第65話 援護

ガチャ ドアを開けるや大人から子供まで大小の群がるネズミ達が一斉に散らばった。



その場に残されたのは腐った肉塊



3人はそれを通り過ぎ、前方の扉を開いた。



開けた途端 日の光が照りつけ、眩しさで御見内は目を細めた



裏手から外に飛び出た3人は移動



頭上には送水らしき大きなパイプが幾つも連なり



3人は金網フェンスでしきられた人1人通れる程の細い通路へと飛び出した。



メサイア「ここはどの辺りになる?」



バイヴス「下水場の正門からほぼ反対側になります」



メサイア「反対側か… さっき乗って来た車が正門の駐車場に置いてあるから …結局あそこまでいかなきゃ駄目なのか… でもよ…」



御見内「ここをまっすぐ行けばその駐車場まで行けるか?」



バイヴス「えぇ それは行けると思います」



メサイア「馬鹿 おまえ もう正門なんかアホみたいにわんさか奴等がいるんだぞ そんな所行けねぇーよ」



御見内「徒歩での移動は無理だ 移動するには車が必要だ」



メサイア「そんなのわぁーてるよ でもさっきの倍はいるぞ このまま森を移動して どっか落ちてる車を適当に探そうぜ」



御見内「いや そんな時間無い それに奴等の包囲網が張られる前にここを抜けないとそれこそ抜け出せなくなるぞ」



メサイア「…だとしても命知らず過ぎだろ」



すると



ガチャ バタン



「±♩∑√≫∮≒◐〓⊕⊄≅」



奴等が追いつき扉を開く音が聞こえてきた。



御見内「押し問答してる場合じゃないな…何人いようがもう気合いで突破する 行くぞ」



メサイア「まじかよ… あいつらにとっ捕まるくらいならまだゾンビに食われた方がマシだわ… 言っとっけど捕まった時はお前等置いて俺は自殺するからな」



御見内「心配すんな 絶対成功させる」



メサイア「そりゃあ 頼もしくもありがたいこった… 感謝だよ……って元凶は全てテメェーにありだぜ」



ガシャ ガシャン



「◐⊕∽♀÷♩≈∽∽∝∝★<」



3人同時に振り返ると



金網フェンスに飛びつき、飛び越えて来る無数の奴隷達の姿



そして あらゆる凶器を携え、素っ裸なキチガイ共が3人を追いかけて来た。



メサイア「やべぇ~ 来たぁぁあ」



次々と開かれたドアから奴隷達が姿を現し、散開した。



腰程の金網フェンスを跨ぎ、一列に順をなし追いかけて来る奴隷達



また1メートル程の下水溝をまたいだ雑草の生える土面を裸足で追いかけて来る奴隷達



御見内「ぎょーさん 来やがったぞ」



半田をおぶるバイヴスは追いかけて来る集団を目にし、顔が青ざめる。



先頭の奴隷がスプリンターの如く キレイなフォームで全力疾走



誰よりも先に頭身を離し、能面で3人へと迫って来た。



見る見るその距離を縮め…



メサイア「やべぇ あいつ早ぇぞ 追いつかれる」



チラッと後方に目を配った御見内



最後方を走るバイヴスにスプリンターが急接近して来るのを目にした。



このままでは…



バイヴス「ひっ ひぃ~~」



手の届きそうなわずかな距離まで迫り、スプリンターが掴みかかる寸前まで迫った時だ



御見内「そのまま行け」



先頭を走る御見内がいきなり金網フェンスを飛び越え、コースから外れたと思いきや



再びフェンスに手をつき、ジャンプと同時にバイヴスに手を伸ばすスプリンターの頬を飛びつき廻し蹴りで蹴りつけた。



バカッ



跳び蹴りのジャストミートを受けたスプリンターはそのまま金網フェンスを越え…



コースから外れて排水溝に頭を突っ込ませた。



御見内の見事な迎撃が決まり



着地した  その時だ



ふと3~40メートル先で槍投げのフォームを取る奴隷の姿が捉えられた



その投げつける瞬間が御見内の目に入ってきたのだ



その瞬時



槍は投擲され



ぶん投げられた



その槍は半円を描き



それから御見内の足下わずか数十センチ手前に突き刺された。



あぶね……



御見内は一瞬焦りの表情を浮かべるも再び走り出す



先頭を走るメサイア、次いでバイヴスが続き、少し距離を置いて追いかける御見内



メサイア「ハッ ハッ ハ おい まだか?」



少々呼吸が乱れてきた各々



バイヴス「ふっ はぁはあ 一番奥までです はぁ はっ」



メサイア「はぁ はっ はっ 結構長ぇーな…」



すると 



「⊕♀∮≫√∑⊄⊄⊄♀≅」



側面  前方



そこら中から日本語としては聞き取れぬ言葉 勿論外国語でも無い言葉



そんな喚き声と共に



バリーン



建物のあちこちで小窓のガラスが破れる音が鳴り



また… ウィィィィィン



あちこちから機械音らしき音が鳴り響いてきた。



もう建物の周囲が奴等に取り囲まれているのが分かる…



そんな騒然となる中、御見内は走行しながら周囲の様子に目を配った。



バリーン



ある小窓のガラスが破られ、中から覗かせたのは弓矢



走行するメサイアの頭部へと狙いを定めた奴隷が弓を引く寸前



シュ  グサリと額に矢が突き刺さり、その奴隷は窓から姿を消した。



その先には、立ち止まり 既に矢を引いていた御見内がいたのだ



御見内はすぐに2人の後を追い、駆け出した。



バリーン 



ウィィィィィ ウイイィィィィ



「㈱ющжо㎠㎏ℓ€$$£Å」



3人から左手に見える建物



位置的に第1沈澱池のプラントがある辺りだろう…



その建物内から聞こえて来る電動器具の作動音や廃人等の何語か分からぬ喚き声



そんな恐怖の喧騒が3人を包み込む中



走行する3人がその沈澱池の半ば辺りに差しかかった時にそれは起きた



「♂⊗∅⊥⇒∥ℵ∂%ℓΘα」



ウィィィィィ ガリガリガリガリ



突然建物のある一部分の壁が内部から傷つけられ、いくつもの削られる音が鳴り響いてきたのだ



ガリガリガリガリガリガリ



そして壁が削られ、回転する刃がいくつも貫通されてきた



たっぷり血を吸った赤く染まるベルト式の刃



チェーンソーだ



ウィィィィィ ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ



またチェーンソーの他にも丸ノコ 電ノコ ドリルなど多数の刃が顔を出し、凄い勢いで壁が切断されていく



そして 壁が切り取られ、壁が倒れるや中から複数の電動器具を所持した奴隷達が現れた。



チェーンソー 草刈り機、丸ノコギリ、電気ノコギリ、電動ドリル、ヘッジトリマー、(園芸用の葉刈り器)などなど



ウィィィィィン ウィィィィィ



「□◇✓⇩♯〓∪⊕∧∬∵」



走行する3人の前に現れ



すっ裸のイカレた目つきの若者達がその電動器具を振り回しながら襲いかかってきた



メサイア「わぁああ あれはやべぇ~」



それを目にしたメサイアがたまらずマカロフを向け、走行しながら数発発砲した。



パアン パン パン パン



当てずっぽうで放たれた銃弾の内1発が奴隷の眉間を捉え、丸ノコを手にした奴隷が倒れて死する。



ウィィィィィ ウィィィィィン



だが凶器を暴れながらも振り回し、向かって来る7~8人の狂人



メサイアが銃を身構え、立ち止まろうとするや



御見内「止まるな そのまま行け」



メサイア「はぁ う…あぁ 」



それを御見内に制され、メサイアはそのまま走り続けた。



その代わりに立ち止まったのは御見内



弓からハンドガンへ迅速な武器換装



ハンドガンを素早く抜き、構えた。



御見内はチラッと視線を送り、後ろから迫り来る奴隷達も気にしつつ



発砲へと転じた。



パン パァン パン パン パン



1人… 2人… 3人… 4人…



たちまち膝やスネが撃ち抜かれ



動きを殺され、跪(ひざまづ)いていく奴隷達



襲い来るプレッシャーを前に至って冷静な顔つきの御見内は精密射撃で奴等の脚を狙い撃ち、1人1人的確に行動力を潰していった。

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