第63話 迷宮

開かれたガラスの扉から刃渡り70センチもある業務用の氷ノコギリを手にした黒フードが一歩を踏み入れた。



黒フード「おまえ等 袋のネズミだ」



後ろにはスキンヘッドで全身タトゥーまみれな奴隷からピアスだらけな奴隷



拷問の痕が色濃い傷だらけな奴隷から人体改造の施術が成された奴隷



それに加え拷問器具を手にした解体人達まで集まり



続々と現れた奴等に完全、道は塞がれてしまった。



1 2 3 4 5…



数えるのを途中で止めた御見内



それ程の大人数だ…



メサイア「突破するったって…どうやってここを?」



御見内「抜け」



御見内がマカロフを抜き、身構えると



次いでメサイアもハンドガンを取り出し、身構えた。



中世ヨーロッパの槍コルセスコ、バルディッシュ(半月斧)



ジップガン、チャクラム(投擲円月刃)トンカチ、ナイフ、鍬、和弓と多種多様、よりどりみどりで持ち込まれ携帯された凶器の数々



御見内「メサイア 町民は殺さずにやれ」



メサイア「おぃ ふざけんな こんな修羅場でその注文は無理だろ こっちが生きて帰れるかどうかだぜ」



御見内がガラス越しで不気味ににやつく町民等に視線を向けた。



黒フード「逃がさねぇ~ 血祭りにあげちゃる」



その言葉で黒フードを直視



黒フードがにやついた瞬間



パァン 



ためらいも無く発砲され、黒フードの頭が吹き飛ばされた。



それからすぐに銃口の角度を変えた御見内がガラス越しから連続で発砲した。



パン パン パァン パン パン



ガラスが割れ、細かい破片と化して崩れ落ちる



数名の解体人の眉間や額が撃ち抜かれ、またチャクラム、ジップガン、弓などの投擲武器を携帯する町民等の肩や腕が撃ち抜かれていた。



御見内「こうやってやるんだよ」



御見内がマガジンを交換しながら口にする。



そして再び身構えるや



道を塞ぐ奴等がおののき



奴等が一斉に後退り始めた。



メサイア「俺は… そんな正確には当てられねぇーつ~の」



御見内「さぁー しりぞけ」



メサイア「そうだ おまえ等ぁ~ 道を開けろ」



2人がハンドガンで威嚇し、群を押しのけた。



そして死に絶えた黒フードや解体人の骸を跨ぎ、進む中



これ… 



頂いとくか…



御見内はある物に目を止め、それを拾い上げ、肩へと掛けた。



メサイア「オラァー 奴隷共 お通りだぜ 射殺されたくなければどけぇ~」



ジリジリと奴等の群が押し退けられ、3人は進んで行った。



殿方のペ○スコレクター ミス冴子のシークレットベースはここを右…



そんな怪しい看板が掲げられたT字路まで群れを押しのけ、差し迫ると



御見内「よしメサイア おまえが先導し 2人で先に行け」



御見内がメサイアの肩を叩き、口にした。



メサイア「おまえどうすんだよ?」



御見内「大丈夫 すぐに追いかけるから早く行け」



メサイア「分かった おい 行くぞ」



バイヴス「はい」



御見内「ゴーだ」



御見内がハンドガンで威嚇しながら町民等を足止めする中



掛け声と共に2人が移動した。



逃走を図った2人を追いかけようとバルディッシュを構える1人の町民が一歩前へ出た その時



どこ行くつもりだよ…



待てよ…



追走を許さぬ御見内の目が光り



バコン



飛びかかった御見内の膝部がその町民の顎を跳ね上げた。



バルディッシュを手にしたまま仰向けに倒れる寸前



今度は御見内によって力強く両手で押され、突き飛ばされた。



そして数人の町民等を巻き添えに倒れ込んだ群



その隙に御見内も2人の後を追いかけ、逃走を図った。



その数秒後… 将棋倒しで倒れた町民等も起き上がり、一斉に3人を追いかけはじめる。



ミッション



地獄のコーキュートスからの脱出、迫り来る敵の包囲網を突破し合流ポイントを目指せよ



迷路のように複雑に入り組む分岐した通路



その迷宮をメサイアを先頭に半田をおぶるバイヴスが矢印を頼りに進んで行った。



その後を追いかける御見内



その後ろから続々と足音が追いかけて来た。



メサイア「こっちだ」



右路へ左路へと進むメサイアとバイヴス



仄かにランタンに照らされた坑道を進んで行くと、2人の耳に前方から足音が聞こえて来た。



それと共に複数の人の気配が感じ取られた。



メサイアはすぐに足を止め、ハンドガンを身構えるや通路の角から現れた4人の町民達の姿



ウィィィイイイ



1人は刈刃を高速回転させた草刈り機を手にしていた。



その草刈り野郎が2人の発見と同時に目を血走らせ、襲いかかって来た。



無論 話し合いなど皆無



殺意以外の感情が欠落した狂気の廃人達だ…



メサイアは急接近してくる町民に警告無しに発砲へと転じた。



パァン パン パン パン



坑道に響き渡る発砲音



発砲の反動でメサイアの身体がよろけるも



4発中2発が命中、草刈り野郎の腕や脇に被弾させた。



ガリガリガリキィィィィー



銃弾を受け、よろけて倒れる町民がハンドルを乱すや、草刈り機の円刃がガリガリ壁を削り、火花を散らせた。



メサイアはすぐに後方のターゲットに照準を定めるや



そこには既に大型のブッシュナイフを振りかぶり襲い来る町民の姿が映っていた。



倒れた草刈り野郎を跨いで、その振り抜かれる直前にメサイアはまたもいち早くトリガーを引き



パァン



超至近距離から発砲させた。



胸部に被弾、町民は仰け反り、メサイアはそのままそいつの胸部を足蹴にした。



突き飛ばされた町民はすぐ背後から迫るトライデント(西洋の三叉槍)を手にした町民と接触



2人で転倒した。



やっぱこの状況で手加減なんて無理だぜ…



そんなの知るかよ… もう殺っちまえ…



メサイアがヤケクソと恐怖を織り交ぜた表面を浮かべ、再度マカロフを身構えるや



最後尾から牛刀包丁を構え、襲い来る町民に銃口を向けた。



メサイア「死ね コラぁ~」



そして銃撃した。



パァン パン



「がふっ」



腹部と喉に0距離に近い間からの発射



着弾された町民は牛刀包丁を握ったまま両膝を着け、吐血、そのままくたばって倒れた。



メサイア「これからもっともっと来るぞ 捕まれば俺達は100%処刑されっかんな 離れるなよ」



バイヴス「はい…」



すると後ろから足音が近づき、2人が振り返ると角から御見内が現れた。



バイヴス「ハサウェイさん」



御見内「止まるな 走れ ゴーゴーゴーゴー」



その後ろからドタドタ聞こえて来る複数の足音



バイヴス「あやややや…」



御見内「早く走れ」



メサイア「ファック…」



御見内の一喝により再び走り出した2人



3人が通過する度 ランタンが微かに揺れ、蝋燭の火も微かに揺れる。



その数秒後 十数もの足音と火の光に照らされ連なる人影が壁に映り、ランタンが激しく揺れ、蝋燭も消えそうな程激しく揺れていた。



先頭をメサイア、次いで半田をおぶるバイヴス、しんがりに御見内



ラビリンスを必死な形相で出口を目指す3人の目に…



ようやく出口の階段が見えてきた。



メサイア「見えた 出口だ 階段だぞ」

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