悪魔になんかなりたくないっ!②【悪魔達の連休】
初夢なすび
第1話 連休前日
五稜郭の桜が満開になりそうになった五月の初め。
だんだん暖かく春らしくなって頃になってくるとワクワクしてくるイベントがある。
「明日からGWです。楽しむのもいいですが宿題もやってきてくださいね。それでは起立、礼。さようなら」
さようなら、とクラス全員で挨拶した。
皆がランドセルを背負って昇降口や部活に向かう中で私、
「姉さん、俺のこと忘れないでね」
「わかってるよ」
始業式の次の日から私の双子の弟となった
コイツが双子の弟になったのは私が普通の人間から悪魔になってしまったから。
最初に聞いたら驚くけど好きで悪魔になった訳じゃない。
本当は堕天使のライトが悪魔になる予定だったのを私が悪魔になる儀式で邪魔をしたせいで代わりに私が悪魔になってしまった。
そんな私をライトは『お前を上級悪魔として魔王様に献上させて自分も悪魔になる』っていう計画を立てて私を本物の悪魔にさせるつもりだけど私は絶対に嫌だ!
私の力を狙って悪魔が襲ってくることがあるのでお目付けとして傍にいるためにライトは私の双子の弟として私以外の皆の記憶を書き換えた。
そんな生活になってから一ヶ月が経とうとしている。
だんだん慣れてきた自分が怖くなってきた。
堕天使との生活と自分が悪魔になったって自覚し始めた事に。
一ヶ月前くらい前に私は悪魔の黒い翼が背中から生えてちょっとだけだけど空を飛んだ。
こんな事があったので『自分は悪魔になってしまった』と自覚するようになってしまった。
人間に戻れるなら今すぐに戻りたいけど、それはライトが許さないので仕方なくこうしている。
人間に戻れる方法があれば今すぐ聞きたいくらい。
「姉さん今日は借りるの?」
「少し見てから決めるよ」
「俺は入り口で待ってるよ」
「わかった」
この堕天使は私との会話を聞いている限りだと『素直そうな男子でさっきまでの説明がありえない!』と思うかもしれない。
これは本心じゃない。
私と他の悪魔に対しては全然違う本性を出す。
今は私と二人っきりだけど学校や人が多い所は誰が見ているかわからないのであえて本心じゃないしゃべり方をしているらしい。
図書館に入ってすぐにカウンターでバーコードを読み取って元の場所に返した。
返してすぐに近くにある好きな出版社の文庫コーナーの方を見た。
気になる本は……無い。
『スクール浄化同好会』の最新刊は先月発売したばかりなのであと数ヶ月は待つことになる。
せっかくの連休だから気になる本数冊借りて読もうとおもっていたけど諦めて家に帰ろう。
図書館を出るとライトが窓辺に立ちながら待っていた。
「早かったね」
「借りたい本が無かったからね。ありがとう待っててくれて」
「これくらい待つよ。俺にとって……」
ライトが話しながら私に近づいてきた。
夕日をバックにして近づくライトは絵になる。
学年関係なく多くの女子達から告白される理由にも納得する。
ライトが耳元で囁いた。
「魔王様に献上させる大事な悪魔だからな」
……聞きましたか?
そう、これがライトの本心です。
ライトにとって私はある意味大切にされている。
だけどそれは自分のためであって決して私のことを気遣ってはいない。
「さぁ帰ろう、姉さん」
「……うん」
この堕天使と一緒に暮らし始めてからも一ヶ月が経つけど、いつまで続くんだろうと思ってしまう。
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