魔王の娘を嫁にした後のハーレムなお話~世界最強の勇者は嫁の数だけ強くなるそうです~

ナギ@にわか

一話『魔王を助けると褐色ロリが貰えます』

 僕は 水崎 時雨。身長は172cmで、顔が可愛いと言われる。……不本意だけど。

 まあ、極々普通の高校一年生だ。


 ……でも、そんな僕が異世界に召喚されてしまった。


 家で普通に寝ていたはずなのに。目が覚めたら、武装した人達に囲まれていたのだ。

 魔王を倒して? お金と武器は支給するから? 倒したら家に返してくれる? 嘘つけ、その欲に濁った目を何とかしてから言え。


 でも、やらなきゃ殺されそうな気がしたから、仕方なく1人旅をして強くなった。平和な世界の方が生きるのにもいいし。


 そして、今僕が居る場所は、ラスボスの居る魔王城。僕は、人々の想いを胸に最終決戦へ……!


 ……ではなく。


「勇者……我が娘をどうするつもりだ?」


「……それはこっちが聞きたいんだけどね。さっきから離れてくれないんだよ、この子。ねえ、離れてくれない?」


 さっきから、魔族の美少女に泣きつかれてます。


「やです! お父さんを助けてくれるまで離しません!」


「こんな感じなんだけど……何? 病気?」


「う、うむ、まあ――」


 魔王は病を患った状態で体を酷使したせいで死にかけらしい。普通なら喜ぶ所なんだけど、隣で泣いてる女の子が気になる。


 美しい銀髪に、褐色の肌。

 身長は140cm弱くらいで、顔も可愛い。そしてお父さんを助けるために人間の僕を頼って来た……魔族。だから? 殺せるわけないじゃん。


 しかも、変装して入った魔族の国は平和で良い所だったし、人間が一方的に悪と断じてるみたいだ。となると、倒してもいい事無さそうだし、普通に会話してみるのもいいんじゃない?


「ちなみに、どのくらいで死ぬの?」


「そうだな……後、数十分だ」


「はぁ!? ちょっ、それは聞いてないって!」


 どうする? 助ける方法はある。ただ、一応は悪と言われている魔王を助けていいのか?


 僕が考え込んでいると、褐色ロリが引っ張ってくる。


「お願いしますっ…… わたしの全てを捧げますから! だからっ、お父さんだけは……助けてくださいっ」


「……ああもう! 泣くなって! 分かった、助けるよ!」


 美少女を泣かせて平然としていられるか?

 ――そんなの、無理に決まってるだろ!


「普通の回復魔法じゃ治せないんだよな?」


「魂が欠損している。例え勇者でも――」


「問題ない。ただ、今から使うスキルは僕が死ぬリスクがある。もし成功したら、報酬は弾んでくれよ?」


「……よかろう。しかし、どうしてそこまで?」


「……この子が僕の好みだったから。あんたの娘めっちゃ可愛いぞちくしょう!」


 ……僕はロリコンじゃない、いいね?

 世界のシステムとして存在する、ステータスとスキル。Lvが上がれは強くなるし、スキルを取得すると知識が手に入って、急に出来るようになる。

 ゲームかっての。


 余りあるスキルポイントを使い、あるスキルを取得。


『魂の譲渡』


 スキルポイント

 残り : 610 → 110


 500は多くないかな? まあいいけど。というか、名前からしてやばいよね。


 説明を見ると、魂を譲渡するってしか書いてない。成功率は1%――スキルの確率低すぎ!?

 失敗したら、魂の譲渡を終えて死ぬとか!


 男は度胸だ。


 対象は魔王にして、発動。


 ………

 ……………

 …………………


「……うん? 何も起こらな――」


【Lv99からLv1に低下。成長限界が無くなり、ステータスの成長率が――】


 そこで僕の意識は、プツリと途切れた。


 ◇・◆


 ん? 生きてるっぽい?


 目をゆっくり開ける。明るいという事は、朝か昼。魔王と話していたのは夕方なので、少なくとも1日は経っているだろう。


「知らない天井だ……」


 ごめん、やりたかっただけ。

 右手を持ち上げると、傷一つない手が現れた。回復魔法で治しているから、跡が残らないんだ。


 次は左手を――


「んぅ……」


「……え?」


 左手が動かないと思ったら、裸の女の子が抱きついてました。……おや?


 その顔には見覚えがある。魔王の娘だ。

 シミ1つない綺麗な肌で、膨らみかけの胸が……って、どういう状況?


「やわらかい……でも、起こさないとな」


 右手で肩を揺さぶると、すぐに目を覚ました。そして、何も隠さずに起き上がってしまう。


「ふぁ〜……おはよう、ございます……」


「前! 前を隠して!」


「ふぇ? ……あっ、ご、こめんなさい!」


「いや、うん、僕はいいんだけどね?」


 理性の方が非常に危ない。

 そう思っていると、シーツで体を隠した女の子がチラチラとこっちを見てくるので、首を傾げてしまう。


「あの、わたしはリア=ステファノス、です。ご主人様のお名前を教えてもらえますか?」


「……今、なんて呼んだの?」


「? ……ご主人様、です」


 一旦落ち着こう。

 聞きたい事は滅茶苦茶あるけど、まずはこれだ。


「僕はシグレ。魔王は生きてる?」


「はい! でも、いまは寝てるかもです」


 ニコニコと嬉しそうに笑う。

 どうしよう、この子可愛すぎる。惚れそう。


「それは良かった。……で、僕がご主人様って何?」


「わたし、ご主人様のどれいになります!」


「……それ、笑顔で言うことじゃないと思うんだけど。とりあえず、シグレって呼んでいいよ?」


「じゃあ、シグレさま?」


「うーん、もうちょい」


 この後も粘って、最終的にはシグレくん。


「リアさんは「リアです」……リア、奴隷と言っても首輪は付けてないよね?」


「わたしの全てを捧げるという意味で……」


 確かに、そんな事を言っていた気も。とはいえ、女の子にそんな事させられないかな。


「別に、無理しなくていいんだよ? 対価なら魔王から貰うし、リアがそこまでする必要は無い」


「でも、離れたら二人とも死んじゃいます……」


「へ?」


 リアによると、

 僕が『魂の譲渡』を失敗して、魔王に譲渡した僕は死ぬはずだった。けど、リアが僕を掴んでいたせいで、魂が少し欠けてしまった。ただ、お互いの魂を共鳴させて何とか生きてる。


 一定時間、あるいは一定距離を離れると、二人揃って死んでしまうらしい。魂が補えないせいで。


「ご、ごめん! 僕のせいで……えっ?」


 僕が頭を下げる前に、リアが抱き着いてきた。


「いいんです。シグレくんの心、すごくあったかくて、心地よくて……いろんな想いが伝わってきます」


「……本当だ」


 お父さんが大好きだとか。


 僕が生きてて良かっただとか。


 可愛いって思われたのが嬉しいだとか……ん?


「あ、あのさ……僕が何を考えてるのか分かるって事は、さっきから考えてる事も……」


 考えるな、考えるな!

 ――リアって凄く柔らかいな。ずっとこうしていたいくらいに。髪も綺麗だし、肌も……


「……き、気持ち悪いよね」


「そんなことは――」


 ――わたしもずっとこうしていたいです……


「「………」」


 無言で見つめ合う僕達。抱き着く手にも力が入っているし、顔も真っ赤。僕も赤くなっているだろう。


「ふ、服、着ないとです……」


「あ、うん! 後ろ向いてるね。……あれ? そういえば、どうして裸?」


「は、裸じゃないと、寝れないんです……」


「そ、そうなんだ……」


 ――触れ合いたかったなんて言えません!


「はぅ……」


 残念ながら、嘘はつけない。リアにそう思われるのは嬉しいけど、これも伝わってるんだろうなぁ。

 ……というか、離れちゃ駄目って、トイレとかお風呂とか、寝る時とか、どうするの?


「着替え、終わりました。……お手洗いは、扉の前まで来てもらわないとですし、お風呂と寝る時は一緒じゃないと、です」


「……嫌じゃない?」


「わたしは平気ですけど……シグレくんは?」


「僕は、大丈夫かな」


 リアには悪いけど、一緒に寝るのとか、お風呂に入るのとか凄く楽しみで――はっ!?


「……は、はずかしいです」


「き、危険だね、これ」


 常に近くで過ごさなきゃいけないなんて、リアからしたら苦痛以外の何ものでもないだろう。

 何とかして解放してあげたい。


「シグレく――」


 ――わたしはシグレくんのこと好きです。一目惚れ、なんでしょうか……?


「ち、違うんです……」


 ――シグレくんかっこいいです……


「と、止まらな――」


 ――ギューッてしてくれないでしょうか……?


「まっ――」


 ――聞こえてるんですよね……?


「ごめんなさい……」


「……いいよ」


 思わずリアを抱き寄せてしまった。こんな可愛いおねだりに逆らえるはずがない。


「シグレくん……」


「――ふむ、事情は分かった」


「「っっ!?」」


 一瞬で離れると、扉が開いて、そこから魔王の姿が。


「あれ? 若返ってる?」


「そのようだ。勇者……いや、シグレの魂が原因であろう。レベルも99まで上がっている」


 50代だった魔王の見た目が、20代後半の若々しいイケメンになっている。


「僕はどこか変わってる?」


「……髪の毛が、銀のような灰色になってますね」


「えっ」


「瞳は右目だけリアと同じ黄金色だな」


「ふぁっ」


 それって……凄く、厨二病スタイルなのでは? 魂云々が見た目にも影響あるなんて!


「いや、ですか……?」


「あ、違うよ? 驚いただけだから」


 不安そうに見てくるので、誤解を解く。実際、お揃いみたいでちょっと嬉しくもあるし。


「えへへ……」


「……シグレは魔王にするしかないな」


「待って、どうしてそうなるの!?」


「リアと離れられないのだ、一生を共にするしかあるまい? それに、お前の記憶は寝ている間に見たのでな。リアを任せるに値する人間だ」


 リア、嬉しそう。何でこんなに好かれてるの? 魔王の言い分は分かったけど、僕が次の魔王って……


「わたしも、シグレくんの記憶見ちゃいました。日本? で刀を振ってる所とかも……」


 ――がんばるシグレくん、かっこよくて……


「……そういう事ね」


 やけに好感度が高いと思えば、一目惚れというより、記憶を覗いたからだったのか。しかも、それで好かれるっていうのは嬉しい。


「リアと魔王は僕の事を16年分知ってて、僕だけリアの事を知らないんだ……」


「我はどうでもいいと」


「はっはっは、なんの事かな?」


 ……僕は弱くなってるのかな? ステータスを開いてみよっか。気になるし。


 ――――――――――――――――――――


 名前 : 水崎 時雨 種族 : 異世界人? (魔族?)


 レベル : 1

 魔力 : 131/131

 筋力 : 37

 耐久 : 34

 敏捷 : 84

 技巧 : 65

 魔技 : 57

 精神 : 140

 SOL : 92


 スキル


『言語理解』『経験値倍化』『成長率倍化』

『成長限界突破』『スキルポイント倍化』


 特殊スキル


『召喚 : 刀』『無限収納』


 スキルポイント : 112

 ――――――――――――――――――――


「あれ?」


「わぁ、すごく強いですね……でも、これなんですか?」


「SOL……我も知らんぞ」


「うん、それも気になるんだけどさ、スキル増えてるし、レベル1しては高くない? 前は高くても20〜30とかだったんだけど?」


 初めて見たやつが4つもある。『成長限界突破』は、レベルの上限が無くなるのかな?

 いやー、相変わらず精神高い。


「しかも、種族に『?』付いちゃってるし、(魔族)って書いてるんだけど?」


「いっしょですねっ」


「守りたい、この笑顔……!」


「……守るにしても、レベル20は欲しい所だな。だが、リアから離れられないのだったか……」


 最後の、「リアから離れられない」だけ聞くと、僕が駄々を捏ねる子供みたいだね。

 でも、レベルは上げたいかな。


「シグレくん、わたしも手伝いますから」


「……まあ、僕より強いし」


 平均で400くらいある。レベルは17で、やっぱりSOLがあった。


「ん? 僕と同じスキルがあるみたいだけど……あ、もしかして、一部スキルも共有?」


「みたい、ですね……」


 リアが急に静かになった。魔王と2人で首を傾げていたが、リアの思考で理解する。


 ――お揃いです……えへへ。


 この子可愛すぎるんだけど。嫁にしたい。

 すると、今度は赤くなって……あ、嫁にしたいとか可愛いって思ったからか。んー、上手くコントロール出来ないものかな。


 ……おや? 扉をノックされたぞ。


「魔王様、よろしいでしょうか?」


「入れ」


 威厳ある声で応じた魔王。入ってきたのは、20代後半くらいの美人メイド。角があるけど。

 そういえば、リアは角ないんだよね。あっても無くても可愛いと思うけどさ。


「……シグレ様をリア様の婚約者として発表するとの事ですが、よろしいのですか?」


「「えぇ!?」」


 これには2人揃って驚く。本人達が聞いていない婚約とか、真面目に良くないだろ。

 ……そもそも、だ。


「あのさ、そうなると僕は人間と敵対する事ならないかな? 知り合いを殺すのとか嫌だよ?」


「安心しろ。どうせ人間共には伝わらん。それに、帰る場所も無いのだろう?」


「うっ、確かに……」


 一心不乱に強くなることだけを考えていたから、そこまで親しい人も居ないし、元の世界にも帰れない。

 送還出来ないのは旅の途中で知った。遺跡で過去の勇者が書いた日記を見つけたのだ。もし役目を終えれば、殺される運命らしい。


 ここまで考えた所で、手に柔らかい感触が。リアが僕の手を握っていたみたい。あんまりこういう事は考えないようにしないと。


「そうだなぁ……リアは婚約とか嫌じゃない? 僕は、リアとなら良いと思ってるけど」


「は、はい……いやじゃないですっ」


 ――すごく嬉しい、です!


「ふっ、人間の希望である勇者が我ら魔族と……実に面白いではないか」


「魔王様がそう仰るのならば」


「僕としては、お風呂とか寝る時の方が問題なんだけど。どのくらい離れて大丈夫なのかな?」


 メイドさんは分かってないようだけど、リアと魔王は真剣な表情になる。まあ、これを間違うと2人死ぬ訳だからね。仕方ないね。


「えっと、1mくらい離れたら、何かが抜けていく? 感じがしたんです……」


「え、1mって……」


 寝る時、同じベッドじゃないと無理じゃん。大歓迎だけど、魔王は許してくれるかな?


「我の命を救ったのだ、その程度は許す」


「……それは良かった。魔王って呼んでたけどさ、本名何? というか、敬語で話した方がいい?」


「そのままで構わん。名は、ガロ=ステファノスだ」


 かっこいい名前だね。……今更ではあるけど、メイドさん、僕の事を「シグレ様」って呼ばなかった?


「ねえガロ、この城での僕は、どういう扱い?」


「リアと同じようなものだ」


「魔王の娘と?」


「なんだ、不満か?」


「いや、過剰過ぎる気がして……」


 いくら魔王を助けたとは言っても、人間で勇者だし、あまりいい気分にはならないと思う。

 でも、メイドさんはそうでもない様子。


「そのような事はございません。敵と認識していた魔王様に対し、命を賭けて助けて頂いたのです。それを、人間だからと言うような恥知らずはここには居りません。リア様の問題はあるようですが、本人がお喜びならそれでよろしいかと」


「そうで……なんだ。あんまり否定するとガロを軽視してるみたいになるから、素直に受け取るよ」


 メイドさんの雰囲気につられて、「そうですか」と言いそうになった。ガロは呼び捨てなのに、使用人は敬語とかおかしいよね。


「……では、別の者がシグレ様のお召し物を準備致しますので、少々お待ち下さい」


「あ、うん……うん? お召し物……」


 そこで初めて自分の体を見る。するとどうだろう、そこには上半身裸の自分が居るではないか。


「……お願いします」


「なんだ、気づいていなかったのか?」


「そっとしておいて……」


 意識していないと、恥ずかしいんだよね。

 ……そっか、この格好でメイドさんやリアと話してたのか。そっか、こんな……死にたい。


 ――わたしは、見れて嬉しいのに……


「……あっ」


「一応、ありがとう……かな?」


 というわけで、勇者が魔王を助けたら、褐色ロリのお嫁さんが出来ました。

 ちゃんちゃ――まだ終わらないからね!?

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