第77話 嘱目

トラップの森



バスタードJM005vsゾンビの集団



一層ノイズが激しさを増し、時折歪む映像に…



エネミーラインに侵入…ザー



ザー ネミ…ザーッに侵…ザーッ者発見



音声の乱れと共に歩み寄る無数のゾンビ等が映し出された



そして



ゾンビ等へ次々とロックカーソルが表示され



侵入者へロック レジ…ザーッ…タンス男…ザァ~…名 侵入者へロック ザァ~…スタンス男性1名 侵入者へロック レジ…ザァ~…ス男性1名…



音声と雑音の混じる音が鳴り響き、次々ゾンビ等がロッキングされていった。



「ううぅぅぅうう」 「うぁぁああううぅぅぅう」



フラフラとぎこちない足取りでゾンビ達がバスタードに迫るや



排除開始…



軽機関銃が向けられ



キュイイイイイイイ



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



発砲された。



背中のマガジンボックスから薬莢が吐き出され



弧円を描き乱れ撃つ



タタタタタタタタタタタタタタタタ



途端にゾンビの頭部が弾け



また胸部に被弾したゾンビが吹き飛ばされ幹に激突する。



「あぅぅううううう」



タタタタタタタタタタタタタタタタ



また手を伸ばす掌に着弾、両手がこっぴみじんに消失したゾンビはその場で膝をつき、静かに崩れ落ちて行った



一体また一体と排除されて行くのだが…



あとからあとから奴等は現れ、ゆったりとした足取りで、バスタードに迫って来る。



バスタードはそれを無表情な面で撃破し、一掃していった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



どしゃぶりが予想される黒い雨雲が空を覆い



森の中をマカロフを両手で握り、先頭を歩く黒装束の男 その後ろから9人の奴隷達が続いた。



それが100メートルの等間隔で4つのグループに分かれ



黒フード達がローラー作戦で御見内等の行方を追う



そして各グループが鉄球トラップの前で足を止めていた。



スピットファイヤ「振り子が止められてる…奴等はこの奥だな」



無線で口にするスピットファイヤ



デヴリボーイ「了解だ まだそう遠くには行ってねぇーだろ」



キャラバン「なぁ なら誰が先に仕留められるか賭けようぜ?」



ゼビウス「賭けるって 何賭けんだよ 女か?昼飯か?」



キャラバン「そんなの女にきまってんだろ」



デヴリボーイ「おもしろい その賭け乗った テメェ~等極上の肉便所用意しとけよ」



スピットファイヤ「いいだろ じゃあ殺した証しに生首を切り落とすってのはどうだ? 生首を手にした奴が勝ちだ それでいいか?」



ゼビウス「了解だ そうしよう 決まりだな」



キャラバン「あぁ こちらも賛成  了解した」



デヴリボーイ「こっちもそれでOK 分かった」



真新しい足跡をしゃがみ込み、土を指で摘まんだジャメヴが薄ら笑みを浮かべ口にした。



ジャメヴ「その賭け 俺も乗ったぜ…了解した」



スピットファイヤ「ホムンクルス 奴等の痕跡を見つけた こっちだ お前等もすぐに来い」



ホムンクルス「あぁ 了解した」



ポタポタと枯れ草に雫が落ち



雨が降り始めた。



歪んだ奴等の眼差し



各班が動き出す



ジャメヴ「おい奴隷共 王様からの命令だ 他の奴等より先に逃亡犯を探しだせ しくんじゃねえぞ」



サブマシンガンを光らせ、高圧的に命令を下すジャメヴも動き出した。



そして廃人等を従えた各グループが鉄球トラップを通り抜けた その時だ



タタタタタタタタタタタタタタタタ



あのけたたましい発砲音が各班の耳に届いてきた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



昼とは思えない程 上空が黒い雲に覆われ



ピカッ 



稲妻が落ちた



ザァーザァー



メサイア「クソ 降ってきやがった」



メサイアがフードを被り、御見内が半田にフードを被せた。



ゴォォォー 時間差で落雷した爆音が地上に鳴り響く



ザァァアアー



会話が聞き取りずらい程の雨脚の強い本降りだ



そんなどしゃぶりな雷電に負けないくらいに…



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



軽機関銃の発砲音が奏でられている



撃ち放題の殺り放題



バスタードによって一方的に射殺されていくゾンビ達



ピカッ  ゴォォォォー



タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



ザァーザァー



メサイア「わぁ 今落ちたの近ぇー ったく最悪な雨だな… しかもちっともおもしろくねぇーときた やっぱ勝負にならねぇーなこれは…」



御見内「そうかな… まだ分からないぞ」



メサイア「あぁ?」



一見一方的に見えるが…



数が減る所か



駆逐されながらも銃撃音に導かれ、どんどん数が増していくゾンビ達



気づけばバスタードの周囲に奴等の数が膨れていた



前方 左右ばかりを乱射するバスタードの背後からもゾンビ達が迫って来る



御見内「アリやハチと同じだ 正直ウォーカーは1匹ならたいした脅威は無い だがホントの脅威はその集団性に有りだ… アリだって数百万も集まれば百獣の王だって倒せるからな… 武具にかまけ たかがゾンビとなめれば足元をすくわれかねない」



メサイア「そうなのか? ユニソルの圧勝にしか見えないけどな…」



御見内「見ろ 奴はもう周囲を囲まれたぞ 奴はそろそろ足元を掬われるだろ」



タタタタタタタタ タタタタタタタタ



メサイア「それまじで言ってんのか?」



御見内「あぁ まぁ見てろ」



御見内の言葉通りゾンビに包囲されたバスタード



ザァーーー ゴロゴロ



「うあぁぁぁぁああ」



そして背後から3体のゾンビが近づき、一斉に襲いかかった。



バスタードの背中に抱きつき、足にしがみつき



それから歯を剥き出し、ゾンビが噛みついた。



メサイア「おっ ホントだ ゾンビ選手が行ったな」



だが鋼鉄な鎧に歯は通らず



逆に歯が折れ、腐りかけの歯茎からボロボロ歯が抜け落ちた。



タタタタタタタタタタタタタタタタ



バスタードは軽機関銃をぶっ放しながら背中にしがみつくゾンビ等を振り払ったのだが…



「あぁぁぁああああ」 「うぅぅううぅぅう」



ゾンビ等の勢いは止まらず、次々背後から飛びついていった



そしてバスタードの首へ腕が回され



次々飛びかかる多勢なゾンビについに押し倒された。



その倒れたバスタードにたかり



途端に埋め尽くされる



そしてバスタードの姿が群がるゾンビによって消された。



メサイア「まじかぁ 本当にゾンビ選手の大逆転勝利じゃん」



御見内「なぁ だから言ったろ あいつはゾンビを舐めすぎたんだ 奴等との戦い方を知らない奴は化け物だろうとああなる」



メサイア「貴重な解説ありがたいっす 1つ…無知な自分に教えて頂きたいんですが その奴等との戦い方とは一体何ですか?」



御見内「おまえそんな事も知らないでよく今まで生きてこれたな」



メサイア「へっ まぁ代表の魔術のおかげっすかね」



御見内「こんな見通しの悪いフィールドで…しかも奴等がそこら中うようよしてる中で… 1分以上も停滞するなんて論外だよ せめて見通しいい場所まで移動するか その場で停滞したいならまずは背後の安全を確保すべきなんだ これは勿論ゾンビに限らず対人間でも同じ事が言える こんなのは基本中の基本だぞ」



メサイア「ためになる御高説ありがいね なら将来は見通しのいい北海道の大草原か鳥取砂丘のど真ん中に家でも建てて住もう そして常に壁に背をつけ安心安全な生活をしていきたいと思うわ」



御見内「おまえ馬鹿にしてんのか?…まあいい 余計な時間を食っちまったな 半田さんの状態もよくない そろそろ行こう」



メサイア「行くったって あの群れどうすんだよ?このまま行けばぶつかるぞ… 頼むからもう強行突破だけはやめてくれよ」



御見内「あぁ だから…手間だが迂回しようと思う」



メサイア「まだそれならいいや」



御見内「怪我人もいる事だし なるべく戦闘は避けたい じゃあ右から大きく周り込もう いいか?」



メサイア「あぁ それでいい 行こう」



豪雨が降りしきる中



2人が腰を上げ、木陰から立ち上がった その時だ



ふと後ろを振り返った御見内の前に



1人の奴隷が立っていた。

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