止まった時間

@saoriiiiii555

プロローグ

ジメジメとした空気が身体にまとわりつき、まるで何かにつきまとわれているような、雨上がりの6月18日。

わたしは初めて彼の自宅に行く。


最後に会ったのはいつだろうか。大切な思い出なのに、意識的に覚えようとしないと、大切な最後の日付すら覚えられないから、もう日にちなんて関係のない世界に行ってみたい。そんなことを考えながら、マンションの周りをグルグルと回っていた。


何を考えてどうやって彼の住む部屋までたどり着いたのか、部屋の中で彼の母親と何を喋ったのか、最後はどういう風に部屋を出たのか、全く覚えていないけど、覚えていることは、彼の部屋には真っ赤なギターといつも吸っていたタバコが何個も置いてあったことと、白い祭壇に彼の遺影が飾ってあったこと。


彼は一週間前に死んでしまったことを、初めて実感したということ。

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