第80話 混戦

御見内「ふせろ」



2人が身を伏せるや



パァン パンパン



3連で銃火が散り 3発の銃弾が放たれた。



小枝が撃ち抜かれ 幹に痕がつく



ゼビウス「チェ ま~た外したかよ…」



メサイア「くそ また邪魔が入ったぞ…」



屈んだ状態で周囲を見渡す御見内



さっきのサブマシンガンじゃない… 別の黒か…



ゾンビ達との距離3メートル



御見内が黒フードを注視した。



同じマカロフを所持… 奴は1人か……?



すると



ゼビウス「おい 底辺のスレイヴ(奴隷)共 あいつらを殺しなよ」



ゼビウスの掛け声で後ろから10人の奴隷達が現れ、向かって来た。



「&@#。・~__/;♬♭」



チィ… しっかり手下はいるか…



ヨダレを撒き散らし、理解不能な言語を発し、突っ込んで来た奴隷達



先頭にモルゲンステイン(中世ヨーロッパの柄に棘のついた鉄球のメイスなる武器)、牛刀を振り回しながら向かって来る2人の奴隷を目にした。



御見内は緊急換装で武器を打根からハンドガンに持ち替え



マカロフで射撃に転じた。



パンパン



太ももが撃ち抜かれ、2人の奴隷はダイナミックに転倒する。



次いですぐ後ろから4人の奴隷達が走ってきた。



これまた中世欧州の武器スパイクドクラブ(棍棒に棘付)、ロンコーネ(複雑な鉤刃の長柄槍)、匕首(あいくち 短刀)、鉄パイプを手にする廃人達



メサイア「おい おい うわぁ ゾンビ来た…」



前から奴等(黒フード達)… 後ろから奴等(ゾンビ達)…



完全に挟まれた窮地に…



御見内はまず間近に迫るゾンビに向け引き金を引いた。



パン



メサイアに掴みかかる寸前



ゾンビの頭が弾け、仰向けで倒れ込む…



次いで素早き動作で振り返り、奴隷にマカロフを向けた。



そして発射させた。



パン



奴隷の肩は貫通され、ロンコーネを握ったまま倒れ込み、水溜まりに顔をうずめる。



それから再びゾンビ等へ振り返り発砲



銃撃を交互に繰り返した。



パン



鼻骨が粉砕され、倒れるゾンビ



パァン



脚部を撃ち抜かれ、膝を落とす匕首野郎が鉄パイプ野郎と接触、共に地を滑らせ転倒させる2人の奴隷



前後への素早き振り返り動作からの発砲でゾンビ、町民等を順々戦闘不能にしていく中



的確に標的を撃ち抜いていく御見内が懐からもう一丁のマカロフを取り出した。



そして標的を左右対照に見据え、2丁の銃を構え始めるや



片手撃ちな、2丁同時撃ちへと転じた。



しっかりとリコイル(反動)の衝撃に備え、引き金が同時に引かれ



パン パン



ゾンビの眉間が貫かれ、またスパイクドクラブ野郎のスネが撃ち抜かれ、2つの身体が同時に伏した。



ゾンビは破壊し、奴隷はなるべく命を奪わなぬよう手傷を負わせる配慮で動きを殺していく御見内



次いですぐ後ろから4人の奴隷が迫って来た。



今度は青龍偃月刀(えんげつとう 中国の薙刀)、竹割り用鉈(ナタ)、厚鎌、出刃包丁なる凶器を持ち、それらを荒々しく振り上げ、振り回しながら御見内へと攻めて来る



御見内はそれらを冷静かつ鋭いまなこで左右へ振り向きながら



次々に発砲を行った。



「ううううぅぅ~~~~ パン」



一発も外さぬ正確な射撃



銃声が鳴る度 ゾンビと奴隷が同時に倒された。



接近するゾンビは片っ端から駆逐され、二度と蘇らぬ肉塊と化す



パン パン



また偃月刀を持った手が撃ち抜かれ、幾つもの指を欠損させた奴隷がスリップで転倒、地をもがき



またその1~2秒後には鉈持ち野郎の両膝が撃ち抜かれ、地に正座する。



経験を重ねる度に上達していく射撃術に加え、襲撃に何一つ臆する事無い太い肝と集中力が合わさり



更に2発発射



パン パァン



厚鎌クソ野郎と出刃包丁野郎の両太ももへ鉄丸が食い込み、2人の動きも止められた。



10人いたであろう奴隷共はあっという間に活動不能に陥り、御見内の眼前で悶絶している。



10人の奴隷達は一瞬にして御見内によって制圧された。



だが…それはあくまで手下のみ…



まだ肝心な奴がいる…



御見内が辺りを見渡し、奴を探すがそいつの姿は視界から消えていた



何処かに身を潜め、隠れているのだろう…



粗方 前線のゾンビを一掃した御見内がハンドガンを一丁仕舞い、歩き出した。



御見内「メサイア そこでちょっと待機してろ」



メサイア「おい どこ行くんだよ?」



御見内「見つかった以上 本命がまだだ…奴は葬らないと」



ピークは過ぎ 徐々に落雷、雨風が弱なり始めてきた森の中を…



地べたにうずくまる奴隷達の間を歩む御見内が落ちた偃月刀を拾い上げた。



これ…本物じゃ無い…



近くで見るとチープな作り、まがい物だと見て分かる偃月刀



柄にはバーコードのシールが貼られていた。



十字軍が使っていたようないかにも昔の西洋っぽい武器から珍しい武具まで…



これ等全てが偽物…



国内で大量生産されたか 輸入されたか… 鑑賞用か または…オブジェとしての用途か 恐らく通販かそういった専門の店で売られていただろう安価なレプリカの数々



さっきから奴隷達が手にし、よく見かけてきた近代には似つかぬ国内外のいにしえの武器全てがそういった類の代物だとはっきり知り得た。



しかし…これがいくら安物のレプリカだろうと 刃は本物 人体殺傷には何ら申し分ない



すなわちこれ等全て 脅威の凶器には変わりない



御見内は右手にマカロフ、左手に偃月刀を手にした。



そして忍び足で黒フードを探した。



時が経つにつれ、雲の流れは速く、みるみる弱風になり、小雨となり、雷鳴が遠のいて行く



御見内が辺りをキョロキョロ見渡し、黒フードを探しているや幹の陰からいきなり奴が現れた。



そして銃口がこめかみに押し当てられた。



ゼビウス「ブ~ 俺を探してたのか? 残念だったな… じゃあさらばだ」



黒フードがためらいなく引き金を引こうとした瞬間



御見内は頭部を素早く引き、銃口から逸らすや



偃月刀を大振りに振るった。



だが 虚空を刈り取った偃月刀



ゼビウスも斬撃をしゃがんで回避していた。



だが…



バキッ



御見内はそれを読んでいたかのように合わせ膝蹴りを浴びせていた。



ゼビウスの顎を捕まえ、それをヒット



モロに膝を貰ったゼビウスの身体は後方に跳ばされ一回転ででんぐり返った。



顎への直打を貰いつつ、すぐに起き上がらせたゼビウスが銃口を向け、言葉を吐いた。



ゼビウス「ってぇ~ てめぇー 許さねぇ 俺に会ったのが運の尽きだ 殺してやるぜ」



御見内「ほ~ それ喰らって起き上がるとは… だけど残念なのはどうやらおまえの方みたいだな なぜなら俺と出会ってしまったから…」



銃口を向け、完璧にターゲットを捕捉した御見内がゼビウスを追い詰めた時



パァン パァンパン



突然発砲され、御見内がその場から木の陰へと飛び込んだ。



チッ 加勢か…?



すると



デヴリボーイ「アウチ 外したか…



数メートル先から新たな黒フードが9名の奴隷を引き連れ現れた。



デヴリボーイ「あぁ なんだおまえいたのか?」



ゼビウス「チィ 邪魔すんな あいつは俺の獲物だぞ」



顎をさすりながら嫌な顔で口にしたゼビウス



デヴリボーイ「バ~カ そんなの首獲った者勝ちだぜ それよりおまえの召使い共はどうした?」



ゼビウス「うるせぇ」



デヴリボーイ「まさか 逆に狩られたのかよ?」



ゼビウス「だからうるせー 殺されてぇのか てめぇーは」



チィ…やはり増援か…



木の陰から相手を伺う御見内



黒が2人 町民が8…いや9人か…



11対1…



うぜぇーな…



いちいち全員相手してる時間は無い…



振り出しに戻された御見内が木の陰から再び様子を伺った



その時だ



御見内と黒フード達の丁度中間辺り



あいつ…



御見内が目を見開かせた。



悠然と現れたのは あの人型



あの人形だ…



バスタードが突如両者の間に割って入ってきた。

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