第53話 材料

素知らぬ顔で正面入口へと近づく2人



ゲート前にはロシア製サブマシンガンPPー90を所持した黒フードが2人門番となり、その周りには鈍器を手にした10名程の裸体の町民達がうろついていた。



御見内「入口はここだけか?」



メサイア「だから知らねぇーて」



御見内達がそのまま近づいて行くと



「止まれ なにようだ?」



メサイア「ちょっとバスタードを一体使用したいんだけど」



「何も聞いてない どこの者だ?」



メサイア「サンクチュアリーから来たメサイア こっちはハサウェイ 明神さんには許可貰ってる筈なんだが」



「いや 何も聞いてねぇ」



メサイア「んな訳ねぇーて 確認してくれよ」



そしてメサイアが一歩踏み出すや



「動くんじゃねぇ」



2つの銃口がメサイアへと向けられ、周りの町民達の脚光を浴びた。



メサイア「おいおい 仲間に向ける事ねぇーべ」



「パスカードを見せろ」



メサイア「パスカード?」



「ここに来るなら必ずカードを渡されてる筈だ 見せろ」



マズい…



御見内は懐に隠すマカロフと打根を同時に握りしめた。



12人か…



目立ち過ぎるが… 



殺るほかないか…



御見内が殺意のこもる目へと変化させた



その時だ



メサイア「あ あ~ もしかしてこれの事か」



メサイアがいきなり懐から通行証らしきカードを取り出し、それを黒フードに提示した。



すると



それを受け取った黒フードがカードを確認、銃口が下げられた。



「本物のようだ いいだろう さっさと通れ」



メサイア「ありがたいね あ!そうそう 今回ここ来るの初めてで バスタードのレンタルは何処ですんの?」



「第4ラボに教授がいるから そこで頼め」



黒フードがセキュリティーカードらしき物をかざすや扉が開かれた



メサイア「あいよ センキュー」



2人は進み、中に入る寸前



メサイア「あ!そのラボって何処?」



「建物の一番奥だ さっさと行けぇ シバくぞ」



メサイア「了解 ご親切にどうも」



そして2人は建物へと入り込んだ



御見内「どうゆう事だ…いつの間にそんな物を?」



メサイア「これかぁ これはさっき殺った奴のだよ キラリと見えてな チョメってきたんだ」



御見内「おまえ…やっぱ使えるな…」



メサイア「さぁ 地獄に潜入成功させたぞ どうするよ?」



御見内「まずは人探しだ」



そして御見内が目の前にあるもう1つの中扉を開いた時



御見内「う…」



強烈な臭いに御見内の顔が歪み



メサイアも腕で鼻を押さえつけた。



突然凄まじい悪臭が2人を襲ったのだ



メサイア「クセ…なんだこの臭い…」



吐き気を催す程の激悪臭



血の臭い…肉の腐った臭いが混じる…



鼻がバカになりそうな程の腐敗臭が充満し漂っていた。



メサイア「病院より臭ぇぞ やっぱここはマトモじゃねぇよ」



御見内「じき鼻も慣れる 行くぞ」



御見内がそのまま突き進んで行った。



メサイア「これ…慣れるとかそういったレベルじゃねえから ひん曲がりそうだ…いやもげそうだ」



鼻を押さえたままあとからついて行くメサイア



所々壁にはバケツでぶちまけたような血糊が染まり、ブンブンとそこら中にハエが飛び回っている。



入館そうそう劣悪過ぎる環境が2人をお出向かいし、そんな中、御見内達は廊下を直進して行った。



そして数メートル程直進した時だ



ある声が聞こえてきた



「うぎぁぁぁああ もう殺して下さい お願い ぎぁああああ」



「キァァアアア~ やめ…ギャァァァア~」



どこからともなく聞こえて来る絶叫



それも1人や2人じゃない…



いくつもの苦痛に満ちた叫び声が2人の耳に届いてきた。



メサイア「きっと拷問されてる奴の声だ…っかしなんて嫌な声だ 恐らくこの先に複数の拷問部屋があんだろ」



すると



御見内がその声のする方に進み出した。



メサイア「お…おい…」



「くきゃゃららあぁぁ~ なんでもしますから…ぎゃやゃ やめへ~」



幾重にも塗りたぐられ血に染まった廊下を進み



腹の底から吐き出される死に際の叫喚が徐々に近づいて来る廊下を歩いて行く



その途中で



御見内とメサイアはある光景を目撃する事となる



御見内がふと数センチ開かれたスライド式の扉に目を留め



その扉へ近づき、ゆっくりと扉を開いた。



そこは真っ暗な部屋



だが その瞬間



「ぅぅう~」



微かな呻き声が部屋の中から聞こえてきた。



メサイアも暗闇へと覗き



メサイア「これ何の声だ? ゾンビでも飼ってんのか?」



そして照明スイッチを手探りし



御見内がスイッチを入れるや



そこには



天井に吊される多数の人々が照明に映し出された。



メサイア「なんだこれ……」



御見内の表情は険相へと変わり、目ん玉をひんむくメサイアは口を開けたまま唖然とさせた。



精肉工場の吊された肉塊を思わせる、ドデカい鉤爪に両掌を貫かれ、吊された人間の姿



それが均等に奥までぎっしりと整列され、ぶら下がっていた。



「ぅ ぅうう…」



メサイア「ありえねぇ~ まるで食肉工場じゃねえかよ しかも…みんなまだ生きてやがるぞ」



御見内「あぁ 見れば分かる」



微かに掠れた呻き声



そう…吊された人間は皆まだ生きているのだ…



口には変な物が被され、生かさず殺さずの虫の息な人々



ある者は太股から切り落とされ、出血多量で死なぬよう処置が施され、包帯が巻かれていたり



またある者は切断され火炙りで火傷の痕が見られる



またある者は既に四肢が切断され胴体から串刺しにされながらもまだ生かされていた。



御見内「口に付けられてるあれは何だ?」



メサイア「多分だが あれは舌噛んで死なせない為の物だろ」



御見内「自殺も許さない…か…」



メサイア「あぁ こいつらもしかすると継ぎ接ぎ人形の部品に使われてる材料なのかもしれないな」



御見内「この人達が材料に使われてるのか?」



メサイア「分からんけど…」



御見内「ハッキリしろよ」



メサイア「おい 俺はここのガイドじゃねぇ~ぞ しかもここに来るのはおまえと同じヴァージンなんだから んな事知る訳ねぇーべ 多分だが手足切り落とされて、尚かつ生かされてる所からして間違いないとは思うけどな」



こんな酷たらしい光景いまだかつて見た事が無い…



平然と行われている苛虐行為



まさに悪魔の所行に等しい許されぬこの行為…



怒りが込み上げてきた御見内のこめかみに一筋の青筋が浮き出た



御見内「こんな酷いまねしてるクソ野郎は何処のどいつだ?」



メサイア「マル兄弟だろ」



御見内「例のサディスティックな双子のブタ野郎って奴か…」



メサイア「それと冴子さんだ まぁ このまま奥に進んで行けば噂の当人達と感激のご対面が果たせるぜ この絶叫からして 今 拷問と解体のお楽しみ中だろうに」



「ぐぎぁあああ がぁあああ~」



鳴り止まぬ苦痛に満ちた絶叫の嵐が聞こえてくる廊下へ



御見内が目を向け、拳を強く握りしめた。



すると ガシッと御見内の肩が掴まれた。



メサイア「おいおい 今のはジョークだよ 馬鹿な事は考えるな とっ捕まったら2人共終わりだからな 止めてくれよ…」



いや…悪いけど今決めたよ…



最初に死んで貰う幹部は…



最初のターゲットは…



マル兄弟にする…



御見内がメサイアの手を振り払い、突き進もうとする寸前にメサイアが口にした。



メサイア「ハサウェイ ちっと待て あれ見てみろよ」



メサイアが指差す先にはぶら下がる1人の女性が何かを訴えかけようとしてるのが見えた。



御見内はすぐさま中へと入り込み、その町民へと近寄って行く



メサイア「お…おい… まじ?こん中入るの…」



躊躇するも御見内に続いてメサイアも中へと一歩を踏み入れた。



その女性の前に立った御見内



30代前半らしき女性…



片腕、片足は既に切断され、欠損している状態



その女性は口をパクパクと動かし、何かを言おうとしてるのだが言葉が出せない様子だ



御見内は辺りを見渡し、椅子の様な物を探した。



御見内「この人を下ろしたい 手伝え」



メサイア「余計な事すんな こんな所見られたらどうすんだ…」



御見内「このままにはしておけない」



メサイア「ほっとけ もうここの者はどうせ助からない」



御見内「御託並べてねぇーで いいから下ろすのを手伝えよ」



メサイア「はぁー わぁーたわぁーたよ」



呆れ顔の溜め息を漏らすメサイアが脚を掴み、抑えた。



隅に置かれた高台を見つけ、御見内がそれに登るや掌に突き刺された鉤爪を抜き取った。



御見内「ちゃんと脚持ってろよ」



メサイア「やってるよ」



御見内により鉤爪が引き抜かれ、女性が床に下ろされ、寝かされた



風呂など入れられて無い身体、強烈な悪臭が漂い、また身体中に血痕がついたままの横たわる女性を厳しい表情で見下ろし、御見内はしゃがみ込んだ



髪は伸び放題で乱れに乱れ



また



この世のものとは思えぬ凄惨な拷問と解体を繰り返し受けてきたのだろう…



この若さで髪の大半は既に白髪へと変化していた。



その女性が目玉をギョロっと御見内へ向け口をパクパクさせるのだが



やはり言葉が出せない様子だ



自殺防止の物も口に装着されていない



まさか…



不審に思った御見内がゆっくりとその女性の口を開き、2人で覗き込むや



御見内は途端に眉をしかめた。



同時にメサイアの目が大きく見開かれた



メサイア「まじかよ……どうりで喋れない訳だ… 舌を引き抜かれてやがる」

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