第76話 見物

「ううぅぅう ううぅぅう」



「アアァァアァ~」



食材を発見した屍人達がそれにありつこうと御見内等に群がりだす。



不規則な間隔で近寄ってくるゾンビ達



メサイア「おい どうすんだ?結構数いるぞ…こっちは両手が塞がってる」



御見内「心配いらね おまえはそのままおぶってろ 俺がサポートするから」



ハンドガンは音が鳴る…



奴等(ゾンビ)を無駄に引き寄せてしまうだけ…



それに奴等(黒フード達)も…



やはり適してるのはこいつか…



御見内が和弓を取り出した。



それから袈裟掛けで背中に置かれる筒から矢を摘まみ出し弓に装填



御見内「メサイア トラップはそこら中にあるからな 俺の通るルートを後ろからついてこい」



メサイア「分かった」



御見内「よし こっちだ 来い」



いつでも放てる状態で弓を構えながら鉄球トラップを通り抜け、右方向へと移動した2人



「あぁあああああ」



「おぉぉおえぇ~~」



こぞって集まるゾンビ等が手を伸ばし、離れて行く御見内等を追いかける。



森の中を駆ける御見内とメサイア



途中 落とし穴に落ちた幾体ものゾンビ等を目撃した。



メサイア「ゴキブリ並に罠にかかってるな」



深く掘られた穴から這い上がろと足掻いているが…



身体中串刺しになるゾンビは呻き声をあげる事しか出来なかった。



また そのさなか 御見内等の目の前で既に開いた穴に自ら足を踏み外し、落下したゾンビ



メサイア「馬鹿だな テメェーで落ちていきやがった」



うつ伏せで落ちたゾンビの背中から無数の針刃が突き出ていた。



メサイア「なぁ なんであの病院の屋上にスナイパーが常駐してたと思う?」



御見内「侵入者の監視だろ」



メサイア「そうだが 1番の理由はこいつ等だ 何処からともなくわいて出て来るこいつらの掃除がメインなんだよ このトラップだってそうだ 奴等の侵入を防ぐ為の物だ」



御見内「やはりそうか…」



メサイア「だけどトラップだけでは到底防ぎきれない それで明神さんが日々屋上から狙撃して奴等を掃除してたんだよ」



新しく作り直されただろう落とし穴のトラップ



御見内はそれら罠をスイスイ避けながら進んで行った。



メサイア「でもよぉ~ いなくなった途端にこの群がりようだぜ……こんな山奥にこんな人数…なんでこんな化け物が生まれてきたんだか?誰かこのバイオハザードの原因を知ってる奴はいねぇーのかな」



御見内の辿ったルートを正確について行くメサイアがぼやいた。



御見内「そこにデカい罠があるぞ 気をつけろ… 原因? なんでそんな事知りたい?」 



メサイア「そりゃ そうだろ 死人が蘇って人を襲い出したんだ 理由なんかねぇーよ ただ普通に何でこんな事になってるの知りたくないか?」



御見内「原因か… ちょろっと話したと思うが人間は嫌われてるんだ  人の心が汚れきってるからだろ…」 



メサイア「あぁ?」



御見内「独り善がりで醜い…汚れた不要物なんだよ俺達人間は… それの掃除係でゾンビ、ランナーが生まれた… ナウシカの腐海ってあったろ あれみたいなもんだ 地球をキレイにする役目で奴等は現れた」



メサイア「不要な汚れの掃除の為か… 俺達はゴミだと」



御見内「そうだ 地球上のあらゆるものから見たら人はゴミ以下なんだとよ」



メサイア「人間は不要な存在か… でも何でおまえがそんな事まで知ってんだ?」



その時だ



急に立ち止まった御見内



メサイア「おい 急に立ち止…」



御見内「シッ 静かにしろ」



御見内が辺りをキョロキョロ見渡し始めた。



御見内の側に寄り、小声で口にするメサイア



メサイア「今度は何だ?またゾンビか…」



御見内「いや…違う…別の存在だ」



「ううぅぅう ううぅぅ」



奴等じゃない…



ゾンビとは違う何か…



何かが近づいて来る…



御見内に緊張が走り、周囲に視線を向けた時だ



パキッ ガザ



枯れ葉、枯れ木を踏みしめる音



御見内の目が見開き



メサイアの腕を掴み咄嗟に身を屈めた。



メサイア「お…おい なんだよ?」



御見内「シッ あそこを見ろ」



しゃがみ込んだ御見内の指差す先に…



メサイア「嘘だろ あいつ生きてやがったのか」



森をさまよう人形の姿があった。



東の空がどんよりと曇り、黒い雨雲が日の光を遮ってゆく



急速に雲行きがあやしくなり、ピカピカと雲の中でスパークする稲妻



その数秒後



ゴロゴロ



雷鳴が轟いた。



あと数十分もすればこの森に到達、どしゃぶりの雷雨に見舞われるだろう雲行き…



これから天候さえも悪化しだすトラップの森で…



しゃがみ込んだ御見内とメサイアはその場を動かずに様子を伺った。



奴はこっちに気づいて無い…



ガザ ペキ



辺りを見渡しながら歩む人形



双頭の内 一つは完全死に絶え、ダラリと頭を垂らしているが、もう一頭は健在



その頭が前方、左右に目を配りながら歩行している。



人形の瞳から映るヴィジョンには激しいノイズが生じ



索敵モードerror 敵味方識別モードerror 言語認識モードerror 通信モードerror 



ヴィジョンにはerrorの文字ばかりが点灯点滅していた。



そしてバスタードが歩行するさなか



数メートル先の木々の合い間をある一匹の野鼠が通り抜けようとした



その時だ



突然ヴィジョンに警報が生じた



エネミーラインに侵入者発見



エネミーラインに侵入者発見



機械的な音声が鳴り



バスタードが視線を向けるや野鼠にロックカーソルが表示



ロッキングされた。



侵入者へロック レジスタンス男性1名



排除開始



キュイイイイイイイ



タタタタタタタタ



軽機関銃がぶっ放された。



横なぎな銃撃で土埃が舞い上がる。



侵入者排除成功



野鼠は銃弾を免れ、我が家である穴へと消えて行った。



鼠を人間と誤認し、誤作動したセンサー



完璧に故障している



その様子を遠目で観察している御見内達



メサイア「あいついきなりぶっ放しやがった…イかれてんな」



御見内「あぁ そのようだ 奴が通り過ぎるのをここで待とう」



メサイア「でもあいつは解体人の仇だぜ いいのか?」



御見内「ならおまえ行くか?」



メサイア「いや 遠慮しとく」



御見内「あんな奴とやり合ってる暇は無い…それに一雨きそうだしな…」



御見内が迫り来る雨雲をチラリと見上げた。



すると



メサイア「おいハサウェイ あれ見てみろよ」



メサイアが指差す先には…



音に導かれ森中から集まって来たゾンビ達を目にした。



4~50体の大集合



「うああああああ」 「ううぅぅぅうう」



それがバスタードへと群がり始めた



メサイア「こりゃあ見ものだな おまえどっち応援する?うすのろなゾンビの集団か?それともユニバーサルソルジャーの化け物か?」



ピカッ ゴロゴロ



すぐそこまで覆われた空から鳴る雷鳴がこの森での初戦…



第1死合のゴングとして鳴らされた。

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