



そう無理だと分かっていても3者は手を緩めずにひたすら撃ち続けた。



パンパァンパン パン



バスタードは沈黙したままその場に立ち尽くし、3者からの一斉砲火を抵抗する事無く受け続けていた。



そのさなか



発砲最中にふと御見内とゼビウスが視線を合わせた。



すると 今度はゼビウスの方が御見内に銃口を向け



パンパァン パン パァン



発砲した。



だが御見内はいち早く察知し、側方の木陰へと飛び込みそれを回避する。



ゼビウス「チィ 反応いい奴だな…」



転がり込んだ御見内はすぐに木の壁から身を出し、人形へ又も銃撃を行った。



パァン パァン パンパンパァン



その銃撃はその後数分間にも及び…



ただじっと受け続ける人形



これだけ銃撃を受けたにも関わらず、ボディーには細かな傷がつく程度



どうした…?



攻撃物を失って戦意喪失したか…



矛は無くしても 奴に一切のダメージは無い



これで終わりだとは到底思えない…



絶対何かを仕掛けて来る筈だ…



何もせずただじっとしているバスタードに逆に不安を募らせる御見内



不気味に仁王立つバスタードに御見内の他ゼビウス、デヴリボーイも警戒した。



そして3人が同タイミングで弾切れを起こし、マガジンを交換した時だ



いままで沈黙を守っていたバスタードが動き出した。



ガタッ



腰部に装着されていた大型のマガジンボックスが外れ、腕部に装着された軽機関銃が外された。



何だ…?



3人は無言で直視しながら警戒を強めた。



ガシャ ガシャ ガシャ



3つのマガジンが同時に装填され、3つの視線がバスタードに向けられた



双方の位置から横向きになるバスタード



急激にただならぬプレッシャーと緊迫感が張り詰めた。



それから軽機関銃を捨て、武装解除したバスタードがゆっくりと黒フード達に振り向くや、蹌蹌踉踉(そうそうろうろう)に動き始めた。



ゼビウス「お…おいあいつ…」



デヴリボーイ「こっち来んじゃねぇ」



ゆらつきゆっくりした歩調で迫って来るバスタードにゼビウスとデヴリボーイが銃口を向けるや



バスタードがいきなり走り出した。

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