第57話 居所

汚泥脱臭 焼却設備室 10時46分



ガタン



特殊ガラスケースをバーナーで炙る解体人が閉まる扉の音に振り返った



寸間



髪の毛が鷲掴みにされた



御見内「随分と悪趣味な遊びしてんじゃねえか… 俺も混ぜてくれよ」



ゴン



解体人は特殊ガラスに顔面が強打され



それから後ろへと投げ捨てられた。



バーナーを着火させたまま後方に飛ばされ、身体を壁に打ちつけた瞬間



既に接近した御見内が身体をクルッと半転



バコッ



上段後ろ廻し蹴りが解体人の顔面にブチかまされた。



靴底と壁に挟まれ、一発でノックアウトされた解体人の意識は消失



足を離すと



点火するバーナーを握ったまま解体人はずり落ちた。



気絶し、倒れた解体人の衣服に噴射火が当たり、着火、服が燃え始める…



電気ウナギの拷問で遊ぶ黒フードが突然の乱入者を見るや否や…



「なんだ貴様ぁー」



懐からフィリピン産のチープな作りのジップガン(素人手作り銃)が取り出され、それが御見内へと向けられる…と同時に



御見内によりネズミ拷問で使用された特殊ガラスが蹴っぽられ



黒フードに直撃



黒フードはバランスを狂わせ、よろけた



間髪入れずに踏み込んだ御見内が黒フードのフードをはぎ取り、髪の毛を掴み、水槽から町民の両足を素早く抜き



御見内「フッ 電気ウナギってアイデアは中々だが…悪趣味にはかわりない…そんなにウナギが好きなら…おまえがキスでもしてろ」



水槽に頭を押し付け、そのまま足で踏みつけた。



バシャ バシャ



雫が飛散 また…



「ごぼぉ がぼぉ」



ゴボゴボと気泡が浮き上がり、暴れる黒フード



すると



水中で威嚇したウナギ達から一挙に放電された



窒息とウナギショックで黒フードの身体が小刻みに揺すられる。



手に持つジップガンは落ち、水槽から飛び散る雫



水中でもがき、暴れる度、絶え間なく送電される電撃



それを受ける黒フードの身体はより一層小刻みに震えていった。



「ぎぁぁぁぁぁ」



既に衣服全域に燃え広がった解体人が火ダルマで目を覚ました。



床をのたうち 全身に広がる火を消そうにも水でもかけない限り自力で消火するのは不可能



ゴロゴロと床を転がり、絶叫をあげながら焼き肉と化していく解体人



御見内は勝手に焼死していくさまを動じず、冷徹なまなこで見据えながら水槽で溺れゆく黒フードへの殺意も緩める事はなかった。



感電してるのが一目瞭然な黒フードは激しく痙攣のように身体を震わせ



次第にその震えが衰微していった。



また火達磨の解体人からも叫び声が止んでいき、微動だにしなくなる火に包まれし体躯



解体人は完全に沈黙しそのまま絶命していった。



また後を追うように数秒後には電撃と窒息の苦しみを受ける黒フードの震えも減少



ピクリともしなくなり、身体の反応が停止



黒フードも溺死で逝去した。



それを確認した御見内は押さえつける足を離し、町民等の縄の解除にあたった。



ネズミ拷問を受ける町民の腹は無数の引っ掻き傷はあるものの、致命傷には至らない



軽傷と言える程度だった



手足が自由になり、命を救ってくれた御見内に町民が口にする



「どなたか存知ませんが ありがとう ホントにありがとうございます…」



その言葉を聞いた御見内は驚きの表情を見せた。



この人…廃人化してない…まだ正気があるのか…



御見内「話せるんですか?」



「え? えぇ…」



御見内「良かった…マインドコントロールされてないようですね…まともに喋れる方など初めて見たもので」



「はは 何とか精神はまだ保ててます…」



もしや…



御見内はウナギ拷問を受ける町民にも目を向けた



だが…



こっちの町民の方は駄目だ…



既に目が死んでいた…



「あちらさんは残念です…しかたありません 手を変え品を代え…連日連夜の拷問に耐えられる人なんてそうはいません…」



御見内はゆっくり廃人化する町民へと近づき、その町民の手足も自由にした。



「私達を助けに来て頂けたのですか?」



御見内「はい……っと言い所ですが実は違います」



「そうですか… もう…何ヶ月と陽の光を見ていません…もう 二度と浴びれる事は無いんですかね…」



御見内「いや…そんな事は無い これからザクトって言う治安部隊が助けに来ます 正義の味方達が助けに来ますから… だから希望もその正気も損なわずに待ってて下さい」



「嬉しい言葉です 分かりました その言葉を信じます」



そして御見内は死亡した2つの死体と2人の町民等に視線を向け、扉を開いた。



御見内「ここで部隊が到着するまでジッと隠れてて下さい 内鍵をすれば安全ですから」



そして外へ出ようとした その時



「すいません…」



御見内が踏みとどまるや



「もしかしてですが あなたレジスタンスの方じゃないですか?」



御見内「え?」



「違ってたらすいません…」



突然妙な事を口にした町民に再び扉を閉めた御見内



御見内「えぇ でも何故それを…?」



「いや…黒いころもを羽織ってるのに…私達を助けてくれました 奴等をやっつけてくれたのでこの組織の者では無いなと思いまして」



御見内「えぇ その通りです 自分はレジスタンスの人間でここに潜入でやってきました」



「潜入?って事はマスラさんのお仲間なんですね」



マスラ…? それはコードネーム?



本名…?



半田の事か…?



御見内「マスラ? それはここのコードネームですか?もしかしてその人半田って名前ではなかったですか?」



「すいません そこまでは…でもそのマスラって方に打ち明けられたんです 俺はレジスタンスの者でここの情報を探りに潜入でやって来たと」



御見内は町民から思わぬ情報を入手し、目の色を変えた。



御見内「もしかして 腕に鎖型の入れ墨なんかありませんでしたか?」



「入れ墨? あぁ ありました 右の手首に」



やはり…



そいつは間違いない…半田だ…



御見内「実は密偵と一緒にその人物を探しにここに来たんです その人物が今どこにいるか分かりませんか?」



「すいません 周りの目もあったので詳しい話しは出来なくて 今どこにいるかは分かりません…」



御見内「ちなみにその会話はいつ頃しましたか?」



「つい最近です 3日か4日程前でしょうかね… あ!ちょっと待って下さい…思い出しました…」



何かを思い出した表情で町民が話しを続けた。



音信が途絶えた日か…



「……そう言えば地下3階の監禁場所がどうとか…これから調べるとか言ってました」



御見内「地下ですか?」



「はい…」



地下3階か…



御見内に確信めいた直感が走った。



恐らく半田さんはそこで音信が途絶えた…



半田は…



そこにいる…



御見内は半田の居場所を掴んだ

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